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楽土創世のグリモア 作者:しらたぬき

Chapter4

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ハートキャッチャー&フェアリーキャッチャー

魂の投資ソウル・インヴェストを魂の融資ソウル・ファイナンスに変更しました
召喚術師の少女は召喚術サモニングクラスの教室を探して校内をてくてくと歩いていた。


学院内は迷わないようにシンプルな作りになっていたが、いかんせん部屋数が多すぎる。

学生手帳に付属しているマップ機能を手がかりに、少女はある教室の前にたどり着いた。

「……ふぅ。召喚術サモニングのクラスはここかな? あだっ!!」

ピタリと彼女が立ち止まると後ろから誰かが突っ込んできた。

アシェリィは思わずバランスを崩しかけたが、ぶつかってきた人がよろけた身体を片手で支えてくれた。

「おっと。ごめんよお嬢さん」

高い背の丈と口調から、最初は男性かと思ったが、触れた肉体は女性特有の柔らかさだった。ついでに柑橘系のいい香りもする。

女子の中では背の高い方であるはずの自分より更に高い。170cmを越えているのではないだろうか。

「ん? なんだ? あたしの顔に何かついてる?」

けだるそうな表情をしながらそう声をかけてきた。

彼女は彩度が低めのマゼンダ色の長髪だった。まるで抜けかけのライラマローブのような色合いだ。

白い肌、すらっと伸びる手足。視線を顔に移すと高い鼻、パッチリとした瞳で、まさに麗人といった感じである。

耳につけられた無数のカラフルなピアスが個性的に見えた。

新入生には珍しく、ビシッっと群青色の指定制服で固めていて少し珍しいパターンだ。

スカート丈は膝よりかなり下で、長めだった。そして少し透けた黒いタイツを履いている。

全体的に落ち着いた雰囲気の漂う人物である。

アシェリィは思わず見とれていたが、ふと我に返って答えを返した。

「いっ、いえ。その……ジロジロと見てしまってすいません……」

それを聞くと相手は歯を見せてニカッっと大らかに笑った。

「ははっ。な~に、気にすんなって。それよりあんた、召喚術サモニングクラス所属かい?」

その問いにコクリコクリと首を縦に振って応じるとまたもやマゼンダ髪の少女は笑った。

「そっか。あたしもここなんだよ。さ、とっとと入ろうか」

片方に促されるようにして二人は教室に入った。その部屋には12台の机と椅子が横3列で縦に4つ並べられていた。

既に半分以上の席が埋まっていた。事前に受け取っていた机の番号表を確認して自分の座る場所を探す。

すると、一番後ろの席の真ん中に自分の学籍番号が書いてあった。どうやらここが自分の席のようである。

教室の後部から入ったので、すぐにたどり着くことが出来た。一緒に入ってきた少女も背後で自分の座るべき場所を確認していた。

彼女もすぐにクラス内を歩き出した。どこへむかうのかなとアシェリィが思っていると、彼女は自分の右隣の席に座った。

少しキョロキョロと辺りを見回していたが、こっちに気づいたようでにこやかにこちらに向けて手を振った。

「お、お隣さんか。あたしは―――」

隣の美女が名乗る直前にクラス前方の扉が開いて、黒いスーツを来た男性が入ってきた。フラリアーノである。

「またあとでな!」

名乗りかけていた少女はウインクして教壇の方を向いた。

「みなさん、こんにちは。私が召喚術サモニングのサブクラスの担任、フラリアーノ・Rレージ・ノルクスです。入試の時、既に全員にお会いしているかとは思いますが、改めてよろしくお願いします」

教授は丁寧に生徒へ向けてペコリとお辞儀をした。謎の果実が描かれた黄色いネクタイが揺れる。生徒たちも頭を下げてそれに返した。

「今年の召喚術サモニングクラスは男子3名、女子9名の計12名ですか……。新入生が全員で253人居るので召喚術師サモナーがレアな部類の術者であることは疑いようがないですね。時に重宝されることがあるかもしれません。意識しておくといいでしょう」

教授は穏やかな表情で生徒たちを見つめた。もっともいつも細目で目尻が下がっているので傍から見たらいつも笑顔を浮かべているように見えるのだが。

彼から柔和な印象を受けるのはこの目つきの影響も大きいと言えた。

両目の下にある泣きぼくろがチャーミングポイントだとか、そうでもないとか。

「さて、このクラスでも班員制を導入しています。おっと、バトル・ロイヤルはしないので安心して下さい。横一列に並んでいる面々が自分の班員になります。一班あたり3人ですね。後で顔合わせの時間をとるので、まずは各々の自己紹介といきましょうか。あぁ、一度に全員の容姿と名前、能力を覚えきるのは無理なので、ひとまず自分の班員だけ集中して話を聞いてください」

こうして一番前の右端の生徒から紹介が始まり、左、左へと移っていった。そしてそれが列を変えて繰り返されていった。

クラスには様々な属性や種族の幻魔を喚び出すのに長けた学生が揃っていた。召喚以外に特殊能力を持つ生徒もちらほらといるらしい。

数人の話が終わったあたりでアシェリィの頭はこんがらがっていた。少数とは言え、これだけの顔と名前と能力を把握するのは困難だったからだ。

フラリアーノの言うとおり、ひとまず班員の分だけに集中するのが賢明だと思えた。

自分たちの班の順が回ってきて、教室の外でぶつかった背の高い麗人がすくっと立ち上がった。そして教壇に立った。

隣に立った少女を見てフラリアーノは最後の班のコンセプトについて再確認した。

(アシェリィ君は本人の未熟さに不釣合いな力を持つ幻魔と契約していますね。これはおそらく師匠の方針でしょうね……。命の危機に瀕した時に必ず生き残る力を秘めていますが、まだ今の段階ではリスクのほうが上回っています。それを上手く相殺するには酷かもしれませんが、天才でサンドするしかないかと)

考えにふけっていると隣の少女が元気よく語り始めた。

「ちーっす。あたしはラヴィーゼ・グラウレ。闇や影属性の幻魔を駆るのが得意でね。夜や洞窟はホームだね。やったこたないけど、暗殺とか闇討ちに向いてるんじゃないかね。まぁ能力はこんなだけど、こう見えて曲がったことが大ッ嫌いでね。陰湿な奴じゃぁないって事はアピールしとくよ」

彼女はそう言いながら指を二本だけ立ててクラスメイトにハンドサインを送った。それと同時に大胆不敵に笑みを浮かべた。

並みの人間がそれをやると気取っていると言われるところだが、ラヴィーゼのそれはバッチリと様になっていて、クラスのハートを撃ち抜いた。

次は真ん中の席の自分の番である。内心ドキドキしながら教壇にのぼった。

「わ、私はアーシェリィー。アーシェリィー・クレメンツです。皆からはアシェリィって呼ばれてます。得意な幻魔は……割と幅広く契約してきていますが、一番は水属性です。皆さん仲良くして下さい。よろしくお願いします!!」

至って当たり障りの無い無難な自己紹介となってしまった。

先の麗人と比べてしまうとどうもパンチが足りないような気がしなくもない。

少しモヤモヤしながら席に戻ると、左手の人が立ち上がった。ラヴィーゼから声をかけられていたので右ばかりに注目していて左は完全にお留守になっていた。

左を向いたアシェリィはあっけにとられた。立ち上がった少女は襟から袖からスカートの裾までヒラヒラのフリルてんこ盛りだった。

おまけに全身ピンクの衣装やアクセサリーで身を固めている。髪の毛までショッキングピンクだ。

これだけ目立つのにどうして今まで気づかなかったのだろうか。気のせいか、彼女が立ち上がった直後から周りも騒ぎ出した気がする。

そんな人の目をよそに、彼女は教壇に立った。

「わたしはリコット。リコット・マシャリンで~す。わたしはとにかく”よ~せ~”カンケーに特化してます。7つの幸運セブンス・センスで他の人が見えない妖精もキャッチできるよ。あとはね~、”よ~せ~”とシンクロ出来る妖憑フェアリー・ポゼッションとかが得意かな~。甘いものと可愛いものが大好きなのでみなさんよろしく~」

気の抜けた教室は一斉に脱力した。それを引き締めるように担当教授はパンパンと手を叩いて鳴らした。

「はい。これでクラス全員の紹介が終わりました。おっと、大事なことを伝え忘れていました。誰とは言いませんが、この中で魂の融資ソウル・ファイナンスで一ヶ月眠ったままだった人が居ます。くれぐれも軽率に自分より格上の幻魔の召喚を強行しないこと。いいですね?」

それを聞いて教室はざわめいた。

「なんて無鉄砲なことを」と馬鹿にするのは容易だったが、事はそう単純ではない。

それだけ上級の幻魔との契約が成立した実績があるとなると腕や素質を疑うのは難しいからだ。

困惑する生徒たちにフラリアーノは顔色を変えず無言の圧を送った。生徒たちはそれをピリピリと感じ取って釘を刺されているのだと悟った。

すぐにそのプレッシャーは消え、教授は笑顔に戻った。

「さて、今日の講義はこのあと、班ごとに集まって顔合わせをしてもらってとりあえず解散です。では、各班、列の真ん中に集まって自由に雑談して下さい。能力を見せてもいいですが、やりすぎないように」

指示通り、アシェリィの左右から個性派の二人が歩み寄ってきた。

開口一番に話し始めたのはリコットだった。

「あ、ふ~ん。あなたリーネさんっていうんだね。すごいな~。完璧だよ。これで人工の幻魔だとはまったくおもえないよ~。流れる水のように体が構築されてる。ほんとすごいよ~」

アシェリィとラヴィーゼは首をかしげた。二人ともリーネなどという名ではないからだ。

誰と話しているのだろうと考えているとすぐに緑髪の少女のほうが反応した。

「えっ!? サモナーズ・ブックも開いてないのにリーネちゃんと会話してるの!? そんな馬鹿な!!」

驚く少女を見てリコットは肩をすくめた。

「馬もロバもないよ~。さっき言ったじゃん。”よ~せ~”に特化してるって。せっかくだから妖憑フェアリー・ポゼッションも見したげるよ~」

そう彼女が宣言した次の瞬間、術者の雰囲気が一変した。この感じ、どこかで会ったことがある。

もう一人の少女は完全に置いてけぼりだったが、状況の異常さには感づいていた。

「おいおい……。なんか、目つきが鋭くなってないか……」

先程の抜けた感じがどこへやら、不機嫌そうに腕を組むツンツンしたような仕草に変わった。そのまま感触を確かめるように手を握ったり開いたりしている。

「おっ、人間のカラダも悪くねーじゃん。ホレホレ。出よ!! ヴァーリーランス!!」

またたく間もなく、水色に透き通った巨大な三又の槍が出現した。リコットはそれを片手で器用にクルクルと回した。

突然の武装にクラスメイトたちは警戒したが、すぐに彼女は槍を消して両手を上げて無抵抗の意志を示した。

「まーまー。ジョーダン。ジョーダンだって。一見するとこのリーネ様に乗っ取られたように見えるかもしんねぇけど、これでいて案外コントロールされてるかんね。大した使い手だよ。いざという時はこれで戦えばいいんじゃね?」

やはり思った通り、リコットは自分の肉体に一時的にリーネを憑依させたらしい。

魂の融資ソウル・ファイナンスで無茶をした自分が言える立場ではないが、無茶苦茶である。

普通なら話の展開についていけないところだが、隣の麗人はとても楽しげだった。

「う~ん、リジャントブイルは天才と変人ばっかで面白いところだぞってじいさんの口癖だったんだけど、こりゃ良い!! どうやらガセじゃないみたいだな!! かっけぇ槍じゃんか!! あたしにも乗り移れないかね!?」

もうちょっと驚いたり混乱するかと思っていたアシェリィだったが、このリアクションには少し呆れた。

アシェリィはメインクラスだけでなく、サブクラスまで個性の強い面々とやっていくことになるのだった。
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