ブラがピンチだ
「じゃ、そろそろ行こうか」
男は大きな声でそう言った。それは麻美にとっても待ちこがれた言葉だった。しかし男の言葉はまだ続いていた。急に声を小さく絞った。
「これからが本番だよ」
男の言葉を詮索する余裕は麻美にはない。が、すぐに新たな異変が麻美を襲った。
そんな!
立ち上がった瞬間パンティがずり下がったのである。腰掛けたおかげでペットボトルはパンティを肌から引き剥がしながらテントを作っていた。そのせいでパンティがもっともお尻の膨らんだところから抜けたのである。自ら縮もうとするパンティはもう下へ向かうだけだった。そこにボトルに入った水の重みが加わったのだ。パンティは一気に下がった。
麻美は慌てて股を閉じペットボトルを強く締めた。パンティが下がるのはとにかくこれで止められる。だが、その状態では少なくとも普通には歩けなかった。
見れば男はさっさと勘定を済ませ、はるか先でこちらを振り返っている。麻美は無表情を崩さない男の目に喜悦の色を見た。
嬲られている……
麻美はそれを深く思い知らされた。周囲の目線が恐い。自分の横をすり抜けていくオバタリアンも多い。妙な形で衝突されないことを密かに祈りながら、男にしずしずと近づいた。太いペットボトルを自分の内股の肉で強く挟みつける。麻美は特に内股が弱かった。小学校の時からうんてい棒は苦手だった。ふとももで鉄パイプを締め付けると、その快感で力が入らなくなって上れなくなる。そんなだから、それよりもずっと太いボトルに抗えるわけがない。すぐ力が抜ける、落とさないようにするためにはそれに抗ってさらに力を入れなければならない。麻美はすぐににっちもさっちもいかない状態になった。
「い、一緒に歩いて……先に行かないでください……、お願いします」
やっとの思いで男のところに辿り着いた麻美は、思わずそんな声を出していた。パンティがフラフラに浮いた状態になっていたのだ。ペットボトルを上に持ち上げることはできない。これ以上下がるのを食い止めるのが精一杯なのだ。そしてその力は麻美の肉欲をも刺激し続けるものだったのである。いやそれだけではない。それ自体、麻美の身体を一層敏感にしてしまうものでもあった……。
麻美がそれに気づいたのは、ボトルと太ももの接触面に湿ったようなぬめった感触があることに気がついて、であった。もちろん汗もあるだろう。だが、汗だけでこんなにぬるぬるになるわけがない。
男はそんな麻美をさらに奈落に突き落とす言葉を小声で投げかけた。
「おやおや、これ、君の臭いなのかい。香水も負けるほどのメスの臭いを撒き散らしているとは。下の方はもしかしたら大洪水かい?」
周囲のおばさんがその臭いに敏感でないわけがない。必ず変だと思ったのがいる……。
そう思うだけで麻美は絶望に襲われ、泣きたいほど惨めな気分を味わうことになった。下を向いたまま、僅かに首を縦に一回振った。
が、一方でその強烈な被虐感は禁断の快楽そのものでもあった。
「これはかなり堪えたのかな、それとももう落としそうなのかい?」
「はい、もうこれ以上支えられません。落としそうです」
とにかく今の切羽詰まった状況を何とかしてもらうことが先決だった。
「弱ったな。じゃあ、自分の手でペットボトルを持って」
「手錠で届きません」
「こうすれば、届くだろ」
男の手が麻美の背中に載せられた。ハーフコートは薄く柔らかい素材だ。男の手を背中にはっきりと感じた。
「きゃ」
麻美は悲鳴を出しかけ、すぐにそれを呑み込んだ。
男はコートの上から一瞬でブラの背中のホックをはずしていた。チェーンがはずれ手首がぐんと下がり腕が真っ直ぐになった。男が言った通り、ちょっと力を入れたら足に挟んだペットボトルをスカートごしに触ることができた。身を少しよじり、麻美はとにかくスカートの後ろ側をやや引っ張り上げるような形でそれにくるまったペットボトルを手で持った。
だがそれは麻美に新しい困難をもたらすことでもあった。
ホックをはずされたブラは何とシャツの中でずり落ちたのである。男はブラに手錠を結びつける際、肩紐を切っていたらしい。つまりブラはホックだけで留まっていたのだ。カップが引っかかるからブラウスの外にブラが落ちる可能性は低いだろうが、位置のずれたブラで正面側の見栄えはかなりおかしくなった。まだ乳首はブラの一部に隠れているが、ズレがこれから大きくなったらどうなるか分からない。またブラは前側に倒れたらしく、シャツの胸の膨らみが浮き上がったブラのせいで、妙に大きくなりやたらと目立つことになった。
そしてハーフコートの前はボタンをしていない。そんな状態を、危険な好奇心に満ちたオバタリアンだらけの場所で晒すのだ。
麻美は生きた心地がしなくなった。
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