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空想科学 パニック 宇宙 SF

若返りのクスリ

作者: 山目 広介

   【若返りのクスリ】


 効能:一粒で一年分若返ります。

    この薬は体にある分子だけに働きかけ、薬の分だけ時間を巻き戻します。




「どういうことだあああ!!」


 男が乗り込んできた。


「昨日の薬で妻がミイラになって死んだじゃないかあああ!!」


 見ると昨日見学しにきた男だったみたいだ。

 若返りの薬を男の妻が飲んだみたいだ。


「ニセモノを渡しやがったなあああ!! 妻を返せえええ!!」


「落ち着いてください。渡したものは本物ですよ。ちゃんと説明文は確認しましたか?」


「一粒一年若返るってヤツか?」


「ええ。書いてありましたよね。『この薬は体にある分子だけに働きかけ、薬の分だけ時間を巻き戻します。』って」


「じゃあ、なんで妻は死んだんだあああ?」


 男は詰め寄って今にも殴り掛からんばかりだ。


 ――ヒョイ――


 薬を男が大口を開けた隙に投げ込む。


 ――ゴクリ――


「てめぇ! 何飲ませたああ!!」


「間違いなく本物の若返りの薬ですよ」


 男は跪く。苦し気に首を掻き毟る。


「あなたの体には昨日の水分はどれほど残ってますか? 分かりますか?」


「……ま、マウスは若返ったじゃないか……」


 男は動揺しているのか、どもってしまう。

 男は昨日の見学の時に、マウスに投薬して若返るのを確認していた。


「ああ、あのマウスはここで生まれたんだよね。そして空気も循環させてるし、それだけではなくエサも排便や排尿から合成している。構成されている分子などが循環されているわけですよ。」


 男が干からびていく。


「あなたを構成している分子は昨日のあなたの構成分子とどれほど違うのでしょうね。それは一か月前とどれほど違うのでしょうね」


 徐々にミイラとなっていく男。


「あなたを作っている分子はどのくらい前と一致してるのでしょうね」


「ああああああ」


 男は叫び声を発し始めた。


「食事もそうだけど、水分はかなり入れ替わっていることは分かっているでしょう?」


「……あ、あ、あ”あ”あ”あ”……」


 段々と男の声が嗄れていく。


「効果は自身の体にある構成分子にしか作用しないから、世界に分散されてしまう水分は戻らないので乾燥しちゃうんですよね。あのマウスのように循環しているような環境じゃなければ薬を飲んでも作用される分子は限定されてしまって若返ったときの体を構成される分子が残っていないとなって最後には骨しか残らないとかになっちゃうんだよね」


 次第に男の体がボロボロになって崩れていく……




誤字修正

男は動揺しているにか

男は動揺している【の】か

2017/9/7

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