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江戸時代の遊郭の楼主に生まれ変わったので遊女の待遇改善に努めつつ吉原遊廓の未来も変えようと思う 作者:水源
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持ち回り脱衣劇の顛末と三店同盟

 さて、寄り合いで昼見世から夜見世の間の時間、吉原の7つの大見世で持ち回りでやることになった脱衣劇だが、俺はその日はどの見世が劇をやっているのかはっきりわかるように店名を劇場の店頭で大きく貼り出していた。

 そしてその結果としては俺の見世と楓の株は上がり、他の見世の脱衣劇をやった遊女屋や遊女本人は株を下げることになった。
ちなみに初日にやったのは西田屋。
最初は意気揚揚と始めたものが最後には顔が青ざめてたな。

「やれやれ、俺はちゃんと忠告したんだがな」

 確かに楓はこれを始める前はただの無名の新米の新造だった。
しかし、楓は芸事を得意としていたし、容姿も良い。
俺は遊女たちに十分な睡眠時間を取れるようにしたし、食事の内容も体に良いようにしている。
もちろん最初は楓の演技もぎこちなかったが連日の公演で度胸もついて、今じゃ笑いと色気、つまりエロを両立させた芸に至ってる。

 無論他の見世の遊女たちは、楼主たちに言われて訳もわからないままにやらされているんだろうが、睡眠時間や食事に関する改善もおこなわず、しかも、おそらくだがさらに早く起こし、脱衣劇の練習をさせ、昼見世にも出し、それが終わった直後に脱衣劇をさせられてるんだろう。
ろくに寝ずにろくなものも食わせてもらえないでやらされるのは気の毒だが、そんな状態で楓の脱衣芸を見ていた客が満足するわけがない。

「やるきあるのかー」

「かねかえせー」

”舞台にものを投げ込まないでください”

 おひねりが飛ぶどころか、ヤジや罵声とゴミしか舞台に飛ばなくてもそれは無理はないだろう。
大方、あいつらは”俺の見世は大見世でその見世に所属する新米遊女の裸が見れるだけでも客は満足するだろう”とか考えたんだろうが、それを考えついたのがお前たちで比較対象がなければ、まあまだ良かったかもしれない。
しかし、店と遊女の名前を出してやってる以上は比較されて当然だ。

 これは現状では中級の遊女である散茶にこれからシェアをどんどん食われていくことがわかっていないのと同じように、太夫が居る高級店というブランドに頼りすぎ驕り上がってるのが原因なんだがな。

 そんな様子を見ていたら、お鈴、今は鈴蘭を俺に売った、玉屋が青ざめた顔で話しかけてきた。
彼もどこかで不安だったんだろう、脱衣劇の様子を見ていたようだ。

「なあ、三河屋、俺に割り振られた脱衣劇の予定日だが、
 俺の見世は返上するからお前さんの所でやってもらえないか?
 今これ以上見世の評判を落とすわけにはいかねえんだ」

 俺はその言葉に頷いた。

「ああ、いいぜ。
 そもそも遊女に芸を仕込む準備時間も足らんだろうしな。
 お前さんの所の誰かにやらせるなら、
 昼見世に出なくてもいいからその時間に練習しろとか
 そういうふうにさせねえと、俺の所と比べられて
 痛い目を見るだけだぜ」

 そこへ別に声をかけてきたやつが居た。
有名な高尾太夫などを抱える三浦屋だ。

「三河屋、俺の見世の分もお前さんのところにけえすぜ。
 無理しても俺の利益にならねえ」

 俺はニヤリと笑って言った。

「おう、さすがは名高い高尾太夫を抱える三浦屋だ。
 他のボンクラとは違ってるようだな」

 そして俺は声を潜めて二人に言った。

「なあ、玉屋に三浦屋、西田屋と心中するより
 俺と同盟をくまねえか?」

 玉屋は驚いたように答えた。

「同盟だと?」

 そして三浦屋は面白そうに言う。

「なるほど、そういうのもありだな。
 だが、断って俺が西田屋に
 今のことを言ったらどうなると思う?」

 俺は三浦屋に答える。

「先代は知らねえが、今の西田屋には世の中の流れを読む力はねえな。
 俺を潰してもあんたらも、散茶を抱える中見世に食われるだけだぜ」

 三浦屋は言葉を続ける。

「おめえさんには流れが見えてるってのかい?」

 俺は自信ありげに頷いた。

「ああ、少なくとも西田屋よりは読めてるつもりだぜ。
 この劇にしろ細見にしろな」

 三浦屋は納得したように頷いた。

「なるほど、そりゃそうだな。
 よし、今度から俺は寄り合いじゃお前さんにつかせてもらうぜ」

 玉屋も納得がいったようだ。

「なら俺もお前さんたちと手を組むようにしようじゃねえか」

 事実として三浦屋と玉屋は江戸時代で一番最後まで太夫を抱えることができた見世だ。
それだけ魅力のある遊女を育てることができるか、見世の運営がしっかりしているのだろう。

「なに、お前さんたちに損はさせねえよ、細見の編集は西田屋から
 俺に丸投げされてんだからよ。
 こちらも名高い、三浦屋の高尾太夫や玉屋の花紫太夫
 の見開き絵を書けばそっちの名前にあやかれるしな」

 俺がそういうと三浦屋は笑った。

「はは、言ってくれるな」

 玉屋も笑顔になった。

「高尾太夫と並べてもらえるたあ、嬉しいねぇ」

 これで大見世連座の過半数までは行かなくとも、半数近くを味方にできただろう。
玉屋や三浦屋にも細見での優遇を実際に行えば損はないはずだ。
そしてそうすれば西田屋のあたりは俺だけに来るわけじゃなくなる。
特に高尾という高名な太夫を持つ三浦屋と花紫を抱える玉屋がこっちについたのは影響も大きいんじゃないかな。
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