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楽土創世のグリモア 作者:しらたぬき

Chapter3

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いつも頼りないマスター

 アシェリィ達がボーンザの確保に乗り出した頃、オルバはまだハンモックに揺られて呑気に惰眠を貪っていた。

「ん~、むにゃむ……もう食べられません……」

 だが彼はドカンドカンという何者かが木の扉を打ちならす音で目を覚ました。眠そうに目をこすりながら半身を起こす。

「なんだ……おきゃくさんかな……」

 オルバがまたもや眠たそうにまぶたをこすって扉を開けるとそこには誰も居なかった。

「はて……」

 その直後、足元から怒鳴り声がした。

「はて、じゃねぇよ寝ぼけてんじゃねぇ。湖の湖畔に怪しい手紙が落ちてたぜ。お前当てじゃねぇのか」

 オルバは足元を見た。丸いボールのような甲殻にところどころ穴が空き、絶えず霧を噴き出している。

「……なんだカッゾか。で、手紙の中身は……」

「知らねぇよてめぇで読め」

 そう言うとカッゾは体に張り付いていたハガキを吹き出してオルバの目の前まで飛ばした。

 すかさす彼はそれをキャッチするとまじまじと珍しげな切手が貼られた封筒を観察し、手紙を取り出して読み始めた。

――創雲のオルバへ
ずっと前からあんたと殺りあいたいと思っていた。俺は潜ってっきり人を斬ってねぇ。今はただひたすら斬って斬って斬りまくりてぇ。

というわけで俺と決闘しろ。俺との決闘に応じねぇ場合は郵爆野郎の爆弾がシリルの街中でドカーンと大爆発だ。

街を見守る賢者様としてはこんな暴挙見逃せねぇよなぁ? シリルの広場で待つ。オーディエンスは多いほど宴が盛り上がるだろ? 楽しみにしてるぜ。

By モルポソ

それを読んでオルバは深い溜息をついた。

「また熱烈なラブレターだこと。はぁ~、街の広場だって? 滅茶苦茶目立つじゃないか。憂鬱だなぁ~」

 それを聞いていたカッゾはすかさず突っ込んだ。

「普通、そこは殺り合いする事に関して憂いるべきだろ。まぁお前らしいちゃらしいが……。で、どうすんだ?」

 オルバは困ったような表情で顎を指で擦った。

「そりゃ流石に無視するわけには行かないでしょ。ボーンザと爆弾の方はアシェリィ達でなんとかなるかもしれないけれど、正直モルポソは荷が重すぎる。M.D.T.Fの隊員でも苦戦すると思うよ」

 それを聞いた幻魔は茶化すようにつぶやいた。

「ほぉ~。んじゃおめぇなら何とかなるってか?」

 オルバは肩をすくめてため息を付いた。そして目をつむったまま首を左右に振って呆れたような仕草をとった。

「おいおい、マスターに食って掛かる幻魔があるかい。もうちょっと敬って欲しいもんだね。どうなるかはわからない。やってみるまでさ」

 そう言うと彼は木の家に戻って部屋から図鑑のような本を取り出してきた。同時に魔法使いの三角帽子を深くかぶっていた。そして片目をつむって取り出してきた本に積もったホコリを眺め、息を吹きかけた。

「いくら使ってないからとはいえ、こんな扱いじゃバチがあたるね……いでよ運天!!」

 そう彼が詠唱すると図鑑のような本が触れても居ないのにパラリパラリとめくれだした。やがて、あるページでページがとどまり、そのページが淡く緑色に光りだした。

 風属性の幻魔の色である。パッっと光ったかと思うと雲に乗ったタヌキ顔をした幻魔がどこからともなく飛んできた。手には杖を持っていて、東洋風のローブを着ている。

「ん、なんじゃ? 話を聞いておるぶんにはわしの出番では無いようじゃが……」

 運天の問いに対してオルバは目線を逸らした。いかにも乗り気でないといった様子である。

「前にさ、私の弟子を雲の弾丸で飛ばしたろ? あれをやってくれないかな」

 運天は聞くなり驚いたようで、興味深気な態度で目をまんまるにしてこちらを見つめてきた。なんだか期待の視線を感じる。

「ほぉ~、あのどうなるかわからん博打をまたやるとな? 危ういことを避けたがるお主らしくないのぉ……」

 オルバは両手のひらをを前に突き出して横に振り、否定の意を示した。

「いや、いや。前ほど遠くには行かないよ。だからそんなハイパワーで打ち出さなくっていいって。シリルの広場までだよ。それに、弟子をふっ飛ばしている手前、これくらいは自分も試してみないととは思うし……」

 運天は開いていた目を細め、なんだか残念そうに雲にねそべり、頬杖をついた。

「なんじゃ、つまらんのう……。海を超えて外国へふっ飛ばしてやろうかとおもっとったのに。残念じゃのう」

 オルバは納得行かないとばかりに魔法使いの三角帽子の隅をつまんでを左右にずらした。

「まったく、なんで私の幻魔達はみんな揃いも揃ってアスターを小馬鹿にして茶化してくるかな……。この歳、調教しなおしてやろうか」

 彼は本気かどうかわからない言葉を放った。それに雲の幻魔は即答し、鋭いツッコミを入れた。

「バチじゃよバチ。お主、自分で言っとったじゃろ。わかりきったことを言うでない。さて、茶番もそこそこにするぞえ。準備はええか?」

 オルバは一通りの装備を用意したのを確認して深く頷いた。真剣勝負に赴くだけあって、さすがのオルバでも引き締まった表情をしているように見える。

「近距離の飛行じゃから雲には包まんぞ?」

「えっ!? ちょっ、まっ!!」

 バシューーンという音と共にオルバは打ち出された。それを見ていたカッゾと運天は呆れた。

「アイツ、ここぞという時なのにに締まらねぇんだよな」

 運天は目を細めながら複雑な表情になった。カッゾと目を合わせながらぼそっつぶやいた。もちろん、彼も呆れていた。

「腕は確かに立つんじゃが……わしらあんなマスターで大丈夫なんじゃろか?」

幻魔二匹は立ち尽くして遠く空を眺めた。
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