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第三十一話  待ち合わせ


夕紀が持ってきた服に着替えてた白夜を鏡台の前に座らせて、クシで白夜の髪を解き始めた。

白夜は鏡に映る自分の髪に、ちょっと落ち着かなかった。


「・・・本当に髪の色が黒くなってるなぁ。」

「でしょ?結構、黒髪も似合うわね。白夜。」

「そうか?なんか・・・自分じゃ無いみたいで変な感じだ。」


夕紀はクスクスと笑いながら白夜の髪を整えてたが、途中で夕紀の指が止まった。


「ねぇ・・・白夜。髪を編んでもいい?」

「うむ。構わんが・・・どうした?急に。」

「うん。昔、お母さんに編み方を教えて貰った事があるんだけど・・・試す機会がなかなか無くてね。」

「なるほどな・・・。」


髪を編みながら一瞬、寂しそうな表情で笑う夕紀の顔を見た白夜は、優しい笑みを浮かべながら目を閉じた。


「実はね。昔から、姉妹や兄弟に憧れてたから、妹ができたみたいで本当に嬉しいんだ。」


それを聞いた白夜は、クスクスと笑いながら


「年齢は、お主より遥かに年上なのだがな。」

「え?じゃぁ・・・お姉ちゃんって呼ばなきゃダメ?」


白夜は声を出して笑い。


「まぁいいさ。容姿が容姿なだけに、仕方がないがな。」

「じゃぁ・・・出来のいい妹って事で・・・。」

「出来が悪い事は自覚していたのか?」

「うっ!」


白夜の的確なツッコミに夕紀は言葉を詰まらせたが、鏡越しに目が合ったときに二人は声を出して笑った。


「さて、出来たよ。白夜。」

「ほぉ・・・初めてにしては上手いではないか。」

「ふっふーん。まぁね!」

「しかし・・・髪でこんなに編めるんだな。」


白夜は編まれた髪を興味有り気に触っていた。


「次は服だね!・・・いつも似たような服だから、たまには違う服にしないとね。」


そう言って、夕紀は自分の部屋に戻っていった。

―――それからしばらくして、部屋から出て戻ってきた。


「ジャーン!!今日はコレで行こう!」


夕紀は持ってきた服を白夜に見せた。


「ほぉ・・・動きやすそうな服だな。」

「今回は、ボーイッシュファッションにしようと思います。」


夕紀は服を白夜に渡してた。

白夜は白いペイントシャツから、短パン、ニーソックスをはいて、最後に黄色い袖無しパーカーを羽織った。


「どうだ?」

「おぉ!似合ってる!可愛いわよ!白夜。」


夕紀は思わず飛びついたが・・・白夜は、軽やかに避けた。

そのまま倒れる感じで思いっきり転けた夕紀は、鼻を押さえながら座り込んだ。


「イタタ・・・避ける事無いじゃん!思いっきり鼻打った・・・。」

「ハッ!イキナリ飛びつくからだ。」


涙を浮かべながら訴えかけるような目で白夜を見るが、白夜は腕を組んで鼻で笑った。


「それより、お主・・・その格好で行くのか?」

「へ?」


夕紀は白夜に問われて、自分が準備できない事に気づいた。


「あぁぁ!!しまったぁ!白夜いじるのが楽しくて、忘れてた!」


慌てて駆けだしていく夕紀の後ろ姿を見ながら、あきれた顔で白夜は微笑み。


「ヤレヤレ・・・騒がしい娘だな。まったく・・・。」


と一息ついてから、やり残していた後片付けと行く準備を済ませた。

そろそろ、約束の時間が近づいてきた。

まだ降りてこない夕紀を下の階から上を覗き込むように白夜は呼んだ。


「おーい!夕紀ー!そろそろ約束の時間だぞー?」

「はーい!もう少しで終わるから、ちょっと待っててー!」


髪をくくりながら、ようやく夕紀が降りてきた。


「ごめん。お待たせ~。」

「よし!いくか?」

「うん!」

「忘れ物無いか?」


夕紀は服をチェックしてから、持っていたカバンの中を覗き込んだ。


「あっ!いけない!!財布忘れてた。」


慌てて部屋に戻る夕紀の姿に、ヤレヤレと苦笑いの白夜。そして、再び白夜の元に夕紀が戻ってきた。


「ごめん、ごめん!さっ!行こう!!」

「うむ。」


夕紀と白夜は手を繋いで家を出た。


―――商店街中央区、謎のモニュメント前―――


二人の少女が時計を見ながら誰かを待っていた。

しばらくして、座って待っていた二人の前に、手を振りながら二人の少女が合流した。


「ごめん。待った?」

「遅いわよ夕紀。あれ?その子は?まさか・・・今度は誰をさらってきたの?。」

「ちょ!?誤解されるでしょ!毎回さらってきてるような言い方止めてくれる?!」

「冗談よ。」


睨み合う夕紀と千歳のコントを横で見ていたヒロミが、クスクスと笑いながら白夜の前でかがんだ。


「ホント!あなた達のコントおもしろいわ~。」


そう言って、白夜の頭を撫でた。


「この子・・・白夜ちゃんね?髪の色違うだけで全然雰囲気違うわねぇ。」

「でしょ?黒髪も良い感じじゃない?」

「確かにねぇ・・・でも、私は前の方がよかったけど・・・仕方ないね。」

「そうよねぇ・・・早く落ち着いてくれないかしらね。白夜ちゃんが可哀想だわ。」


千歳の意見に、夕紀とヒロミはウンウンと頷いた。


「さ・て・と・・・最初に何処行こうか?」


ヒロミが立ち上がって、夕紀達に聞いた。


「そうねぇ・・・。白夜の服を買ってあげたいんだけど・・・。」

「お?じゃぁ・・・先に洋服見に行く?」

「楽しそうね。私達が良い服見繕ってあげるわ。白夜ちゃん。」

「あ!でも、お金余りないから・・・で、出来るだけ安いので・・・。」


乗り気の二人に苦笑いする夕紀の裾を白夜が軽く引っ張った。


「いいのか?ワシの事は別に気にしなくても・・・。」


心配そうな表情をしている白夜の頭を撫でて、


「いいの!いいの!私のお下がりばかりじゃ可哀想だし・・・気にしないで着れる服が有ってもいいんじゃない?」


そう言って微笑む夕紀に、白夜は照れ隠ししながら小声で


「ありがとう。」


と、呟いた。


「ほら!二人とも行くよぉ~!」

「あっ!ちょっと待ってよ!」


先に進む二人の後を、夕紀と白夜は走って追いかけた。



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