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最終話です。
最終章 暴走回路 A_Runaway_Circuit 5
「……ん、ここは……いつもの、病室?」

目を覚ますと、上条はいつもの病院の病室で、いつもの真っ白なシーツのしかれたベッドの上で横たわっていた。
どうやらあの後、上条は病院に運び込まれたらしい。

「……あの時、俺は……」

あの時、上条と相原は最後の力を出した。
上条の拳は、相原の顔面に直撃し、その意識を奪った。
相原の放った風は、そんな上条を吹き飛ばし、上条を気絶させた。
結果から言えば、どちらが勝ったわけでもなく、どちらが負けたわでもない、引き分けだった。

「……ただ、俺は宇津木を救えた……のかな?」

そうつぶやいたその時だった。
ガラッ!という音が聞こえてきて、病室の扉が開かれた。
そこから現われてきたのは、カエル顔をした医師―――冥土帰しヘヴンキャンセラーの異名を持つ男だった。

「あ、先生……」
「君にお客さんが来てるよ。まったく君もこれで何人目なんだね?」
「……はい?」

一瞬その言葉の意味が読み取れず、上条はそんなふ抜けた声を出してしまう。
そんな声を聞いてか聞かないでか、その人物は、カエル顔の医師の後ろから、病室にはいって来た。

「う、宇津木か?」
「か、上条さん……お体は大丈夫なんですか?」
「あ、ああ……割とすぐに退院出来るって言ってたぜ」
「……それじゃ、ここで失礼させてもらうよ」

カエル顔の医師は、二人を一回見てから、そう言葉を残して病室を去って行った。

「……それで、わざわざ俺のことを見舞いに来てくれたのか?」
「え? あ、はい」

春菜は、戸惑いながらもそう返事を返す。

「わざわざ済まねぇな、宇津木。俺の所に見舞いに来るやつなんてほとんどいねぇから」
「そうなんですか? けどどうして……」
「……あ〜、それはだな、説明すると長くなるというか……何というか」

上条にとって、この病院のこの病室のベッドにやってくることは、もはや頻繁になって来ていた。
それだけに、例え入院沙汰になったとしても、心配して見舞いに来るクラスメイトなどおらず、そして退院して
学校に来てみれば、またかという視線が上条に突き刺さる、そう言った生活を送っているのだった。
たまにインデックスが来るのだが、腹が減ったと言ってきたり頭をかじられたり。

「とにかく、来てくれるだけ俺としてはありがたいというか……やっぱり宇津木っていい奴だなぁって思って」
「私が……ですか?」
「当たり前じゃねぇか! お前のことを放っておく男子なんて、この世にいねぇくらいいい奴だぜ、お前は。
 きっといい男がそのうち来ると思うぞ、ホント」

こんな言葉を時折吐き捨てるのが、上条クオリティ。

「ふぇ?」

この上条の言葉に、思わず春菜の顔は赤くなる。

「……ん? どうした宇津木。熱でもあるのか?」
「い、いえ、そういうわけじゃあ……」

春菜はそう否定しようとしたが、言い終わる前に、上条の右手は春菜のおでこに当たっていた。

「ん〜熱はなさそうだな……」
「な……な……」

春菜の顔に、上条の顔が近づく。
そして、自分が病人なのも忘れて、おでことおでこを合わせる。

「お? 何か少しずつ熱が高くなっていくような……」
「き、気のせいです! あ、あの、離れて下さい!!」
「あ、ああ……」

顔が真っ赤になっている春菜に言われて、上条はその言葉に従って春菜から離れる。
そして、上条はもう一度ベッドに寝なおした。

「……それでよ、宇津木」
「な、何でしょうか?」
「……あれから、相原の奴はどうなった?」

目覚めてから気にかかっていたこと。
それは、今回の事件にて真っ向対決をした少年―――相原直行のことだった。
意識が反転した相原は、その後どうなったのだろうか。

「……相原君は、あの時上条君に殴られてから、ちょっと経ってから目覚めました。その時に
はもう……あの時に表れてた人格の方は消えていました」

つまり、上条の一撃によって『負け』を認めたノイズは、『相原』と意識を変換させたのだという。

「私は相原君に、話かけようとしました。でも相原君は、『もう俺に近づくな』と言った
まま、どこかへ……」
「あいつ、お前ともう会う気はないってことか……そう決断したんだな」

相原の出した決断。
それは、宇津木春菜には二度と近付かない。
そう言ったものだった。

「もしまた会ってしまうと、自分は負の感情を表に出してしまうかもしれない。だから相原
は、もう二度とお前を傷つけないように、距離を置いた」
「……そういうことに、なると思います」

それは、最善策とは言えない策だったが、相原には、これ以外の策を取ることが出来なかった。
それだけ、彼は無力だったということだ。

「……寂しいか?」

上条は、尋ねる。

「……はい、折角出来た、私の初めての友達が……いなくなっちゃうのは、とても寂しくて、
辛いです」

春菜は答えた。

「……そっか。けど、例えお前たちが二度と会えないとしても、お前と相原の絆は、壊れる
ことはねぇ。もしそんな絆なんて存在しねぇと言うんだったら、俺の右手で、その虚言げんそう
 をぶち壊してやる」

上条は、真剣な顔で春菜にそう言った。

「……上条、君」
「それに、お前には俺達がいる。俺だって、青髪ピアスだって、土御門だって、吹寄だって、
 姫神だって……クラスの奴ら皆が、お前の友達だ」
「……そう、ですね。私は、一人じゃ、ないんですよね」

春菜の目に、自然と涙が浮かんでくる。

「……上条さんに、三つお願いがあります」
「ん? 何だ、宇津木」

春菜は、上条のことを見つめ、こう言った。

「私のことを、『春菜』って呼んでもらっても、いいですか?」
「……え?」

思わず上条は聞き返してしまう。

「ですから、私のことを、その、下の名前で……」
「ああ、そう言うことか。何故かは知らねぇけど、そういうことなら、そう呼んでやるよ……春菜」

上条からその名前が口にされた時、春菜の顔が赤くなる。

「二つ目は……私も、上条君のことを、当麻君って呼んでもいいですか?」
「下の名前で呼ばれるのか……なかなかそう呼ぶやつなんていねぇからな。ああ、別にいいぞ」

上条は、二つ目の言葉も承認した。

「それで三つ目なんですけど……」

春菜は、最後の願いを、上条に言う。

「……当麻君を、大切な人だと、想ってもいいですか?」
「……え?」

上条は、その言葉の意味を深く理解することが出来なかった。
だから。

「……ああ、いいぜ」

その言葉はきっと、『大切な友達』としての想いだと勘違いしたのだろう。
しかし、春菜にとっての『大切な人』とは、友達とはまた違う。
彼女にとっての『大切な人』。
相原の立場である、『友達』とはまた違った物。
その正体とは……。


























とある脳の複数回路、了。

























みなさんこんにちは。
相変わらず能天気なランスです。
この作品、とある脳の複数回路は、この話を持って最終話。
つまりは、完結ということになりましたー!!
わ〜パチパチ。
……一人で拍手してるのって、ここまで悲しいことだったとは。
さてさて、この作品はいろんな謎を残していきました。
侵入した魔術師、学園都市を壊滅させようと企む謎の組織の存在、そして、相原の行方。
この部分に関しては、近日公開予定の小説、『とある都市の破滅計画フォールプラン』にて載せる予定です。
あ……一応次回作考えてるんですよ?
この作品だけでは、完結しないんですよ?
まだまだ私自身が広げる禁書目録の世界は存在しますので。
どんな話になるかは、実際に読んで確かめてください。
いつ頃になるかは分かりませんが、今後ともどうかよろしくお願いします。
以上を持って、筆者の言葉とさせていただきます。

平成21年6月9日火曜日 ransu521
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