純白の空が顔を覗かせると、切り裂くようなそよ風が僕の前方から追し寄せてくる。そよ風は痛いほどやさしい感触を残してはるか後方へと前進して行った。
僕の心に残ったその感触は今でも僕の一番大切な場所に、丁寧に投げ捨てられている。それが再び水色の光を受ける時は来るのだろうか。仄かに明るく、そして火傷するような冷たさの中で。
鼻を突くようなやわらかい匂いがした。多分それは、僕の周りで枯れようと必死に咲き続ける花々のせいだろう。くすんだパラレルカラーを纏ったそれ達は、浄土色した空に何を見ているのだろうか。
痛いほどの希望に身を震わせる自分か。それとも、朽ち果てた栄光の姿をした自分なのか。彼らは耳が痛くなるほどの無言で答えた。
僕は鼻をつまみながら耳を塞ごうとした。しかし、それを行うことは、輝きながらくすむ様に、淀みながら透き通るように簡素な難しさがあった。
だから僕の耳にはふんわりした痛みが襲い、僕の鼻には突き刺すようなやわらかい匂いが襲った。
僕は思わず瞼を閉じ、眩い世界へと逃げ出した。
しかし、暗闇は僕とは反対方向に僕を追いかけ続ける。それが僕には子守唄のように怖かった。だから僕も誰にも聞こえないような大声で歌った。
歌が鼻歌を歌いながら一心不乱に四方八方へと紆余曲折していく。黒く眩い世界は一瞬にして黒と白だけのカラフルな世界へと、以前となんら変わらない姿へ変貌して行った。
僕は我先に恐る恐る瞼を開け、乳白色の世界に迷いながら溶け込んだ。
そこには、今まで見たことない懐かしい景色がはっきりと滲んでいた。
「ああ、僕は……僕はこのために……」
玲瓏な雫が目から毀れ上がった。整然とした騒がしさの中に、僕はただただ立ち尽くしているだけだった。
それはあまりにも勇敢で、無残な面影を残した夕暮れだった。
朝日は沈み、夕日は昇っていたのだった。
そのことをたった今、僕は初めて知ったのだ。
それが、僕に残された唯一の煩瑣だったのかもしれない。
何も見えない暗闇の中、僕を見た人は出会うだろう。
些細なことで逃げ出してしまう勇気を大事に振り回しながら。
理想から逃げずに立ち向かうその弱気を乱暴に抱き締めながら。
あなたと僕は出会ってる。
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