お散歩プレイ
「できました。これでいいの?」
スカートを下ろし、ヒールを履き、男の前で立ち姿を見せる。
「うん、いいみたいだな。それじゃ、今度は手錠をつけさせてもらうよ、手を背中に回して」
着衣のままの拘束というのは麻美には意外だった。滅多にいないけどまあそういうのが好きという人はいる。だけどそれだって下着姿、あるいはコスプレみたいなもので行うのが普通だ。こんな当たり前の格好のまま拘束を始めたお客さんは初めてだった。
変わったお客さん、と思いながら麻美は手を後ろに回した。
男は自分の黒いバッグを開けて中をゴソゴソとかき回している。そして細いチェーンのついた手錠をそこから出した。ただしその手錠は麻美も見たことの無いものだった。手首を通す部分は8の字型でくっついていた。つまり鎖はいらないはずなのだが……。
男は麻美の両手首に背中のところでその手錠をかけた。腰の上のあたりでぴったり合わされて括られたので、ほとんど両腕とも動かせなくなった。ただし、腕をまっすぐにしてさえいればそれほど窮屈ではなかった。
「ヒッ、な、何を」
「じっとして。すぐ済む」
男はいきなり麻美のブラウスを背中でめくりあげていた。ブラの背中に回った部分を持ち上げられた。そして同時に手首が手錠ごと引っ張り上げられた。
「よ〜し、もういいぞ」
シャツは元通りにされた。が、二つ違和感があった。一つは背中に金属の冷たい感触が残ったこと、そして腕をまっすぐ伸ばせなくなったことだ。手錠につながったチェーンがブラに止められたらしい。手首は腰のあたりで交叉した形で止まることになった。単純な8の字ではなく、角度が変わる手錠らしい。思ったより手首の自由度が大きくおかげで肩や手首から痛みが出ることはなかった。
いったい、何をするんだろう……
麻美には男の意図が相変わらず見通せない。
自分の知らない責めを男がしようとしている……
麻美の心の中に不安と期待が交錯しはじめた。
聞いても教えてはくれないだろうが、とにかく質問してみることにした。
「これで何をするんです?」
「ま、言ってみれば、一種の変態プレイってやつだな。これから一緒に外をお散歩しようっていう趣向だよ」
男がちゃんと答えたのは意外だったが、中味は驚くようなものでも何でも無かった。
な〜んだ、お散歩プレイか。
一回だけだが、そういう男が居た。しかしそれはほぼ全裸で、深夜のホテルで五分ほど廊下に出されるというものだった。ドキドキしたことは確かだが、それがお客さんにとってどうして面白いと思えるのかはよくわからないというのが正直な感想だった。
期待して、損しちゃった……
男の方は、またバッグからものを出していた。但しそれは責め具でも何でもない、ごくごくありきたりの五百CCペットボトル入りのコーラ。キャップを開け、三分の一ほど残っていた中味を目の前で飲んだ。そしてボトルを持ったままバスに入ってしまった。
すぐ戻った男の手にあったボトルはかなりの量の水で満たされていた。
男は麻美の間近でしゃがんだ。
「ちょっと失礼」
無造作にスカートが持ち上げられた。そして股の間にペットボトルが突っ込まれる。
「いきなり変なものを身体に突っ込まないで下さいよ。無茶なことしたら訴えます」
突然のことに麻美は思わずそう言った。時折とんでもないものを入れようとするヤツがいるのだ。だが男はその言葉にちょっとだけ顔を上げただけだった。
「心配しなくていいよ、ここに挟んでもらうだけだ。ちょっとパンティを使わせてもらうけどね」
秘丘を覆う黒レースをほんの少し指で持ち上げ、隙間に青く平べったいひもを通された。そして先ほどのボトルの中央にもそれをくるくると巻き付けた。そのひもにはマジックテープがあるらしく、隙間無くピッタリ巻き付いた状態で麻美のパンティの股間部直下にペットボトルをしっかり固定してしまった。
「さて出来た。それじゃ散歩に行きましょうか」
男は元通りにスカートを下ろし、それから麻美が部屋に入ってきた時、テーブルの上に置いたハーフコートとポシェットを持ち、まずポシェットを首にかけさらにハーフコートを上から羽織らせた。麻美の準備が済むと自分も上着を着てドアに向かった。
「さ、いきましょ、お嬢さん」
露出している部分はないし、拘束といっても後ろ手錠だけ。スカートの中のペットボトルはちょっとだけ歩きにくいがそれ自体外から見えるものでもなく、何がSMプレイになっているのか、麻美にはさっぱり理解できなかった。しかし男に反対する理由も見つからないので、言われた通りに部屋の外へ出た。
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