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楽土創世のグリモア 作者:しらたぬき

Chapter3

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魂玉の煌めきに込められた想い

一同の視線を一点に受けたアシェリィはすこし恥ずかしそうにした。オルバはそんな彼女を見つつ、思いついたように彼女の特技の続きを紹介した。

「あー、あと彼女はマナボードがかなり得意でね。これが結構馬鹿にならない機動力を持ってる。全速力で飛ばせばそこらへんの獣やモンスターは振りきれるんじゃないかな。もっとも、今回の旅はファイセルくんには伝えてあったんだけど、基本は徒歩だよ。ファイセルくんの歩くスピードに合わせてリジャントブイルを目指してもらうことになるから、マナボードでの長距離移動はナシね」

アシェリィもそれは伝え聞いていたらしく。ファイセルの方を見てコクリと頷いた。すると彼はカバンから手紙らしき紙を広げてオルバの方に向けてかざし、確認を取った。

師匠せんせいからルートの連絡はもらっています。ライネンテ方面……ここから北西に北上しつつ、王都ライネンテへ到着。その後、ライネンテから更に北東に移動し、リジャントブイルのあるミナレートを目指す……ですね?」

確認を受けた賢人は深くうなづいた。

「そういうこと。私の計算上、そのルートにそって”うまく”幻魔との契約を続ければリジャントブイル到着時には”なんとか”受かるレベルまでは持っていけるかなってとこだね。さっきも言ったけどあまり速い移動手段で進むと幻魔を見逃す可能性も高いから、ドラゴンバッケージ便やウィールネール、マナボードは原則禁止ね」

そういうと彼は振り向いて壁に貼り付けてあるカレンダーを眺めながら続けた。

「今日は亀竜の日の2日。リジャントブイルの入試は首長蛙の月の15日。だいたい一ヶ月半あるね。10日くらい予備をとってあるから大きなトラブルが無ければ間に合うだろう。
……というわけで来てもらって急でわるいんだけど、できるだけ早く出たほうがいい。ファイセルくんもアシェリィもご両親に顔を合わせてから行きなさい。今夜帰るって連絡はしてあるから」

話が終わるとその場は解散になった。ファイセルが歩み寄ってきたのでアシェリィも前に出た。

「やぁ! 久しぶりだね、アーシェリィー。会うのは僕の帰郷以来かな? だいぶ腕を上げたみたいだね。師匠せんせいはああ見えて結構、修行内容はハードだったりするから嫌でも腕は上がるか……」

ファイセルは苦笑いしながらにっこり笑った。

「ファイセルさん……いえ、先輩もお元気そうですね。結婚して帰ってきた時はビックリしましたが、奥さんはお元気ですか?」

「え? あ、まぁね……」

青年は恥ずかしげにして照れ隠しで頬を掻いた。未だに新婚さながらいった様子である。アシェリィはその少年のような反応をみて微笑ましく思った。次に、そばに来た大柄の男、ザティスにも声をかけた。

「ザティスさん……でしたよね。私、アーシェリィー・クレメンツっていいます。よろしくおねがいしますね」

彼女が軽く彼女が会釈するとザティスも会釈を返した。

「さっきも名乗ったが、俺はザティス・アルバール。そちらさんはアシェリィと呼ばれてるようだな。そう呼ばせてもらうぜ。これでも一応リジャントブイル生の端くれだ。よろしくな!!」

そう言いながらザティスは服の裾で手を拭ってから握手をしようと手を前に出した。少し戸惑ってからアシェリィはごつごつとした大きな手を握り返した。

彼は荒っぽい見た目にしては気さくで、割とフレンドリーな態度で接してきた。アシェリィは最初は内心、少し怖がっていたが一言二言交わすうちにそれほど恐れるような人物ではないではないと少し警戒を解いた。

3人は何気ない世間話からリジャントブイルの話まで色々と雑談して盛り上がった。2人ともまだあまり親しくはないが、このメンバーなら楽しい旅が出来るのではないかとアシェリィはなんとなく思った。

色々話をしているとあっという間に時間が過ぎた。暗くなる前に家に帰るにはそろそろ準備をしなければいけない時間だ。2人と別れてアシェリィは木でできた自分の部屋の道具を整理して持っていくものを決めていた。するとドアをひっかくような音が聞こえた。おそらく呼んでいるのははアルルケンだ。

アシェリィがドアを開けるとそこには青灰色の大きな狼が座っていた。扉を開けたアシェリィを大きな瞳で見つめてきた。

「アルルちゃん! どうしたの? 何か用?」

アシェリィが首を傾げて尋ねると狼は気が向かないといった様子で視線をそらしつつ喋りはじめた。

「お前、とうとう旅に出るんだな。お前に餞別をやろうと思ってな。これだ……」

そう言うとアルルケンは喉の奥から水色に輝く玉を出してきた。その玉は舌の上でキラキラと綺麗に輝いている。大きさは拳より一回り小さい。アシェリィは驚きのあまり目を見開いた。

「アルルちゃん! これって……契約の証!? ダメだよ!! 私みたいな無名下級のサモナーと契約なんてしたらあなたの幻魔界での立場が!!」

すかさず狼は彼女の言葉を遮って彼自身の考えを述べた。その表情は不敵に笑っているように思える。

「ハッ。どうせ俺は幻魔の中ではまだ生まれたばかりだ。どのみち上の連中からは顎で使われる存在でしかねぇ。なんでお前に魂玉こんぎょくをやったか。なんつーか、青田買いってのか。 俺はお前に賭けてみようってんだよ。今はヨチヨチ歩きのひよっこでもな。ま、仮契約だが」

アルルケンの好意と期待が伝わってくる。彼とはマナボードをもらった時からのつきあいである。あの時はてっきり女性の人格だと思っていたのだが、蓋を開けてみれば猫をかぶっていただけだった。

なんとなくアシェリィは彼を穏やかな性格だと捉えているのは初対面の影響が大きい。もっとも、実際に言葉遣いの割には紳士的ではあるのだが。

「……ありがとう!! ありがたく契約させてもらうね!!」

彼女が魂玉こんぎょくに触れようとした時、アルルケンが付け加えるように警告を加えた。

「おっと、そうだ。言い忘れるところだったが……俺を召喚するのは『もう打つ手が無い!! 』って時だけにしろ。契約しても、今のお前ではおそらく一度きりしか召喚できんだろう。しかも使用した場合、体にとてつもなく大きな負荷がかかる。ここぞという時に使うようにしろよ」

アシェリィはうなづいて自分の机の上にあるサモナーズ・ブックを取りに戻り、狼の舌の上の魂玉を本で受け取った。すると本は勝手にパラパラとめくれて不思議な文字のような模様のようなものが浮かび上がった。試しに指でなぞってみるとそこには確かに文字が刻まれていた。

「じゃあな。健闘を祈るぜ。くれぐれもくたばるんじゃねぇぞ」

そう言ってアルルケンはアシェリィの部屋から遠ざかっていった。心なしかその後ろ姿は寂しそうだった。その後、彼女は引き続き部屋の整理をして家に帰った。
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