ねぇどうしたの、あなた顔色が悪いわ。よかったらそこで休んでいらして。
遠慮しなくてもいいのよ、ここは私の庭だから。
この庭はね、昔は・・・・そうね、私のお母様がまだいたころは、庭師さんたちに手入れしてもらっていたのだけれど、今でもなかなかのものでしょう?私がずっと一人で世話をしているのよ。剪定とかはなかなか骨が折れるけれど、きれいな花が咲いたときの感激もひとしおね。
あそこのリンゴの木だって、秋になると実がなるのよ。
嘘じゃないわ。大きくてそれはそれは甘いリンゴがなるわよ。
ええ。ジャムにすると美味しいの。
あ・・・でもこのところ肥料をあげるのを忘れていたわね・・・後でやっておかないと。
そこの花壇、ご覧になった?
そこにはムラサキツユクサが生えているでしょう?
私、この花が大好きなのよ。なんだか静かで清楚で。
え?
ええ、そうよ。この花はリンが多い土でよく育つの。さてはあなたも園芸好きね。
たっぷり肥料を鋤きこんであるから、たくさん花が咲いているでしょう。
この花は庭のあちこちに植えてあるわ。屋敷のどの窓からも見えるように、ね。
え・・・?
何を言っているの、あなたは。
あの屋敷には私が住んでいるのよ。
誰もいないわけがないわ。ましては廃屋だなんて、馬鹿にしないで頂戴。
本当よ。変なことを言う人ね。
え、家族?
この庭にいるじゃない、ほら、あそこの花壇。
あの脇に立ってるのがお母様。隣に座っているのがお父様よ。
向こうには妹がいるわ。
誰もいない?
いるじゃない、そこに。
ほら、こっちがお母様。今年もこんなに大輪の花を咲かせてくれたわ。
ね、いい香りでしょう? 私バラの香りが一番好きなの。
お父様は小さいけれど、毎年毎年深紅の花を沢山咲かせてくれるのよ。
妹は・・・・さっき話したでしょう、美味しいリンゴを毎年つけてくれるって。
どうしたのそんなに血相を変えて。
あら、帰るの?
駄目よ、あなたご加減が悪そうだし・・・そんなに急いだりしたら
いいえ。
どうかゆっくりしていらして。
花の中でなら、きっとよく眠れる筈よ。
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