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卒業
作:桜井 広海


 尾崎豊の唄の様に窓ガラスを壊して周ったりはしていないが、壊してやりたいと思った事は一度や二度ではない。
逆らい続け足掻き続けていた。俺にとって尾崎豊は心の代弁者であり、俺達の良き理解者だ。
 そんな尾崎の唄と共に歩み続けた4年間。今終わりを迎える。
 桜の舞うこの季節に俺は卒業する。

 
親に反抗し、夢中で走り続けたこの4年間を、振り返ると全ての思い出が愛しく思える。
長いようで短かった4年間...何だか名残り惜しく感じられるのは俺だけだろうか?
「色んなことがあったな...」つぶやいた。
思い起こせば、この4年間嬉しい事も悲しい事も沢山あった。
恋もした。席が決まっていないにも関わらず俺の隣にいつも座る女がいた。初めは偶然だと思っていたが、毎日のように隣に来る女に俺は好意を持つ様になったのだ。
「よく会いますね。」と声をかけると女は笑顔で答えた。
「ええ」
 それをきっかけに少しずつ話をする様になった。
毎日の他愛もない話。今日は調子どう?とか食べ物は何が好きとか、そんなくだらない話に笑って答える女に俺は好きになってしまっていた。
「もしもし?恵美子?あたし、可奈子。」
彼女が俺の隣にいた時、携帯電話で話ていた。
 彼女の名前を知ったのは、その時だった。
「可奈子さんって言うんですね?」
彼女が電話を切った後たずねた。
「あっ、ええ。そうなの。あたし、田中可奈子です。よろしく。」
 携帯をバックに急いでしまうと可奈子は笑顔で言った。
それからは、帰りにマックへ一緒に行ったりご飯を食べに行く事もあった。
 こんな風に毎日可奈子と会い、他愛もない話がどんなに楽しいか…社会人では味わえない楽しみがそこにはあった。
 けれど、そんな日はそう長くは続かなかった。
可奈子には彼氏がいたのだ。
俺の隣にいつも居たはずの可奈子が男と二人並んでイチャついていた。
可奈子はそれから俺の隣を避けていた。
俺は何も言えず、その場を立ち去った。
 失恋した夜は人知れず泣いたりもした。青春だななんて思っておかしくて笑った。
恋愛はやっぱり俺には向いていない。
 悔しくてやりきれなくて、思いっきり走る事で何もかもを忘れようとした。
今もそれは変わってない。
俺は高校時代、陸上の選手だった。大学でも走る事は好きだった。しかし、サークルに入った事で部活も疎かになり遊びほうけ、酒とタバコ、ギャンブルを好む様になった。

 そこから全て狂ったのかもしれない。
今の俺があるのは…
 母親は、俺を見るなり文句ばかりだ。
けれど、そんな愚痴にも耐えて生活してきた。
 いい事ばかりではないが、それなりに楽しかった。真面目にやっていた方だと思う。
予習、復習は毎日欠かさずやっていたし、誰よりも真面目に取り組んでいた方だと思う。
 しかし、真面目にやろうが遊びほうけていようが結果が全て。
結果を出さない俺に母親の冷たい目線は矢の様に俺の心に突き刺さる。
「まったく、あんたは…」
これが母親の口癖で断るごとに口にする。
「俺だって、ちゃんとやってんだよ!!。」
そう言っても、母親の信じていませんよ。の視線くらい俺にはわかる。
 台所で米をとぎながら一人事の様に母親がつぶやいた。
「いつまでも親に甘えて…まったく…どうすんだろうねぇ…」
俺は母親にブチ切れた。
「もう卒業するから就活だってしてんだよ。グチグチうるせーよ!」
 母親は目をまんまるにして驚いていた。
「就職する気あったのね!あんた、何にも考えてないんだとばっかり…」
 今にも泣き出しそうの顔で俺を見た。大げさだと思った。
 




 卒業式…桜の花は満開で花びらの絨毯の中、学生達は泣きながら、あるいは笑い合いながら歩いて行く。俺も卒業か…暖かい陽だまりの中、すがすがしい空気と共に雲一つない青空。
新たな旅立ちにふさわしい。
 ゆっくりとしたメロディーは聞き覚えのある懐かしい曲だ。仰げば尊しは涙を誘う。

    いざ、さらば…
 そんな光景を眺めていた。昨日。


俺は店を後にした。振り返り見上げたパチンコ屋の看板に挨拶する。
    いざ、さらば…


母親は言った。
「37にもなって一度も就職しないで遊びほうけて…ずーっと何もしないで、ようやく夢があるって言うから何かと思えばパチプロ?設定だのデーターだの毎日調べてるけど負けてばかりじゃない。いつまでこんな生活続けるのかね…」
俺も言い返した。
「だから…パチンコ4年間やってみて、向いてない事に気がついたよ。今まで大学卒業してから11年近く、何もしないでいるのも飽きたし、ちゃんと働くよ。ほら、求人誌と履歴書だってある。」
「続けばいいけど…」
母親のため息まじりの後ろ姿が悲しく見え思わず叫んだ。
「15年間のニート生活は卒業する。真面目に働くから!」







 

 


今回もこういうパターン。3作目。しかし今回が1番無理があるかもしれないです。途中で気がついた方も多いのでは…最後まで
読んでいただいて感謝です。













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