ヤンデレがいのない彼女。
内容はペラペラで、主人公が変態です。
「どういうこと?」
私はカフェテラスで、男の子とお茶を飲んでいた。
そこへ、物凄い負のオーラをまとった彼氏…緑川くんが、つかつかと早足で私の元までやってきて、その整った顔を歪ませて、テーブルについている私たちを見下ろした。
「千夏、この男…誰?」
「同じサークルの、長居くんです」
哀れな長居くんは、緑川の絶対零度の目線に怯え「ヒィ」なんて言っているし。
「長居くん、ごめんね? じゃあまたサークルで」
「あ、ああ…うん。また」
「……」
長居くんは、慌てて鞄を掴んでコソ泥の様に逃げ帰った。
(そんなに、怖がらなくても……ここからが良い所なのに)
「ふぅん。またね?」
長居くんが座っていた席を、サッと払って緑川くんが座る。
そして、取り調べを行う刑事のような鋭い目つきで、私を尋問するのだ。
「どうして、他の男と二人っきりでお茶を飲んでるの?」
「サークルの合宿があるの。それの打ち合わせ」
「合宿? 聞いてないけど」
「今、言ったよ?」
私の悪びれもない態度に、緑川くんのこめかみは血管がピキピキと音をたてるくらい浮かんでる。
眉間には深いシワ。折角の綺麗な白い肌が勿体無い。
私は、人差し指と中指で緑川くんの眉間のシワをグイグイ押しやった。
されるがままの緑川くんは、深いため息をついた後に低いトーンで話す。
(ああ)
ドドドドドドドドド
胸が早鐘を打ち、緊張と……から私の手の汗はびっしょりだ。
(いよいよ)
「千夏は、ちっとも反省してないね」
(きゃーーーー! きたー!)
私の彼氏 緑川くんは“ヤンデレ”だ。
やけに美形のヤンデレが多い高校で私たちは出会った。彼の隠された狂気を感じ一目惚れした時。ある女子生徒にアドバイスをもらったら驚くように上手くいったのも思い出。
彼のヤンデレスイッチに切り替わったこの声。
大好きすぎる!
「千夏」
(あぁん。このトーンの声、子宮に響く!)
「僕は、できれば…千夏のその可愛い瞳に他の男を映したくない。話して欲しくない…」
(うんうんうん! 他の男を、“見るな”“話すな”ですね! はい! 私! 緑川くん以外の他の男は糞虫にしか見えませんので、話すのも視界にいれるのも苦痛です! むしろ、視界に入ったら射殺したい)
「ほんと、どこかに閉じ込めてしまいたいよ」
(いいよ! いいよ! ぜひ、閉じ込めて。地下でもいいの。あ! でも例の黒いお友達がいないように、モクモク煙がでてくるやつ焚いていてね。それに、部屋から出ないのなら、運動不足も気になるから、DVDやアイテムが付いている痩せるムック本と定期的にラノベの新刊も欲しいかな。うほ! ここが楽園か)
私は、ニヤケ顔を見られないように口元を手で隠し、目を伏せた。
緑川くんが心配そうに私を覗き込む。泣いているの?と。
いえ、寧ろヨダレが大変なだけです。
「僕はね。千夏の事ならなんでも知っておきたい…」
(うん。私も知って欲しい。 "盗聴”"盗撮”365日 寧ろして欲しいの! でも、トイレ…は、流石に恥ずかしいかな? あ、嫌って言うわけじゃないんだけど。……どうしてもっていうなら……トイレも…だ、大丈夫なんだからねっ! )
「…君を食べてしまいたいくらい、愛おしい。僕たち混ざり合えたらいいのに」
(んんんん。流石の私も…カニバは流石に痛そうだから、怖いけど。緑川くんの爪の垢なら煎じて飲めますよ? 緑川くんの体液なら更に……ghじゅいこlp;[自主規制] ご褒美です!)
「ねぇ? 千夏をつなぎ止めるにはどうしたらいい? もう子ども作って君を僕から離れられないようにする?」
(子どもがいなくても、私のハートはがんじがらめに緑川くんのものなのに! でも、緑川くんとの子どもなら作る! ぜひ、早めに赤ちゃんを沢山産みたい。その為に保育士の資格も取る予定だし。 子どもでサッカーチームを作るのが夢。 ああ…出逢った高校2年の時から作っておけばよかった。こっそり、排卵日にゴムに穴を開けていたのに、なかなか出来なかったもんな。今、私…ハタチだから…急いで年子をいっぱい作らないとだめか…。緑川くんに似た子ども…はぁァん)
「千夏?」
私が11人の子ども達との生活を妄想して『母の日に似顔絵をもらう』あたりで萌え死にそうになり、プルプルと小刻みに身体を震わし、緑川くんの手を思わず握りしめた。
「緑川くん…」
さぁ、今から子作りやりますか? というお誘い的な熱く潤んだ目線を緑川くんに送った。…のに。
「………はぁ。千夏には叶わないよ」
そして、握っていないもう片方の手で頭をなでなで。
バックに華が舞うような笑顔と子どもをあやす様な優しい声で、私に囁いた。
「そんなに、怯えないで? 僕は千夏の心まで壊したいと思っていないし。自由な千夏も好きなんだ……いいよ。合宿に行っても。僕も、勿論ついていくけどね」
――(ちょっ、待っ!!)
「さぁ、今日は帰ろう? 送っていくよ」
――(また失敗?! 監禁は? 盗聴•盗撮! 子づくりは? )
紳士的な態度な緑川くんに、不満いっぱいになってついつい文句のひとつもいいたくなった。
「緑川くんの…いじわる」
アヒル口に尖らせ下を向いて拗ねる。
そして、ギューと手を恋人つなぎに握り直した。
「…はぁ。 本当に可愛くてまいっちゃうな。僕の恋人は」
(ハァァァァァァァ~)
緑川くんに見えない所でため息をついた。
またお預けをいただいてしまった。
彼にヤンデレてもらう為に長居くんと二人っきりになったのに。
(後で身体を消毒しよう)
今度はどんな作戦をたてようか。
ねぇ、緑川くん…お願い。
早く、私を閉じ込めて。
私の世界を"緑川くんだけ”にして欲しいの。
*ヤンデレ乙女ゲーム三部作のおまけ話です。
1作目 (ファンクラブ) 先輩
2作目 (転生したら) 後輩
3作目 (サポートキャラ)先生
*3作目に少し触れた攻略対象者の同級生 緑川拓海と
彼女(千夏)との大学生活です。