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  猫姫 作者:四季道理
首輪をはめていました 1


 チチチチチチ。

 さわやかな小鳥の声。

 そして無駄にさわり心地の良いシーツの感触。

 まぶたの裏にうつる光がまぶしい。

 朝が来たのだろうか。

 薄暗い馬車の中にいたはずだが・・・。

 おまけに顔にかかるなんだかよくわからないこのモップみたいなものは何だ。
 顔の前に柔らかいすだれでも垂らされたような・・・。

「ぺっ」

 思わずその一本が口に入って吐き出して、身じろぎした瞬間・・・腰に何かが当たった。
 
 ゾッとしながら薄目を開けると、そこにあったのは。

 ああ、いや。手である。
 真っ白いきれいな手であるが、なぜワタシの腰に回っている?
 おまけに・・・その手がワタシをさらに抱き寄せて・・・あの・・・なんだか・・・下半身に当たるものが。

 ツンツン。

 が・・・これがいわゆるア○立ちというものか。
 男性の朝の生理的な現象とは聞いていたが。

 思わず伏せ字で想像して、赤面した。
 古都もまだ花も恥じらう16歳である。

 すこしじっとしていたが状況に変化がないので、諦めて手を動かした。

「すまないが、起きてくれないか」

 相手は誰だかわからない。

 思い起こそうとするが、あの邪悪なこびとにしびれ薬か何かをかがされた後・・・何が起こったのか。
 どうせあまり良い薬など使ってるようではなかったし、きっと記憶障害は副作用の一つなのだろう。
 大勢の人が自分を見ていたのを覚えている。

 そして・・・黒いマントをかぶった者に落とされたということもおぼろげながら思い出した。

 あの者がこの目の前にいる人物ということか。

 朝日を浴びてキラキラ輝く・・・髪。まぶしいな。
 おまけに腹が立つくらい無駄に白くて肌触りの良い手。
 閉じたまぶたはかすかに震えているが、鼻梁はまなじりからすっきりと伸び、一般的には格好良い部類であろうと容易く想像できた。
 
 異世界に来て、こういう展開の場合、王子とか・・・。
 まさかな。

 古都は、あまりにご都合主義の自分の想像に苦笑してふと自分の手を見た。
 16年間見慣れた自分の手である。
 
「おお」

 頭に手を添えれば、普通の耳をしている。
 となるともちろん尻尾も。

「ない」

 これはいったいどんな現象?

 などと、思案していたときである。
 目の前の王子っぽい人物が一瞬震え、ゆっくりとまぶたを開けた。

 見たことはないが、カリブ海のような青い瞳であった。

 その手がそっとワタシの頭を撫でる。

 撫でる・・・止まった。

 目がかすかに見開かれているようだが。

「○?×%PPP%」

 その金髪の青い目のお兄さんは・・・何かを言った。
 ワタシの耳をつまんで上へ引き上げる。「痛い」
 おまけにワタシのいつの間にか来ていた白いワンピースみたいな寝間着の裾まで持ち上げられそうになって。
「わわわ」
 それはだめだ。
 裾を押さえて、お兄さんを見上げる。

 これでも未成年である。
 成人前の不純異性交遊はいかん。
 恥ずかしさのあまり、顔が紅くなってしまったではないか。
 
「&’%%%」

 しかし、と、ワタシは首をかしげる。

 おかしいな。

 これまで分かっていたのに、さっぱり理解できない。
 言葉が違うのかもしれない。

「アイベッグヨアパードゥン?」

 日本語以外、唯一知っている言語であるが・・・目の前のお兄さんは首をかしげるだけである。

「アーヤー」という風に聞こえる。

 意味は「困ったな」とかそのあたりだろう。

「まあ異世界だからな」

 ワタシは変なところで納得した。それにしても、体が怠い。

「ふわぁぁあああ」ああ、いかん。つい大あくびが。
 
「イーディー」

 お兄さんが誰かを呼んでいる。
 おいおい、ここ一応お兄さんの寝室だろう。
 ワタシなんぞを連れ込んでいるのをバレても良いのか。

 ついぞしなくてもよい心配までしてしまう。

「O$%)###」

 廊下をものすごい勢いで駆けてきたのだろう。
 バタンと扉を吹き飛ばしそうな勢いで開き、そこに第二の人物が現れた。
 茶色の髪に茶色の瞳。

 明らかにお兄さんを心配している色である。

 そして、ベッドの上に座ったワタシとお兄さんを見てガクリと肩を下げた。

「~&&%!」

 近寄ってきて、同じようにワタシを見下ろして、何事かお兄さんと話している。
 お兄さんは上半身裸であり、ふとワタシの視線を感じたのか苦笑いして、シーツを腰に巻き、立ち上がった。
 シーツから覗く足は素足であり、どうやら下半身も同様に裸のようだ。

 先ほどのワタシの過剰反応に配慮してくれたらしい。

 早速お兄さんと茶色の人が話をし始めたが、所詮分からない言語など歌にも等しい。
 理解するのをあきらめて、ワタシは窓の外を見た。

 ここは2階なのだろう。
 何の木か知らないが緑の葉が茂っているのが見えた。
 日差しはお兄さんの頭と同じくらいキラキラと輝いて葉を照らしている。 

 言い争いはまだ続く。

 しかし、一から言葉を覚えるのは大変そうだ。
 自分の語学力のなさに担任を泣かせること数度。

 ・・・。

 少し考えかけたが、考えても言葉が理解できるようになるわけではない。


 まあ何とかなるだろう。


 その時、ふと違和感に気がついた。

 首をかしげたり、少し動くと首が絞まるのだ。

 ついぞ感じたことのない重さである。

 そこに手を伸ばせば。

「首輪?」

 触れているとその首輪には大きな石が埋まっているのがわかった。
 両手を回してみるが、留め具がない。
 つまり外れないということで。

 はっ!


「これがもしや噂の拘束プレイというものか」



  


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