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サザエでGods eye 鱒 2
作:ナオユキ



失った物の大きさ



花沢さんが死んだ
そう姉さんに聞いたとき、僕は頭の中が真っ白になった。


何故?
どうして?


そんな言葉が頭の中をめぐり、自分を責める言葉に収束していった。
お前が悪い、お前が送って行きさえすれば。


カツオ
「………」


頭を振って、思考を捨てた
今は、早川さんが隣にいる。落ち込ませるわけにはいかない。明るく、そうだ。


カツオ
「もうすぐ、夏休みだね」


作り笑いで、そういった。
そこで見上げた空は、高かった。





余計な考えが介入しない分、勉強は楽だった。
花沢さんの死を忘れさせてくれたから。


中島
「よーう、磯野」

カツオ
「よう」

早川さん
「おはよ、中島君」

それは、中島も同じだったらしく、揃って同じ高校に進学することが出来た。


中島
「なぁ磯野、今日俺んちに来ないか?新しくゲーム買ったんだ!」

早川さん
「中島君っ……」

カツオ
「いいんだ、早川さん」

中島
「あ…そうか……ゴメンよぅ磯野…ボク…」

カツオ
「……いいさ」

中島
「ごめん……」


中島は、もう花沢さんのことを忘れて前に進むことが出来ているのだろうか。
では僕は?


僕は、


……無理、だ。




花沢さんを辱めて、そして殺して自分はのうのうと生きている。
そんなことがまかり通っていいのだろうか。


そんなことが。


犯人は捕まっていない。
僕には、それが納得できなかった。


現場に残された犯人の遺品は、凶器となったシャープペンだけだった。
それはどこにでもあるようなシャープペンで、特に手がかりになるようなものではないという。


カツオ
「今日、体育の授業でプールあるんだよな」

中島
「あれ、そうだっけ?」

カツオ
「おいおい。今日は水泳だよ。忘れてたのかぁ?中島」

中島
「いけね、ちょっと家に帰って取ってくるよ!」

走り出す中島。その背中を、早川さんと二人で見送る。

早川さん
「行こっか」



学校の授業も、どうも身が入らない。

せっかくいい学校に入ったのにな、と苦笑してしまう。
数学1Aでついていけなくなった僕には、既に理系の道は絶たれてしまっているようだ。


カツオ(文型……頑張らないと人生ヤバいな。隣の元浪人生みたいにならないようにしないとな)



隣の浪人生、甚六さんは結局二浪して大学の神戸学院大学に入った。

すごいですね、と本人に言うと

甚六『二浪で神学は……うーん』

なんて、苦笑で返されてしまった。
人がほめているのだから、素直に受け取れば良いのに。


中島
「はぁーっ、はぁーっ。すみません、遅刻しましたあっ」


ガラリ、と扉が開いて中島が入ってきた。

パパス
「おそいぞ中島。ほら、早く席に着け」

中島
「……すいません」

カツオ
「(どうしたんだよ、随分遅かったな)」

中島
「(いやさ、なんか駅前の予備校の人に捕まって話聞かされてたんだよ)」

カツオ
「(それゃあ、災難だったな)」

中島
「(まったくだよ)」


パパス
「そこっ、うるさいぞっ!」


投げられたチョークを、元野球部らしく華麗にキャッチする僕ら。




帰り道。


早川さんと中島とは駅で別れ、僕は一人普段とは違う道を選んだ。


カツオ
「……ここにくるのも、久しぶりだな」


小学校の時は事あるごとに呼び出されて、ここの大きなソファーに座って彼女の話を聞いたものだ。


カツオ
「まさかこんなことになるなんて思わなかったからな……」



花沢不動産


カツオ
「……」


花沢さんの葬式以来だ。



花沢父
「お、カツオ君」

カツオ
「こんにちは。……あの」

花沢父
「判ってるよ。……さぁ、どうぞ」

カツオ
「お邪魔します」


ゆっくりと、家の中に案内される。
一年ぶり、すごく懐かしい

かつては和気藹々としていた空気も、今ではひんやりとした空気になってしまっている。


花沢父
「ここだよ」

カツオ
「はい」


本来いるべき人がいないから、こんな空気になるんだろうな。


カツオ
「………ふぅ」


目の前に、その『本来いるべき人』の写真が飾ってある。



カツオ
「一年ぶりだね……花沢さん」



中学三年生の時の花沢さん
小学生の時よりずっと綺麗な花沢さん


カツオ
「綺麗になったでしょ!?って、いっつも聞いてきてたな…」

線香をあげながら、僕は独り言をもらす。

カツオ
「実際、綺麗になってるから困る。……困る?いや、困らないか」


困らないはずが、なかった。

カツオ
「花沢さん、僕らは、うん。大丈夫。いつもどおりさ。花沢さんがいなくても、元気にやってるよ。…本当さ」


遺影は答えない。


当然さ。














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