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江戸時代の遊郭の楼主に生まれ変わったので遊女の待遇改善に努めつつ吉原遊廓の未来も変えようと思う 作者:水源
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三店同盟での話し合いと門外店の建設開始など

 さて、水戸の若様から吉原の大門の外での美人楼や万国食堂の開設の公認が出たのはありがたいことだ。

 なんでかというと基本的には吉原への外からの女性に対しての出入りも「女切手」要するに女性の通行手形がなければだめだからなんだ。

 なんでそんなことをするのかというと、フリーパスだと、遊女が逃げちまうからだな。
例えばあまりにも扱いがひどすぎると、遊女が振り棒や桶などの道具を揃えて行商女などに変装して吉原の外に脱走しようとしても、フリーパスだったら、大門の会所の番方、要するに門番が、出ようとしている女が遊女や遊女見習いなのか見破るのは大変だ。
なんせ遊女だけでも2000人近くいるからな。
遊女たちが吉原から逃げようなんて考えなくてもいい環境になるのが一番なんではあるが……正直今は難しい。

 まあ若い遊女が単独で逃げてもその後無事に生きていけるかは正直怪しいがな……。
だが、仕事で吉原に出入りする女性もいる、前述の食べ物などを売る行商人、遊女と外の客の手紙のやり取りする文使い、遊女の髪を結う髪結、女の装飾品を扱う小間物屋などだ。

 そういった女たちが番方みんなが知ってる顔なじみでも入るときは大門番所で女切手は必ず受け取って、出るときに必ず返却しなければいけなかったし、そういった職業でなければなかなか出入りはできなかった。
そして、そういった遊女以外の女性たちは必ず切手を見せるように帯に挟んで歩いている。

 俺が美人楼を吉原の中に開設したときの想定客は最初は他の店の遊女だったんだが、それ以外にも口コミで伝わって、文での問い合わせなども来たので、こちらの美人楼や劇場からの招待状があれば番所で吉原への入場希望者には切手を出してもらえるようにしていた。
だが、もともと桜の季節はこういった招待状などがなくても、切手を番方から発行してもらえる出入りはわりと自由な季節だったからそこまで気を使わなくても良かった。
だが桜の季節が終わると、番方もうるさくなって、女性は入りづらくなってしまった。

 なので、劇場は吉原の中でしか認められていないので、観劇の女性客が入りづらくなるのは頭が痛い。
脱衣劇と違って、遊女の歌劇や人形劇は女性に人気が高い。
歌舞伎も女の客のほうが多いらしいからな。
家族連れなどできている場合はいいんだが、若い女一人とかだとなかなかな。
まあ、今ではうちの劇場での観劇希望の女には女切手を出してもらうようにしてもらっているので熱心なファンとかは通ってくれているようだ。

 さて、三河屋、三浦屋、玉屋の三店同盟だが、今現在俺の店で今後の話し合いをしている。

「集まってもらってすまねえな。
 で、俺からの提案なんだがまずは効率の悪い
 昼見世をやめるべきだと思うんだよな。
 実際俺のところでは辞めてもさほど影響は出てないし」

 三浦屋はあまり納得いっていないようだ。

「たしかに昨年の明暦の大火で地方大名が国元に戻されてるのは痛いな。
 いま江戸に残ってるのは国元に戻せば、
 兵を挙げるのではないかと思われそうな石高の高い外様大名と
 幕府の中枢の幕臣たちだけで、しかも外様大名の下級武士たちは
 国元に戻されている、しかし、うちはそれなりの稼ぎは出てるぞ」

 玉屋は俺の言葉に頷く。

「実際、明暦の大火前と違って昼見世は大分暇だな。
 困ったものだよ、だからこそ少しでも客を取りたいんだが」

 俺は玉屋の言葉に頷く。

「そうだろうさ、じゃなきゃ俺だって昼見世をやめたりはしないさ。
 まあそうでなかったら昼見世と夜見世は別々の遊女を
 格子に座らせるとかはしたかもしれないがな。
 でだ、俺がそれを補うためにやろうとしてるのがこれだ」

 と俺は藤乃の大きな立ち姿を描いた絵を取り出した。

「昼見世の間は看板太夫を中心に絵を貼っておいて
 先まで予約が入ってるか入ってないかわかるように
 指名札を7日間分下げておく」

 三浦屋が感心したようにいった。

「なるほど、指名札が裏返ってれば予約済みというわけか」

 俺は続ける。

「そういうことだ。
 店先で遊女の絵姿を展示しつつ予約が
 入ってるか入っていないかわかるようにする。
 今の状態で廻したり振ったりすると客が離れるだけだからな。
 だから予約が入ってる日はほかは予約はいれないし
 初回客は予約不可能だ。
 そして予約した場合は事情があってこれなくなっても
 揚げ代は払ってもらうし、それを断るなら以降予約はできなくする。
 予約だけ入れられて、無断で来なかった場合大損するからな」

 玉屋も感心したような声で言った。

「ふむ、理にはかなっているな」

「で、この姿図は遊女の格によって大きさを決めて格子に貼る。
 太夫や格子太夫は大きめに格子や新造は小さめにだな。
 で、今門外に「美人楼」や「万国食堂」を作ろうとしてるんだが
 この美人楼の付帯施設として隣に「絵姿屋兼本屋」を作る予定だ。
 で、そっちの見世が完成したら姿絵と一緒に格子に
 「美人楼門外店別邸絵姿屋にて販売中」と大きく表示する。
 一緒に「春画も販売しております」とこっちは少し小さく表示しておく。
 一応お子様の目につかないように「春画」区画は
 のれんで区切って分けるつもりだがな。
 で、そこでは姿絵だけでなく、遊女直筆名入の手形
 名入の俳句、名入の細見なども置くつもりだが
 うちだけでなく、お前さんたちの楼の遊女の
 ものもおかせてもらいてぇ。
 もちろんお前さんたち三浦屋・玉屋の太夫なんか遊女の
 姿絵や名入の手形、名入の俳句なんかの売り上げは
 お前さんたちのものだ。
 で、遊女の直筆名入のものは、格によって相応に値段分
 何も書いてないのより高く売る。
 で名入りでないものと名入の分の差額は、
 遊女の取り分にしてやってくれ。
 生理の時や客が来ないときにやってもらえば
 銭稼ぎにはなるだろ」

 俺の提案に対して二人の反応は対照的だった。
まずは三浦屋だが

「しかし、昼見世をやめれば当然儲けは減る。
 さらに絵師を雇いそのうえも紙代がかかって
 それを売る見世もまだできていないわけだろう。
 悪いが俺は不参加とさせてもらうぜ」

 と、不参加を表明した。
一方の玉屋は

「俺もはその話乗らせてもらうぜ。
 三河屋と西田屋の脱衣芝居の差を見て俺も
 三河屋のやり方のほうが正しいと思ったからな」

 と言った。
これは多分現状の昼見世の儲けの差によるものなのだろうな。
三浦屋は落語などにも出てくるような有名な太夫や格子太夫を多数抱えてるが、玉屋はそこまででもない。

 まあ、儲けがあまり出ていなければ辞めるにそれほど逡巡しなくても済むが、儲けが出ているのに辞めるというのは実際なかなか難しいのだろう。

 しかし、どうせ楼主は朝起きて夜に寝て睡眠も食事もたっぷり取る健康的な生活をしてるから遊女たちの睡眠不足と空腹の苦しみなどわからんというのも在るんだろうな。

 まあこれは現代のブラック企業の経営者にも言えることだが、下には薄給で長時間労働させて、自分たちは高い金貰って定時帰りとかな。
そりゃアメリカや中国や韓国に技術売られたりもするわ。
まあ技術を外国企業にうった後そっちにも使い捨てにされるまでがテンプレートだが。
karousi・過労死なんて言葉が世界で通じるようになった時点で本当は恥ずかしいと思うべきなんだがな。

 俺は、両名に頷いた。

「じゃあ、三浦屋は今回はこの話はなしでいいぜ。
 玉屋は絵師はお前さんで見つけて描かせてくれ。
 姿絵の売上をごまかしたりはしないから安心してほしいぜ。
 あと、稼ぎが悪くて年季を明けさせるつもりの遊女などで
 行く宛がなくて安くても切り見世に売るつもりの女は
 俺に売ってくれ、外で見世を開くのに
 人手が多いに越したことはないんでな」

 二人は頷いた。

「ああ、わかった今後とも宜しくな」

「まあ、うまくやっていこうじゃねえか」

 とりあえず話し合いは玉屋だけでもなんとかうまくいったかね。
まずは玉屋だけでも遊女の生活状況が改善されればいいんだがな。
もっとも三浦屋の言い分もわからなくはない。
だが、最終的にはいまのやり方じゃ将来駄目になるのだと気がついてほしいものだ。

 ちなみに、大門外店の場所は浅草泥町あさくさどろまちと呼ばれる、田んぼを埋め立てたばかりの場所で、後に編笠茶屋が建つ場所だ。
浅草寺の裏道が吉原へ向かう日本堤の道に突き当たるあたりで、吉原の大門と浅草寺の中間くらいだな。
山谷堀からの船客をのせたりおろしたりする船宿や茶屋が建つ岡町ではあるが、遊郭に案内を行う引手茶屋などではない。
遊郭の気配はそこまでないし、そこそこ賑わいもあるしいいんじゃないかな。

 俺はバイオトイレの改造や吉原の中の美人楼や劇場なんかを建ててもらった馴染みの大工を呼んで、早速、門外店を作ってもらおうとしているところだ。

「へえ、美人楼や万国食堂は吉原のときと同じでいいですかね」

 大工の問に俺は答える。

「ああ、それなんだが、美人楼には、
 併設して遊女の姿絵などを売れる場所を追加してほしい。
 万国食堂の方には裏庭に陶器窯のような南蛮料理を
 焼くための石窯を作ってほしい」

 俺の言葉に親方は首を傾げた。

「はあ、石窯?ですか?」

「ああ、七輪と同じ珪藻土を使って、四角く焼き固めた
 煉瓦ってやつを使えばいいんだが、出来上がりはこんな感じだ」

とざっと描いた石窯の図を見せる。

「はあ、まあできると思いますが、こいつにも屋根はつけるんで?」

「ああ、何かを焼いてるときに雨に濡れられると困るんで
 屋根は作ってくれ、壁は燃えると困るから漆喰で作ってもらえると
 助かるが最悪なくてもいい」

「わかりやした」

「それともう一つ頼みたいことがあるんだが……」

 それを聞いて親方は困ったような顔をした。

「流石にこれ以上頼まれてもいっぺんにはできませんぜ旦那」

「うむ、まあそうだな。
 なら腕のいい大工の知り合いを紹介してくれないか?」

「それなら構いませんぜ」

 そして、大工の親方から他の大工の親方を紹介してもらい別の話をしていた。

「お前さんにはミツバチが巣を作りやすくなる
 巣箱を作ってほしい。
 一つ目は信州産サワラの丸太の真ん中をくり抜いたもの。
 その上下に板をおいてやる。
 丸太の高さは20寸(おおよそ60センチぐらい)でいい」

「ふむ、丸太をくり抜いて中に蜂の巣を作らせるのですか。

「ああ、そうだ。
 二つ目は10寸×10寸×5寸
 (おおよそ30センチ×30センチ×15センチ)
 の板を枠のように四角く組み合わせてその真中に竹の棒を
 はって支えとミツバチガスを作りやすくしたもの。
 これを10個ほど」

「へえ、板を貼り合わせて枠のような箱を作ればいいんですな」

「ああ、最後はこんな感じだ」

 と巣枠式の養蜂箱の大雑把な絵を描いて説明する。

「なるほど、蜜蜂が巣を作りやすく、
 なおかつ蜜蜂が巣をはった板を取り出しやすいように
 巣を作った板を障子や襖の上下のような
 溝で上から取り出せる巣箱ですか」

「そうだ、なおかつ、出入り口は蜜蜂は入れるが
 ススメバチやクマバチは入れない大きさの
 3分(約6ミリ)と」

 怪訝な顔の親方。

「うむ、そうだ。
 できるか?」

 親方は頷いた。

「そうですな、4日ほど期間をいただきたいのと
 報酬は二人分頂きたいですが
 よろしいですかな?」

 4日かまあ、早いほうかな?

「ああ、構わん。
 4日で報酬は2両でどうだ?」

「へえ、それなら十分ですな。
 早速仕事にとりかからせていただきやす。
 太助、行くぞ」

「へえ、親方」

 さて、養蜂用の巣箱、うまく作れるといいのだがな。
そしてなんか話をしているな。

「一両手に入ったら、山茶花ちゃんにまた会えますね親方」

「そうだな、報酬をもらったら俺もここで一両で遊んでみるか」

「山茶花ちゃんにいいところ見せるっすよ」

 なんだ、俺の見世に来たことがあるのか。
残念だが多分山茶花が巣箱を見ることはないな。
巣箱を渡すのは紀伊のお殿様だし、まあ絶対ないとはいえないがな。
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