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楽土創世のグリモア 作者:しらたぬき

Chapter3

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シーポス再び

 アシェリィはボロい木の板を持ち上げて布で拭いてホコリを落とした。それは彼女愛用のマナボードだった。汚れを落としながら彼女は独り言を言った。

「うわぁ~、しばらく使わないうちにこんなになっちゃった。森のど真ん中では乗る機会無いし、何より修行が忙しかったからなぁ……」

 アシェリィは修行している間、オルバの住んでいる木をくりぬいた家のそばに寝泊まりしていた。同じような木の家はもう一つあるのだ。

 オルバの家とは目と鼻の先で歩いてもあっという間に着く。なんでもかつてはファイセルがここを使っていたらしい。

 アシェリィはそこで一人暮らしをして、雑談や食事、勉強や修行の際にオルバの家に行くような生活を送ってていた。

 アシェリィがマナボードを片手に抱えて木の家を出るとオルバが腕を組んで待っていた。

「おやおや、だいぶブランクが長いのに大丈夫なのかい?」

 そう尋ねるオルバを横目にアシェリィは靴の裏にマナガムをつけはじめた。

「ちょっと待った。 アシェリィ、君にはもうマナガム要らないんじゃない? ほら、マナを伝達する仲介の幻魔を使えば魔力の伝達は可能だって教えたじゃない」

 それを聞いたアシェリィは目を見開いてなるほどという表情を浮かべつつ、無言のままオルバを指差した。

「これこれ、師匠せんせいを指差すんじゃないよ。ん~、そうだな。マナボードは大地の精霊と風の精霊をケンカさせるようにして反発力や浮力を生み出すアイテムなんだ。ということはマナボードの性能を更に活かすには?」

 オルバから直接聞くまでもないといった様子でアシェリィはマナガムをつけないまま、マナボードの上に乗って精神集中し始めた。

「微風の眷属よ、駆け抜けるそよ風のように我にその俊敏さを与えたまえ!! サモン・エアリアル・サージェ!!」

 彼女がそう詠唱すると靴の裏とマナボードの接点が黄緑色の蛍光色に光りだした。

「うん。まずまずだね。軽く乗ってみなさい」

 言われるままにアシェリィが軽く試し乗りしてみると全く乗り心地が異なった。今までは曲がるとき体を傾けたり、フォームを整えないバランスを崩していたが、今度は違う。

 自分の体重移動に合わせてボードが自動的に角度調整してくれているようである。まるでマナボードに意思が宿ったようだった。それに心なしかスピードもアップしている。

「うんうん。それなら低空だけどホバリングくらいは出来るんじゃない? 水属性で応用すれば水上サーフィンも出来なくはないね……っと、こんな無駄話をしているヒマは無いんだったね。

早くアシェリィはシーポスの人たちと合流して彼らと協力するんだ。いつも君に危ないことには首を突っ込むなと言っている私が今回文句を言わないのには理由がある。さて、なんだか分かるかな?」

 オルバは実際の試験を想定してかやたらと問題形式での質問をアシェリィに振ってくることが多かった。

 それは”答えは常に自分で見つけていかないと後々苦労する”という彼の人生訓を含んでいた。だが当のアシェリィはなぞなぞやミニゲームくらいの感覚でその問いに望んでいた。

「う~ん……マナボードの技術が上がったから……? ん~確かに爆弾回収時とか差し迫った状態では強みかもしれないけど、決定打ではないですよね……なんだろう?」

 それを聞いたオルバは指を振りながら舌を鳴らしつつヒントを与えた。

「私とか、君とかにしか出来ないこと。それが爆弾を捕まえるのに役立つのさ」

 その一言を聞いて彼女はすぐに顔を上げてオルバに確認をとった。

「……あっ、火、炎、爆発属性のエレメンタル・スピリッツを”視たり”、”聴いたり”、”嗅げば”いいんですね? 確かに爆発の精霊に絞れば街中の火種がひっかからずにボーンザの爆弾だけを察知することが出来ますね!!」

「その通り。ただね、ボーンザは恐らく60~80個の火種を用意してそれを最終的に3つか4つの爆弾に集結させる気でいると思う。さすがに君一人でそれだけの火種をさばくのは無理だ。そこでアルルケンの出番ってわけさ」

 それを聞いてアシェリィは周囲をキョロキョロと見渡した。丘犬……アルルケンの姿は見えないし、気配を察知することも出来ない。普通、幻魔が近くにいればそれなりに気配を感じることが出来るのだが。

「あぁ、アルルケンはもうシリルに入ってるよ。近くにある火種は君が、遠くの火種はアルルケンが消して回ってくれるだろう。

現に今、彼は人口の密集していない地域の火種にとりかかってる。さすがに緊急時とはいえ、彼を街中に走らせるとそれはそれでパニックになるからね。

郊外でひっそり活動してもらっているのさ。さてアシェリィ。もうお行き。君がシーポスの皆を護るんだ」

 アシェリィはそれを聞いて頷くとまるで冒険に出かけるかのようなウキウキしたような表情になった。そしてオルバに背を向けて森の霧の中へ消えていった。

「ふむ……彼女の火遊び好きにも困ったもんだな。さて、私は……果たし状とやらが来るまで寝るかなふぁっ、あ~あ~」

 オルバは独り言を言うと緊張感の欠片もなしに家の扉を開けてハンモックに飛び込んで寝そべった。そのまま揺られてスースーと眠ってしまった。

 シリル郵便局右斜め階段前にシーポスの面々が集まりつつあった。メンバーの一人カレンヌが招集を受けてやってきた。いつもの集会所に愛兎のガッツくんにのって滑り込んできた。

ランページ・ラビットのガッツくんから飛び降りるとゴーグルを持ち上げて額にかけた。以前より伸びたセミロングの明るい茶髪をゆらしながらこちらへやってくる。

「うーっす、ウェイスト先輩、急な呼び出しってなんですか?」

そう尋ねられたシリル郵便局正職員兼シーポスのリーダー、ウェイストはなにやら落ち着いかない様子だ。高い鼻の強面が一層際立っている。カレンヌの問に深刻な表情で答えた。

「今回は……ただ事じゃない。正直、この局の職員だけでは解決できない事態だよ。シーポスにまで救援要請が来てるんだ」

「キューエン? 救援ってなんのです?」

「それは…………」

「お~~~~い」

2人が影に気づいて頭上を見上げると気球に乗った女性が降りてきた。シェアラねえだ。ニコニコしながらいつもの定位置で気球の重りを下ろした。綺麗な赤をした髪の毛をゴンドラから垂らして、上半身を乗り出してきた。

「ウェイストく~ん、緊急って何かな~? なんだか穏やかじゃないね~」

気づくとウェイストの背後にも一人、黒い短髪の筋骨隆々の大男がいつの間にか立っていた。体は大きいが存在感が薄い。クラッカスだ。

「押忍……緊急、なんすか……」

 メンバー全員から事情を聞かれたウェイストは困惑していた。いくら本局の指令とはいえ、末端にすぎない自分たちが”爆弾処理班”に任命されることなどありえないことだったからだ。

 ウェイストは助っ人が居るとは聞きつつも自分たちが使い捨ての盾にされたのではないかと思っていた。彼が重苦しく口を開こうと思った時、人並みをかき分けて綺麗な緑色が映えた。

 マナボードに乗った緑髪の少女である。彼女はうまい具合にターンしながら人並みかき分けて集会場の前にやってきた。

 そしてボードの端を蹴りあげて空中でキャッチし、そのまま脚を地面につけた。その光景にその場の全員が驚いたが、すぐにカレンヌが声をかけた。

「アシェリィ……アシェリィなのか!?」

「はいっ! アーシェリィー・クレメンツです!! みなさんお久しぶりです!!」

それを聞くとシーポスの面々は賑やかに再会を喜んだ。
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