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江戸時代の遊郭の楼主に生まれ変わったので遊女の待遇改善に努めつつ吉原遊廓の未来も変えようと思う 作者:水源
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続・大見世の楼主による寄り合い風景

 さて、吉原遊郭の大見世の寄合はまだ続く。
西田屋の庄司甚之丞が俺に向けていやらしい笑みを向けていった。

「そういえば三河屋。
 お前さんがやってる芝居な、今のところは黙認されてるが
 密告チクリが入ったらやばいぜ」

 やっぱそこにも来たか、まあ、実際そろそろそれに対する何らかの動きは在ると思っていたが。

「一応、能でも狂言でも歌舞伎でも無いんで、
 芸座の利益は侵犯してねえと思うんだがな」

 庄司甚之丞は頷いた。

「まあ、江戸じゃ能や狂言はあんま流行らねえし、
 歌舞伎はまだたいしてまとまった座はないからな。
 規模もせいぜい小芝居だから、いまんところは見逃されてたが、
 そろそろ密告が入っておかしくねえと思わねえか?」

 西田屋を始め、他の連中がニヤニヤ笑う。
ああ、やっぱそうか、まあこの話はこれ以上、劇場での興行をうちが単独でやるなら、遊廓連座で奉行所に申し立てて潰すぞという意味合いだろうな。

 歌舞伎の元祖は、「出雲のお国」の「かぶき踊」で彼女は男装して傾奇者の芝居を演じ、茶屋の女のもとへ通うさまを演じてみせる「茶屋あそびの踊」を創案し、異常なまでの人気を集めた。
もともとは芸人として春を売りながら各地を回っていたのであろうが、このころの阿国はすでに30歳を過ぎていたらしく、能を演じていた遊女の浮舟にパトロンを奪われ、後には「遊女歌舞伎」の人気に押され、江戸に来た後に京へ戻ったようだがその後の足取りはわかっていない。

 その芝居の人気にあやかってまずは旅芸人が「かぶき」の看板を掲げる。
このときは踊り主体のものもあれば、軽業主体の座もあって内容も統一されたものでもない。
流行だから歌舞伎という名前で芸をしたわけだ。

 その後、歌舞伎踊りは京の遊女屋や陰間屋で取り入れられ遊女歌舞伎や若衆歌舞伎となった後に全国に広まった。

 が、遊廓や歌舞伎座を公認したものだけに制限しようとしていた幕府により、風紀を乱すと遊女歌舞伎は1629年に、若衆歌舞伎は1652年にそれぞれ禁止された、成人男性による野郎歌舞伎には興行権を認可制とすることで芝居小屋の乱立を防ぐ方針をとった。
これは遊女を吉原にのみ許可するのと同じ目的が有ったわけだ。

 まあ、実際には未公認の芝居小屋もたくさんあるし、大奥や奥向きで踊り芸をするものもいる。
旅芸人には女もたくさんいるのだがな。
というわけで、女性や元服前の男の芝居は幕府に公認はされないのだ。
もっとも遊女が公認されてるのは吉原だけだが、なんだかんだで飯盛女などは黙認されてるのが実情だ。

「まあ、そうだな」

 いかにも慈悲深い俺という感じで庄司甚之丞が言葉を続ける。

「だから、三河屋、そこの芝居小屋は俺たち吉原の大見世の
 芸事の発表の場所ということにしようじゃねえか。
 7つの見世が平等に月4回ずつ、見世物をするってことにして
 奉行所にも袖の下を渡そうぜ。
 何、寺社の脇にある幕府非公認の宮芝居でも
 おんなじようなことはしてる」

 周りに居る連中が追従する。

「そうだそうだ」

 俺はため息をついて答えた。

「ああ、それは構わん。
 お前さんたちが遊女に芸をやらせたい時間帯は
 昼店と寄る見世の間の時間だけなんだろ」


「ああ、そうだな。
 他の時間は見世があるからどうせできん」

「わかった、一応劇場の持ち主は俺だ。
 利用料で一回1000文くらいは払ってくれ」

「1000文か、ふーむ、まあいいだろう」

 一見渋々という感じだが、まあ内心ではしめしめと思ってるだろうな。
200文の客が10人入れば全然もとは取れる計算だ。
まあこっちも経費をペイできる金額にはなるだろう。

 まあ、うちと他所の店や1回10文の吉原の外の意和戸いわとの客に比較されリャ痛い目を見るのはそっちだけどな。

「言っとくが、ただ単に売れてない奴を脱がせりゃいいとか
 昼見世にも夜見世にもだしてそこでも働かせるとかは、
 やめたほうがいいぞ」

「何を言ってやがる、お前ん所ももとは名無しの新造じゃねえか」

 ああ、やっぱりわかってねえな。
俺は楓を意識的に売り出すために、そうしたんだよ。
暇な遊女の小遣い稼ぎというわけじゃあないんだがな。

「まあ、色々自分の所で考えてみるといいとおもうぜ」

「じゃあ、それで決まりだな」

「おう、了解だ」

 まあ、これはしゃあないな。
芝居小屋が目立つようになれば突っ込まれるとは思ってたしな。
まあ、潰されるよりはいいだろう、他の見世の連中のやり方がうまくいくかどうかはしらねえが。

 さらに西田屋の庄司甚之丞が俺に向けていやらしい笑みを向けていった。

「ああ、それからいい話があるんだが。
 楼主が首つって、宙に浮いてる切見世を
 お前さんに任せたいんだがどうだ?
 なに、溜まってる水代地代何かさえ払ってもらえりゃ構わんぞ」

「おいおい、楼主が首つったって、縁起でもねえな。
 俺が引き受けなきゃどうなる?」

「まあ、そこの遊女共が野垂れ死にするだろうなぁ。
 まあ、どうせ先のない連中だし、
 死んだところで誰も悲しまんだろうがな」

 周りからもハハハと笑い声が上がる。
俺は怒りをぐっとこらえて答えた。

「わかったぜ、その見世、俺が引き受けようじゃねえか」

 ニヤニヤしながら西田屋は言う。

「おう、お優しい三河屋ならそう言ってくれると思ってたぜ。
 せいぜい遊女のために頑張ってくんな」

 俺は西田屋より店の名前と場所が書かれた紙を受け取った。
しかし、切見世か……どうにかしたいがうまくいくだろうか。
なにせ、全く違うからな。
大見世と切見世だと。

 今日の寄り合いはこれで解散になった。
そして解散後、別の見世の楼主が俺に話を持ちかけてきた。

「三河屋、うちの格子を一人引き取っちゃくれねえかな」

「あんたは玉屋だったか?」

「ああ、そうだ」

 こいつはさっきまでも周りにそんな同調した様子はなかった。
顔色が悪いのを見ると経営が苦しいのかも知れないな。

「住み替えか、まあ、金額次第だな」

 下の方の見世はともかく、大見世では、遊女の引き抜きは厳禁だ。
金をかけて育てた遊女を引き抜こうとしたら殺されても文句は言えねえ。
もちろんこれは現代における風俗でも同じで、人気のある風俗嬢を他所の店の従業員なんかが引き抜きに来てバレたら、従業員に袋叩きにされたり、ケツもちのヤクザが出てきたり、裁判沙汰になることも在る。

 だが、状況によっては違う遊廓への移動も吉原の大見世でもある。
それを楼の住み替えというが、大見世同士の場合は売りに出すほう、引き受けるほうにそれなりに事情があればってところで、プロ野球やサッカーなどの選手のトレードのようなものだな。

 売る方は見世の経営が苦しくなってしまい、纏まった現金を確保する為に売れない遊女を売るわけだ。
もちろん売れない遊女を好きこのんで買い取るやつはあんま居ない。
大抵は大見世にいたという箔が欲しい格下の見世にそれなりの金額で売るのだ。

 また、引き込み禿や新造が水揚げして客を取るようになると、馴染み客が少なく水揚げが低い奴に与えた部屋を新しくデビューした方に明け渡さないといけない、下の見世に安い値段でうるほどでもない場合はこうやって、他の大見世にそれなりの値段で引き受けてもらえないか聞いて見るわけだ。

「100両でどうだ」

 1000万円か……安くはないが、禿でも10両、20両することを考えると高くもないかもしれん。

「現物を見させてもらっていいか?」

「ああ、いいぜ」

 連れ立って店に向かう、昼見世をやってる中で、格子の中に所属の遊女たちがいる。
明暦の大火で地方の大名などの多くが地元に戻っている状況では昼間は暇にならざるをえない。

「おい、お鈴、こっちへ来い」

 お鈴と言われた遊女はビクリと体を震わせてから、おどおどと格子の中から出てきた。
俺はそいつを見た。

「ふむ、だいぶ痩せてるが顔は悪くねえな」

「ならどうだ、引き受けてくれるか?」

「分かった、100両で引き受けよう」

「そいつは助かるぜ」

 俺たちは証文を交わし、100両と引き換えに俺は新しく格子を雇うことになった。
格下の店に売られるのだろうと、格子の中の他の遊女たちはかわいそうな者を見る目でお鈴を見てるし、お鈴と呼ばれた遊女は絶望から目から光が消えていた。
身の回りのものの殆どが遊廓からの借り物の遊女の私物は少なく、大したものを持たずに俺の後ろについてくるお鈴。

「まあ、見世からいらない扱いされて心配なのはわかるが
 そう暗い顔をするな、今日からは多分大分ましになるはずだ」

「……はい」

 まあそう言ったところで
実際に働いて生活を体験してもらうしか無いな、これは。
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