さらって逃げようか?
なんて言葉に本心を隠した
こんな風に話せるのは今日でお終いだというのに
だからこそ
真っ直ぐに
正直には
言葉が出てこなくて
それでも
そんな言葉を笑顔でかわす君が――
あまりにいつも通りで
だから僕も
『いつもの二人』から何も変えられなくて
冗談だよ
そう告げるんだ
僕じゃない誰かと歩き始める君は
穏やかな笑顔をしているから
見詰める僕は胸が潰れそうになる
僕が感じていた
あの熱い胸の高鳴りも
穏やかに満たされていく心も
緩やかに流れる温かな時間さえも
君は何も感じていなかったの?
黒い僕が泣き叫び
これでよかったんだ
彼女が好きだから僕は付き合えない
踏み込めば
踏み込まれれば
見たくないものまで見えてきてしまうから
白い僕が正当化する
彼女の前で
仮面の微笑を持って取り繕うのは
灰色の僕
結局どの僕も
自己中心的な想いで
嫌気がさす
ずっと傍にいたのに何一つ伝えられない
幼馴染の二人は
いつの日か結ばれて恋人になる
傍に居る時間は
言葉にならない想いを通じ合わせる
そんな幼い幻想を夢見て
弱い自分はいつだって逃げ道を残していた
気まずい沈黙も
重く張り詰めた空気も
たった一言
冗談だよ
それだけでいつもの二人に戻れていたから
本気でぶつかり合う事なんて無くて
その飲み込んだ一言が心を蝕んでいったんだ
けれど
もし冗談に隠した想いに気付いてくれたら
冗談にならないこの想いを
ただ一度でも真正面からぶつけられたのなら
今日のこの日に
おめでとうを心から君へ送る事が出来たのに……
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