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楽土創世のグリモア 作者:しらたぬき

Chapter3

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戦闘狂はお嫌いで?

 その頃、広場にはモルポソが姿を表していた。鮮やかな青みがかった紫の髪色をした長髪だ。肌は色白で血色が悪いように思えた。まるで化粧した女性のような白さである。

 片目を髪の毛で隠していて、耳にはピアスをしている。美形だったが蛇のようにチロチロと伸びる長い舌は気味が悪かった。

 服装は黒尽くめで、すらっとした体格にピッチリと合っていた。肩もはだけていて、かなり奇抜なファッションと言えた。それを見て公園に居た人たちはうわさ話を始めた。

「おい……あいつ、もしかして賞金首のモルポソじゃないのか……?」
「ほ、ほんとだ……ざ、斬宴ざんえんのモルポソだ!!」
「きゃー、思っていたより色男じゃない!」
「あいつこんなとこに何しにきたんじゃ……?」

 町人達がざわざわとうわさ話をしているとモルポソは大きな声を挙げて宣言した。

「は~い。おめぇらそこから一歩でも動いてみろ。一瞬でバラ肉にしてやるぜ。脅しじゃねぇから後で文句行っても受け付けねぇぜ!! 死にたくなかったらそこから一歩も動くんじゃねぇ。お前ら1匹1匹が人質なんだからよ」

 それを聞いてその場は騒然となった。モルポソはひどく皮肉ぶった態度で続けて町人を脅した。

「ん、まぁ~あ? 逃げたところで郵爆野郎が町のあちこちに爆弾しかけてるから下手に逃げても粉々なんだけど!! ハハッ!!」

 町人の間に一気に混乱が広がって、広場はざわめきだした。何の騒ぎかとやってくる住人も増えてますます状況は混乱した。

「そうだ、俺と賭けをしようぜ。さっき、オルバに果たし状を送ってきた。アイツが応じればここで戦う事になるはずだ。も~し~、オルバが勝ったらおめぇらは見逃してやる。だが、オルバがつまらない戦いで肉塊になった場合にゃあ―――」

 その場の人々は彼の宣言に思わず息を飲んだ。ピリピリと緊迫した空気が辺りを包む。

「もし、オルバが俺を満足させなかった場合は、この街の連中、全員に宴のにえになってもらうぜ!! 長いこと地下に潜ってたが、もう我慢なんねぇ!! 俺は斬って斬って斬りまくりてぇんだよぉ!!」

 狂人の発言に聴衆は恐れおののいた。その場の異様なプレッシャーに呑まれ、誰も逃げ出すことが出来なかった。

 モルポソの言っていることは無茶苦茶で、実行不可能のように思えたが、奴ならやりかねないという恐怖感にその場の全員が縛り付けられた。まるで蛇に睨まれたカエルである。

「あ~、果たし状だして来たのに遅ぇなぁ。一人ずつ前菜として刻んでくか? そうだなぁ、肉のやわらけぇキッズとか、レディなんかいいねぇいいねぇ!!」

 モルポソは不気味な笑みを浮かべて舌をチロチロと動かした。そして腰を落とすとベルトに刺さっていたナイフを二本、ねっとりと抜き取った。刃が鞘をこする音が不気味に、怪しく辺りに響いた。

「ほらよぉ、俺の75年モノのグラン・シュテインが血を欲しがってるぜぇ」

 モルポソは器用に手首をクルクル回してナイフトリックを始めた。その動きにオーディエンス、いや、人質達は驚きの声を上げた。

 あんな動き、一般人が真似したら指や手首を斬り落としておしまいだ。だが彼は死と隣り合わせの危ういトリックを朝飯前にやってのけた。まるで、得物と心が通っているかのようなナイフさばきだ。

「あー、待ちきれねぇ。俺ぁもう斬るぜ。ケヒヒヒヒッ……」

 次の刹那、広場の中央、モルポソの目の前に何かが落ちてきた。ボーンと鈍い音を立てて土煙を上げた。

「いっつ~。短距離でもこんな衝撃かぁ。ま、これより何倍も危険な目を弟子に人にやらせておいたんだからしょうがないよね。いっつつ……」

 何かが落下した地点は地面が軽くえぐれた。そして着陸したモノ自体がすくっと立ち上がった。モルポソは少しの間、驚いていたがすぐにオルバがやってきたのだとわかって歓喜の笑みを浮かべた。

 街人たちも飛んできたのがオルバだと確認できると声を上げて盛り上がった。モルポソは街人たちを指差してオルバにむけて声をかけた。

「アンタが負けたら辺りの連中は全部、俺がバラ肉っつーことにしたからよ。これは宴の前の余興にしかすぎねぇんだ。わかるか?」

 やれやれとばかりに魔術師ローブの男はローブを叩いて砂を落とし、三角帽子をかぶり直した。

「やれやれ、随分な自信家だね。さすがに余興よりは楽しんでもらえるとおもっているんだけれど」

 オルバはモルポソを睨みつけた。普段とは全く異なる、気迫に溢れる眼差しだった。

「そうかいそうかい!! せいぜい楽しませてくれる事を期待してるぜ。創雲そううんのオルバ様よぉ!! 早く殺りたくて殺りたくてしょうがねぇ!! 血がたぎるぜぇ!!」

 オルバは緊張した表情を解いて呆れるような目でモルポソを眺めた。足の先から頭の天辺まで観察するように眺めた。

「噂のシリアルキラーっていうだけあってどんな人かと思ってたんだけど……。なんだ、ただの戦闘狂かぁ……」

 モルポソは聞き捨てならないとばかりに声を上げた。苛立っているという様子ではないが腑に落ちないといった態度だ。

「おやぁ? オルバ様は戦闘狂はお嫌いで?」

 そう言いながら再びモルポソは危ういナイフトリックを披露しはじめた。舌なめずりしながらナイフと戯れている。

 またもや茶化すように声をかけられた魔術師ローブの男は首を左右に傾けてコキコキと鳴らしながら、その問いに対する答えを返した。

「戦闘狂ってさ、本当に戦いにしか脳がない人が多いんだよね。そういう人たちはここぞという時に戦闘以外のスキルをバトルに応用できないんだよ。意外と戦闘に役立たないようなスキルも実戦で役に立ったりするんだけど」

 怪しげな長髪のシリアルキラーは舌をチロチロさせながらナイフを持ったまま手を打ち鳴らして拍手をした。刃物がカシャンカシャンと音を立てた。

「はいはい。以上が創雲そううんオルバ様のありがたいお言葉でした~。ではこれからオルバ様には無駄口が叩けなくなるように細切れになってもらいましょうか……いくぜぇっ!!」

 落ち着いた調子で話していたかと思うと、いきなりキレたようにモルポソは仕掛けてきた。

 オルバめがけてナイフを逆手に持ち替え、腕をまっすぐかざして突っ込んできた。それに対してオルバはため息をつくと、マジックブックを構えた
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