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江戸時代の遊郭の楼主に生まれ変わったので遊女の待遇改善に努めつつ吉原遊廓の未来も変えようと思う 作者:水源
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美人楼の開設と浮世絵師、菱川師宣との出会い

 さて、まだ客を取れない禿や新造、現役を引退した番頭新造などに髪洗いや髪の手入れやリンパマッサージなどのやり方を教え込んだあと、俺は劇場の横に新しく建物を建てた。
さらに暮れ六つの酉の刻(おおよそ18時)までは、吉原に一般女性が入ることを可能なように陳情し、手形があれば出入りできるようにしてもらった。

 さて、建てた建物の名前は美人楼、基本は女性客用の施設で、謳い文句は”太夫の美しさを貴女にも”と言うものだ。
美容室とエステと化粧品店をあわせたような建物だな。

 ここでは俺が作っている固形石鹸、液体石鹸、”江戸の美人水””雪の白”などの各種化粧水、草花の精油アロマオイルや鬢付け油、香などの他に、扇子や団扇、手鏡、煙管キセルかんざしくし筥迫はこせこ(懐紙、鏡、櫛、装飾小物等などを入れるポーチのようなもの)紅板(メーキャップパレット。化粧品入れ)、巾着袋、小毬などの小間物、手ぬぐいや風呂敷などの土産物の販売や髪洗いから髪の手入れ、体のリンパマッサージによる痩身や全身脱毛などのエステまでを総合的に行う建物だ、小間物に関しての仕入れは馴染みの小間物店の出店という形にしてある。
ここの番頭は元番頭新造の女に任せてる。

「よう、なかなか評判いいみたいじゃないか。
 これからも頼むぜ竜胆りんどう

「あい、わっちにおまかせでありんすよ」

 竜胆は器量は良いが売られてきたときに10歳を過ぎていた為、太夫としての芸事教育を受ける機会がなかった。
その為、格子としてはたらいていたがそれ以上には上がることはできなかったのだ。
だが、なかなかのやり手であったので番頭新造をやってもらっていた。
番頭新造というのは年季の明けた遊女がなるもので、太夫のマネージャーのようなものだ。
普通は27歳以上の女性がなり、太夫や格子太夫の世話役として交渉事や連絡係を行う。

 この店だが、なんだかんだで評判はよく、口コミで大見世の遊女たちから街の商家にも広がり、将軍や大名の奥女中にも噂は広がっているらしい。
そのうちお忍びで、店に来るやつも出てくるかもな。

 料金は髪洗いが100文、あんまと称したリンパマッサージが100文、マッサージは別料金で禿が足裏や腰をふむ足踏みが24文、スイフクベ(吸玉)が24文、かっさが24文などだ。
ここの給料は料金の半分が担当した遊女の取り分で残り半分は見世の運営費。
ちなみにかっさというのはかっさ板と呼ばれる象牙や翡翠などでできたいろいろな形をした板を使って、リンパや血液の流れを整えていく療法だ、現代でも行われているが、美顔ローラーの板版みたいなもんだな。
鍼灸はあんまとともに座、要するに組合が在るのでとりあえずはやらない。
針はきちんとやるのはかなり難しいしな。

「あーそこそこ、あああ、いやほんと気持ちいいねえ」

 腰を禿に踏まれている女性が気持ち良さげに言う。

「あいたたた、痛い痛い、ああ、でもこれで脚がほっそりするなら」

 足裏やふくらはぎのリンパマッサージをうけている女性は痛みに叫んでいる。

「んー、髪がツヤツヤ、光の輪ができてるねぇ」

 髪の毛の手入れをしてもらった女性が鏡を見て満足そうに言う。

 この時代湯屋や温泉は男女混浴だったり、男の背中を流すのが女の湯女で、女の背中を流すのが男の三助だったりするのでそこまで厳密に男女わけをする必要があるのか微妙でも在るのだが、やはり客は圧倒的に女が多い。
”綺麗になりたい”というのはいつの時代でも女性の心を捉えて離さないようだ。
ちなみに男のマッサージは同じ料金で置屋の空き部屋でやってるぜ。

 そんなことをしていると、俺のもとに一人の男がやってきた。

「私は菱川師宣ひしかわもろのぶと申すものであります。
 今は無名で只の市井の絵師ではありますが、
 ぜひそちら様の太夫様の絵を描かせてはいただけないでしょうか?

 菱川師宣?なんか名前は聞いたことがあるようなきがするんだが……。

「まあ、それは構わんが、うちで太夫と遊べるような金はないよな?」

「はい、そうなのですが、なんとか描かせてはいただけないでしょうか?」

「いや、まあうちの見世の宣伝になるように絵を使わせてもらえるなら
 太夫たちのの時間があいてるときはいいがね」

「ありがとうございます。
 太夫は今どこで?」

「ああ、劇場で芝居をしてるな」

「見せていただいてもよろしいでしょうか?」

「入場料は払えよ」

「ああ、はい、分かりました」

 俺達は俺の持っている劇場へむかった。
まあ美人楼の隣なんだが。
今日の演目は平家物語の木曽最後だな。

”木曽は信濃をいでしより、巴、山吹と二人の美女を連れられたし。
 山吹は病にて京の都にとどまりぬ。
 なかにも巴は色白く髪長く、容顔誠に美麗なり。
 屈強たる荒馬を乗りこなし、薙刀弓矢を持っては、
 いかなる鬼にも神にも勝つという。
 一騎当千の強者なり。
 されど宇治川の戦に破れ兵数はわずか300騎”

”木曽義仲と今井兼平の主従は「死ぬ時はともに」と
 固く誓い合っておりました。
 6千騎を率いる甲斐の一条次郎隊の陣を突破した時には
 50騎が残り、義仲も、兼平も、まだ生きていた。
 土肥実平の2千騎を突破し、今度は畠山重忠の300騎へと突撃を繰り返し、
 最後に5騎が残った。
 そしてその中に一人の女武者が生き残っていたのです。
 その名を巴御前と申しました”

 劇場にナレーションが響く。

 劇の壇上には女が2人。
男装しているものと女姿のもの。
男が言う。

「巴よ前は女であるからどこへでも逃れて行け」

女が答える

「嫌でございます。
 我らは生きるも死ぬも同じと誓ったではございやせんか」

男が言う

「我はこの地にて討ち死にする覚悟ゆえ、
 死に場所に女を道連れにしたといわれては末代の恥よ。
 そして巴よ、お主の腹にはやや子もいよう」

女が言う

「しかし……」

男が言う

「巴よこの小袖を我らがふるさと木曾に届けよ。
 ここで、見た事、聞いた事、俺の最期を、木曽で待つ
 俺の妻子に伝えよ、そして義高を頼む」

 女が涙声で言う言う

「あい、わかりんした」

 女が言う

「ならば最後のいくさしてみせ奉らん」

 舞台にわらわらと、雑兵が現れ取り囲む。
雑兵の中の大将格が言う。

「あれは巴か 女武者」

 女が言う

「これこそは、木曽殿の乳母子めのとごに、
 中三納言守兼遠ちゅうさんなごんのかみかねとうが娘・巴である。
 木曽殿にお目にかける最後のいくさの相手をせよや!」

 女は薙刀にてばったばったと切り払う。

”しかしながら、男はすでに自害し果てていた。
 巴御前は小袖を拾い上げ、静かに鎧を脱ぎ、
 護り刀をその中に抱き隠すと、涙とともにただ一人、
 木曽へと落ちていったのでした…”

 場内が拍手と嗚咽に包まれているな。

 劇場の芝居は能の演目の”巴”をミュージカル調にしたもの、要するに”宝塚”っぽい感じを目指したものだ。
芝居を見終わった菱川師宣が目を輝かせていった。

「いや、素晴らしい芝居でしたな。
 能や狂言とも歌舞伎とも違う」

「はは、まあ、座にひっからないようにしないとまずいからな」

 なんだかんだでこの時代にも座と呼ばれる組合があるから面倒なんだよな。
今のところは、直接的に座の権利を侵害はしてないと思うけど。
ちなみに芝居の観客はこれまた女が多い。
江戸時代でも歌舞伎のファンは女性が多い。
宝塚も女性のファンが多いよな。

 俺は菱川師宣にきいた。

「お前さんが、芝居のようすや役者をかいた絵を
 売るとしたらいくらくらいだ?」

「まあ、16文で売れればいいほうですかな。
 8文ぐらいがいいところだと思いますが」

「そうか、じゃあ、ぜひ頼むぜ」

「ええ、よろしくおねがいします。

 こうして菱川師宣のかいた絵が美人楼でプロマイド代わりに売り出されると飛ぶようにうれたのは言うまでもない。
・・・
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私の書いた過去作品<a href="http://ncode.syosetu.com/n4085di/">木曽義仲の覇業・私巴は只の側女です。</a>以前にかいた木曽義仲の側女、巴御前が主人公の歴史物です。どうぞ読んでいただければ幸いです、よろしくお願いいたします。
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