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灰を被ったお姫様

作者:緋和皐月

「妹、お願い! 友達と遊びに行くから、今日の掃除当番、変わって!」
「私も! 今日彼氏とデートだから、料理当番、代わりにしておいて!」
「分かりましたわ、お姉様たち。引き受けて差し上げますわ……こんなにも優しいわたくしへの素敵なお土産、期待してますわよ!」

 2人の姉の頼みを聞いて、今日も少女は家事をする。

「おーっほっほっほ! お母様、洗濯物、洗濯機で洗って、庭に干して差し上げましたわ! 感謝なさって!」
「え、え? あ、ありがとう。でもそのブラウス、手洗いしなきゃいけないやつだったんだけど……」
「うふ、洗濯機の御手が、優しく洗ってくださったのよ」
「……そっか、うん。お母さん、ちょっと泣いちゃいそうだな……」
「感激の涙ですわね? いいですわいいですわ、思いっきり私のために咽び泣きなさい!」

 高笑いしながら去っていく我が娘を映す母の目には、涙が浮かぶ。

「あのブラウス、お気に入りだったのになぁ……」



 さて。そんな家族が住んでいる国の王子には、三十路になっても未だ彼女1人出来たことのない奴だったとか。
 とうとう痺れを切らした国王陛下は、王子に彼女1人でも作らせるため、舞踏会を開くことにした。

「ゆーびんでーす」
「はぁい、この、お姉様たちよりもずっと美人なわたくしに、何かお手紙があるのかしら? ……あら、あら。あら! 舞踏会の招待状じゃないの! 郵便屋さん、誉めて遣わすわ! 喜びなさい!」
「え? は、はい……」

 こうして、2人の姉と共に、この少女も城へ行くこととなったとか。
 だがしかし、姉達には、習い事どあるピアノの発表会などの為に着るドレスはあったものの、少女には、ドレスの1つも無かったのであった。

 だから、少女は自分で作ることにした。
 でも材料が無かったので、姉たちから要らない服やアクセを貰うことにした。

「お姉様! この白真珠のネックレス、貰うわよ!」
「え?! だめだめっ、それ、彼氏から貰ったばっかのやつなの!」
「お姉様! このシルクのワンピース、貰うわよ!」
「えっダメダメっそれ買ったばっかのブランドものなんだから!」

 なのに、何故か姉たちはくれようとしなかった。

「もう! 酷いわっ、皆して、わたくしを虐めるのね……!」

 ぷんぷん怒った姉たちは、大切なドレスやアクセを鍵付きクローゼットに入れて、さっさと城へと出かけてしまった。

 少女は泣きながら庭へ出た。

「えーん、えんえん。あっちょっと、そこの貴女!」
「へ?」

 そして、少女は変な格好をした妖精と出会った。

「こんなに美しいわたくしが困ってるんだから助けなさい!」
「えええ?!」

 そして少女は、妖精からドレスをたかり、車を出して貰って城へ向かった。

「ありがとう、妖精さん! 感謝してあげても良くってよ! おほほほほ!」

 そして、城の扉を開けると……

「ちょっ君、その扉、非常口だから開けちゃダメだよ?!」
「あら、王子様? もうわたくしの虜となったの? いいわ、踊ってあげないこともなくてよ!」
「ちょっ、話聞いてる?!」

 2人で踊っていると、だんだん王子は少女に夢中になっていった。

「あっもう12時! お肌に悪いから寝なきゃいけないわね! またお会いしましょう、王子様!」
「待て! 庭を破壊したまま行くな! あと、この俺の足を踏みまくったのに、謝罪の1つも無いのはどういうことだ?! 城の修復費用請求してやるから名乗りやがれぇえ!」
「名乗るほどの者ではなくてよ? わたくしと踊れたこと、感謝するがいいわ! あ、そうだ、この靴片方あげるわね。下衆のように舐め回しても良くってよ!」

 少女は、追いかけてくる王子を振り切って、ガラスの靴を城の階段に投げ捨てて、家に帰ったのだった。



 翌日。
 城の者が、少女の家に来ていた。

「城の一部を破壊した女を捜しています。そいつは、余裕ぶっていたのか重要な手掛かりとなる、ガラスの靴を落としていきました! 現在、本官を始め、城兵が捜査に力を注いでおります! 人相はこちらです。見かけたら、ご報告宜しくお願い致します!」
「大変ですねぇ……ん? この顔どこかで見たような……」
「本当でありますか奥様!」
 
 母は首をかしげる。

「う〜ん……と……」
「お母様! 今日の昼食は、わたくしのスペシャル料理ですの! お食べになって!」

 エプロン姿の少女が駆けて、こちらへ来た。

「お母様、何をご覧になってらっしゃるの? わたくしの料理よりも素敵だというの? ……あら、あら、あら! この絵の美人はもしかして、わたくしの顔? でもちょっと現実とは劣りますわね、もう少しわたくしは細くて繊細な顔つきをしてますことよ!」

 城兵と母は、ぽかんと少女を見つめる。

「い、い、い、居たぁぁあ! 指名手配の女、見つけたぁぁあ!」
「待って、待ってくださいっ! きっと、何かの間違いなんです、多分この子もちょっとした出来心だったんです! 許してあげてくださいなっ!」
「? なんの話ですの……ってちょっと! その汚らしい手でわたくしの清らかな腕を掴まないでくださいまし! 痴漢! 痴漢ですわよ! ちょっと、おやめになって! あぁ〜れぇ〜っ!」

 こうして少女は城にいる王子の元へ連れていかれた。

「やっと見つけたか……おい女! お前、城の庭修復代金550万と、俺の足を腫れるまで踏みやがった慰謝料130万、計680万払いやがれ!!」
「なんですの、その微妙な数字は? どうせなら700万きっちりになさい! 区切りが悪い数字は気分が悪くなりますことよ!」
「別に俺は700万でもいいんだぜ? だけど、20万お情けかけてやったんだよ! 感謝しやがれ!」

 悪どい王子のその顔を、少女はキッと睨みつけた。

「なんですのその口の聞き方は? 700万ですって? そんな大金、わたくしに払える訳ないでしょう、わたくし働いてないのよ? ハッまさか……わたくしを、犯すつもりですの……?!」
「誰がお前なんかを犯すかぁーっ!」

 ブチギレた王子は、少女に、近くにあった灰をぶっ掛けた。

「この美しいわたくしに何をするんですの!」
「お前にはそれがお似合いだよ灰被り!」
「キーッ、ですわ! それならお前にはこれがお似合いですの! 喰らいなさい、ドブ水ですわ!」
「何しやがる、この灰被りッ!」
「なんですの、このドブ鼠ッ!」

 灰とドブ水が飛び交う中、なんの騒ぎだと散歩をしていた王様が帰って来た。

「「あ」」
「一体何を騒いでおるの……じゃ?!」

 王子が振りまいた灰の山と、少女がバケツで集めたドブ水が、運悪く、まとも王様の頭に掛かってしまった。
 が、大きい帽子を被っていたので、王様は、頭も服も濡れてはいない。

 そんな王様だったが、帽子を脱いで、静かな、それはそれは静かな笑みを浮かべた。
 その笑みを見て、さーっと王子と少女の顔が青ざめていく。

「この大馬鹿者ぉぉっっっ!!」


 こうして、罰として2人は結婚させられ、ずっと同じ部屋で仲良く暮らしましたとさ、めでたしめでたし。


「どこがめでたしですのっっ!」
「仲良いとかふざけんなっっ!」

 ……2人は大声で互いを罵り合い始めた。

「大体、全部こいつが悪いんですわ!」
「なんだとこのアマがっ!」
「なんですってこの馬鹿!」
「脳内御花畑の灰被りっ!」
「脳まで腐ったドブ鼠っ!」
「それはお前だろ!」
「アンタですわよ!」

 そんな、賑やかな城内に比べ、少女の実家は随分と静かになったとか。

「「「ああ……あの子が居ないだけで、こんなに平和だったのね……」」」


 ちゃんちゃん。

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