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江戸時代の遊郭の楼主に生まれ変わったので遊女の待遇改善に努めつつ吉原遊廓の未来も変えようと思う 作者:水源
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遊女の一日 鈴蘭と茉莉花の休日

 玉屋から三河屋へ住み替えした鈴蘭と茉莉花。
今日は二人共危険日休みのど真ん中の日だった。

 今日は休みとのんびり昼過ぎに二人は起きて風呂に一緒に入った。

「こっちの店はこうやってのんびり出来ていいよね。
 お姉ちゃん背中流してあげるね」

 妹は姉の背中を石鹸で洗いながらそういった。

「あ、うん、そうだね。
 こっちに来れて本当良かったと思う」

「うん、大変だったもんね、いままで」

 十分な睡眠時間と食事によって二人共だいぶ健康的になってきた。

 姉は妹に背中を流してもらった後、姉は逆に妹の背中を流し二人仲良く湯船に浸かった後、昼ごはんを一緒に食べる。

「今日のご飯も美味しいね。
 おっとうやおっかあにも食べさせてあげたいね」

 妹は無邪気に笑って言う。

「う、うん、そうだねぇ」

 そういいながらも姉はそこまで単純には割り切れなかった。
確かに母は泣きながら見送ってくれたが……。

 三河屋の遊女は危険日休みを与えられているといっても、実際には完全に休むのではなく三河屋の持っている美人楼、万国食堂、もふもふ茶屋、劇場などの何処かで仕事の手伝いをしたりするのが普通なのだが、姉妹は楼主の自家菜園の手入れの手伝いをしていることも多かった。
農村から吉原に売られてくる人間は多くなく、吉原の遊女の多くは元々読み書きや算術の知識を持っている商人や武家の娘なので、三河屋の楼主はそういった意味でも姉妹を重宝していた。
勿論その時は地味で汚れても良い服に着替えている。

「お姉ちゃん土いじりは大変だけど楽しいね」

「そうだね、土いじりをしてるとなんか落ち着くよね」

 二人は陽の光を浴びながら、春めいてきてモンシロチョウやミツバチが飛ぶ、畑に生えてきた雑草をひっこぬいたり、土が乾いていたら桶と柄杓で水やりをしたりしていた。
無論水をやらなくても良いと言われている場所にはやっていない。
そんなことだけでも二人は楽しそうであった。

「おとっちゃんやおっかちゃん、兄ちゃんも元気かな」

「きっと元気にやってるよ」

「そうだよね」

 二人は楽しそうに話をしながら農作業をしていた。
なんだかんだで小さいときから色々畑や田圃の手伝いはしてきたのだ。
ある程度作業が終わったら畑作業を終えて、二人は吉原内の美人楼に向かう。
三河屋の遊女などは美人楼などの三河屋がやっている商用施設は安く入れるのだ。
流石に無料というわけには行かないがそれでも半額ほどで使える。

「いらっしゃ~い、あら、お二人さん蒸し風呂に入りに来たの?」

 支配人の竜胆が笑顔で二人を出迎えた。

「はい、空いてますか?」

「大丈夫よ、のんびりしていきなさいな」

「ありがとうございます」

「じゃあ行こう、お姉ちゃん」

「うん」

 二人は服を脱ぐとかけ湯で手足についた泥を流してから蒸し風呂に入る。

「お姉ちゃん、蒸し風呂はお湯に浸かるのとは別の気持ちよさがあるよね」

「そうだね、汗もいっぱいかいて、疲れが取れる気がするよね」

 そして蒸し風呂から上がったら二人で髪の毛を解いて髪を洗い、まずは姉が妹の手入れをしていく。

「痒いところとかはないかい?」

「大丈夫だよお姉ちゃん」

 そして妹の髪の手入れがだいたい終わったら、今度は妹は姉の髪の毛の手入れをしていく。

「今度は私が頭を洗ってあげるね」

「ん、頼んだよ」

 月に一度ほど髪の毛をちゃんと手入れすることで、三河屋の遊女は皆つややかな髪を保持している。
髪は女の命だが、やはり手入れは大事なのだ。

 髪の毛を火鉢の火で乾かせばそれなりの時間になる。
帰り道二人は菓子屋によっていった。

「おねえちゃん”ぼうろ”でもかっていかない?」

「そうだね、お客様に出すのにもいいかもね」

 ぼうろはボーロのことで、ポルトガルから伝わった焼き菓子。
たまごボーロなどは21世紀現在でも残っているが、カステラ、ビスカウト(ビスケット)、コンフェト(金平糖)、アルヘイト(有平糖)などと共に伝わり菓子屋で売られていた。

 遊女は吉原から出られないが、吉原の中には置屋や揚屋、引手茶屋のような遊廓関係の建物しか無いわけではなく、うどん屋や蕎麦屋、けんどん屋と言った麺類を売る飲食店や天ぷらや寿司を売る屋台、酒を売る酒屋などもあり、その他にも野菜を売る八百屋や鉢植えの花を売る花屋・畳を張り替える畳屋・遊女が入りに行く湯屋などの一般の商店もあった。

 そしてこの新吉原には廓の守護者として五つの稲荷神社社がある。
吉原の入口である大門おおもんの手前に「玄徳稲荷社」があり、さらに廓内の四隅には「榎本稲荷社」「明石稲荷社」「開運稲荷社」「九郎助稲荷社」がお祀りされている。

 二人は稲荷神社にお参りをした。

「どうか私たちにお客様が来てくださいますように」

「どうか私達が健やかに生きられますように」

 手を合わせて願い事をしていればそろそろ夜見世も始まる時間になった。

「そろそろ帰ろうか」

「うん、かえろう」

 二人は途中でけんどん屋のうどんを啜ってから混雑してきた吉原の夜道を手を繋いで帰った、決して二度とはなれないようにと。
明日は美人楼の門外店の絵姿屋に置く絵姿図をかいてもらうために二人はその時間を取らないといけないのだそうだ。

「明日は少し忙しくなりそうだね」

「そうだね、でもいいことだと思うよ」

「そうだね、もうお腹すかさなくていいもんね」

 二人はその日は少し早めに寝ることにした。
明日は念入りに身支度をしないといけないらしいと聞いたから。
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