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ありがたくない親切
 落下を手で止めたペットボトルはそのままである。それはパンティと一緒にされているから、股間から完全に抜き去ることは出来ないのだ。かと言って手を離したら、パンティと一緒に足もとに落ちてしまう。麻美は中途半端な状態に置かれていたのだ。
 周りに群れている全オバタリアンが自分をじっと見ている……。そんな気がしてならない。だが男は再び歩き始めた。麻美は少しでも自分の姿が周囲から隠れるように男に必死になって寄り添って歩こうとした。
 男に目的地はないらしい。買い物客の如くデパ地下の内部をあっちの売り場こっちの売り場とふらふら歩く。端から見れば若夫婦が商品を冷やかして回っているようにも見えるだろう。
 だが麻美はとてもそんな気分にはなれなかった。人が多いからただでさえまっすぐ歩けない。しかもそんなところで、商品棚の前の通路にしゃがみこみ、製造年月日とか生産国とかを確認でもしているのか、一つ一つの商品ラベルを丹念に見て選んでいる困ったおばさんも多い。その姿勢の意味することは麻美が低いアングルから観察される危険があるということである。
 だから彼女たちに対する注意だけで頭はいっぱいだった。さっきの店でさんざん言葉責めに合わされたことで植え付けられた、同性の目に対する恐怖が麻美を縛っていたのだ。
 だがさらに麻美は追い打ちをかけられることになった。
「お一ついかがですか、新製品です。どうです? 今夜のおかずに」
「ほら、安いよ、安いよ、ほらすごく新鮮でおいしいから、騙されたと思って一切れ試食してみて、奥さん」
 などと次々と話しかけられる。不自然きわまりない姿勢を強いられた麻美にまともに受け答えをする余裕はもちろんない。
 だいたい手を前に出せない麻美は彼等には最初からタカビーっぽい、嫌な客に映っているはずだ。そうとなれば何となく胡散臭そうな目で見られていることは間違いない。
 なんて辛い目に遭わしてくれるのよ。エクストラをもらう口実なんかない? 絶対基本料金だけじゃ割が合わない……。
 と思いつつも麻美の被虐による興奮もまた高まっていた。
 呼びかけをかわそうとして、すばやく腰を回転させれば、今度は自分で自分の秘所をペットボトル先端の出っ張りで小突きまわしていた。
 それは火のついた被虐心にはちょうどいいスパイスで麻美をいよいよ切羽詰まらせることとなり、喘ぎ声を口の中で噛み殺さなくてはならなくなった。
 だが男の責めはまだ終わっていなかった。
 男は何と姿を消したのである。
 一瞬目を離した隙に男は忽然と姿を消していた。
 麻美は必死になって男を捜した。
 だが、いくら周りを見回してもどこにも男の姿を見つけられない。
 麻美は焦った。
「お客様、お身体の具合がお悪いのでは?」
 おかしな格好できょろきょろしていた麻美の姿はよほど人目を引いたのだろう。デパートの制服を着込んだ、まるで入社したばかりという感じの若い女性にいきなり話しかけられた。胸のバッジには「新入社員 研修中」と書いてある。
 返事が満足に出来ない麻美にさらに彼女は話しかけてきた。
「あちらに休憩室もございますがご案内しましょうか?」
 彼女に今の状態を知られたらと思うと麻美の動揺は一層激しくなった。やっとの思いで声を出す。
「いえ、その、だ、大丈夫、つ、連れと、そ、その、ちょっと、はぐれちゃって……」
「アナウンスでお呼びいたしましょうか?」
 じょ、冗談じゃない……、名前だって知らないのに……
「い、いえ、だ、ダイジョーブ、ホントに、いいから」
「はあ。はい。で、でも、あら、お客様、ブラが変になってませんか?」
 思い切り顔をブルブル振って、麻美はそのしつこい店員から逃げた。
 周りの視線が恐い。
 麻美は必死になって男の姿を追った。バレた時、男が近くにいないと自分がなんでこんな姿なのか説明できない。手錠だって男がいないとはずせない。下手をしたらレスキューとかわけがわからない人がいっぱい来るかもしれない……私が自分一人でやってるだけの自縛嗜好の変態にされてしまう。冗談じゃない。絶対やだ、そんなのは……。どこ、どこにいるの? お願いだから姿を見せて……。
 雑踏をかき分けながらかなり無理をして早く歩いた。おかげでペットボトルはまるで電動マッサージャーのように激しく秘丘を叩き、ブラはブラウスの下の方へと完全にズレ下がり、乳首には直接ブラウスが時折接触する感触が伝わってきた。おそらく目をこらせばブラウスの下に乳輪が透けて見えるはずである。
 だがそんなことにかまってはいられなかった。立ち止まったらまた誰かから話しかけられる……。
 精神的に追い詰められた上にペットボトルとずれたブラというのはきつかった。気がつけば麻美の息は上がり、乳首は一層固く敏感になり、自分で自分を深く責め嬲っていた。


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