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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第三章『 泥中之蓮 』

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「 蓮華の花守 - 蘇えるナジュム 」(十三)

 
―――――― 未の上刻( 十三時 )

「 ナジュムさん!! そろそろ、王が御帰りになられるのでお見送りを…―――! 」と、ナジュムの臣下仲間が宮中の医院に駆け込んで来ると、船酔いから回復したナジュムはお茶を呑みお菓子を頬張りながら、意気揚々とロータス国の話を語って医院の面々の中にすっかり馴染んでいた。

「 あ ――― やっべぇ、忘れてた! そうそう!俺 王子の付き添いだったわ。 」

「 それって、簡単に忘れられる物なのですか……? 」と、何時(いつ)も通り 寡黙(かもく)を装っていた葵目(アオメ)が思わず口を開くと、ナジュムは「 俺、見合いの時だけの臨時で王子に仕えてるんですよぉ! あの人の臣下、女ばっかりだから! ――― 連れて来れないでしょう!? 見合いの席に! 」と、やや怒り気味にぼやきながら 急ぎ足で医院から飛び出すと「 あ! どうもお世話になりました~!! 」と、遠くから医院へお礼を叫んだ。


「 女ばっかりだって…… 」東天光(トウテンコウ)が " こりゃ、破談になるかもな " と自身の想いを顔に出しまくりながら呟くと「 その気持ち解るわぁ…! ――― 側室制度(?)復活するかしら!? 」と、姫鷹(ヒメダカ)は もう一人の自分を肯定するかの様に恍惚の表情で頷きながらライル王子への期待に胸をふくらませた。

「 ――― 婿養子のほうの血筋を増やして どうするんです? 」
「 ダメよ、葵目(アオメ)ちゃん ――― 先生 聞いてない。 」


アスワド王が無事にリエン国を発つと、ライル王子とナジュムは宮中に戻ってロータス国の一行に用意された宮殿の棟の通路を歩きながら、至る所に設置されている鏡で 時折 自分の身嗜(みだしな)みを確認しながらリエン国と女王の印象について話を始める ――― 。

「 どうでしたか? もう結婚しちゃいます!? 」
船酔いから不死鳥の(ごと)く復活を遂げたナジュムが 何時(いつ)もの彼らしく軽めの調子で訊ねると「 それは無い!何としてでも結婚は避けたい。 」とライル王子は真顔で即答した。

「 でも、リエンって 涼しいし、良い国だと思いますよ? 波の音がちょっと(うるさ)いけど……医院の人達も、やたら陽気で親切でしたし。 」

花蓮(カレン)女王は、体も含めて見た目は悪くは無い ――― しかし、まともに会話が出来ないし 行儀があまり良くない……簡潔に言うと、俺から見たら まだ子供(ガキ)で興味が湧かん。 」

「 ロータス語 わかんないだけじゃないですか? 行儀っつっても文化の違いで ―――  」

一応、御目付け役らしくアスワド王の考えに添ってナジュムがライルを説得しようとすると、ライル王子は何時(いつ)に無く真剣な表情で「 いや、そうじゃない ――― 俺は三男でも偉大なロータスの王子だ。つまり、違いが判る男だ! ――― あの女王は良くも悪くも 一国の女王らしく無い。 」と、言い切ると「 花蓮女王より、彼女に付いてた上品そうな女官のほうが俺の好みだった。 ――― 見合いの席で見合い相手の女官を一晩 貸してくれとは言っちゃ駄目だよな? 」と、真顔のまま ナジュムのほうへ顔を向けた。

「 駄目ですね! 」
ナジュムは( どっちが行儀の悪い子供だか…… )と、思いつつ 御目付け役らしく王子の言葉をバッサリ斬った。



花蓮(カレン)女王は、次の予定に合わせて 湯浴みと 着替えの為に私室に戻ると「 あなた達の中に 二十五歳の人は居る? ――― それか、お友達にいない? 」と、鏡に映る自身の姿を見つめながら女官達に告げた ――― 。

(わたくし)が二十五ではありますが……? 」と、女王と共に戻って来ている紅魚(ホンユイ)(いぶか)し気な表情で名乗り出るが、女王は鏡を見ながら自身の脚・髪・顔などを入念に確認する事に夢中で聞いているのかいないのか分からない。

「 ライル王子殿下の歳ですわね……? 」と、珠鱗(しゅりん)紅魚(ホンユイ)に耳打ちすると紅魚は声を出さずに納得した様子で ゆっくりと頷いた。

睡蓮(スイレン)ちゃん、白夜(ハクヤ)さんと もう一人の美形は何歳なの? 」
緋鮒(ひぶな)が小声で睡蓮に訊ねると「 !? ――― 知りません……私より年上だとは思います。 」と、睡蓮は何時(いつ)もの落ち着いた様子で返事をした。

「 え? お兄様ですのに……!? 」余り驚く姿を見せる事が無い 珠鱗(しゅりん)が驚いたので、睡蓮(スイレン)は 何かおかしな事を言ったのではないかと心配の表情を浮かべて「 いえ、兄では…――― 」と誤解を解こうとしたのだが「 白夜(ハクヤ)って、睡蓮(スイレン)と一緒に住んでるあの人? 」と、彼女達の会話を ちゃんと聞いていた女王が(ようや)く反応を見せた。

睡蓮(スイレン)、聞いてきて! 他の見張りの人達の年齢(とし)も ちゃんと聞いてね? 」と、睡蓮のほうに振り返った女王が 彼女に小さな使命を与えたので「 は…はい! 」と返事をすると、睡蓮(スイレン)は 早歩きで女王の部屋を退室した。

そんな中、蝶美(チョウビ)は " 蒼狼(せいろう)くんが 睡蓮(スイレン)のお兄ちゃんなのかな~? " と小首を傾げたが、()ぐに どうでも良くなって 次の女王の髪型をどのようするか考え始めていた ――― 。




「 ? ――― 二十五歳だけど、花蓮(カレン)様は どうして そんな事を聞くの? 」と、白夜(ハクヤ)睡蓮(スイレン)のほうを見つめた ――― (うつむ)いてはいない。

「 俺は、二十二! ――― 他の人か…ちょっと聞いてきますね! 」と、再び 若く麗しい見張りの(もと)蒼狼(せいろう)は走って行った ――― 。

「 あの…珠鱗(しゅりん)さんと紅魚(ホンユイ)さんが ライル王子殿下の年齢が二十五歳と(おっしゃ)っていたので、その事に関係があるのではないかと…――― 」

「 ふーん…… 」

睡蓮(スイレン)の正確な年齢は判らないが " 自分と睡蓮と同じだな " と白夜(ハクヤ)は判断した。

(ところ)睡蓮(スイレン)、少し 化粧してるよね? 」

「 あ…はい! 今日は御客様が来るからと蝶美(チョウビ)さんがして下さいました。 」

素直に褒めたほうが良いのか、桔梗(ききょう)の為に何も言わないほうが良いのか白夜(ハクヤ)が迷っている間に蒼狼(せいろう)が帰って来る。

「 早っ! 」

「 脚力と記憶力には自信があるんで! 」蒼狼(せいろう)は星が煌めく様に笑うと、睡蓮(スイレン)に武官達の年齢と名前を一人一人ゆっくりと丁寧に教え始め ――― なかなか覚えの良かった睡蓮(スイレン)が女王の私室へ戻ると、女王と女官達は 装束の準備を行っている蝶美(チョウビ)を残して 湯殿のほうへ移動していた。


「 お帰り!みんなの年齢(とし)わかった!? 」

「 はい…! 」

睡蓮(スイレン)白夜(ハクヤ)さんと一緒に暮らしてるのに 年齢(とし) 知らなかったんだね? 」

「 はい……。 」

――― もしかして、それは変なのかな・・・と睡蓮(スイレン)の脳裏に不安が()ぎったのと同時に「 でも、そんなもんかもね? ――― アタシも女官のみんなの年齢(とし)は 最近まで知らなかったもん! 」と、蝶美(チョウビ)()(まで)と同じ様に明るく笑ったので睡蓮も安心して蝶美に微笑んだ。

「 さ!睡蓮、女王さま ずっと待ってたから早く教えてきなよ? 」

「 はい! 」




「 ――― つまり、二十五は紅魚(ホンユイ)白夜(ハクヤ)だけなのね? 」
花蓮女王は湯船の中で睡蓮(スイレン)の話を聞くと「 もう上がる! 」と、()(まで)と違って女官の手を借りずに烏の行水の(ごと)く湯船から出ると、小走りで湯殿から出て行った ――― 。

「 お待ちください!!陛下、湯殿で走ってはいけません!! 」慌てて女王の後を追った紅魚(ホンユイ)と「 晦冥(カイメイ)様の配下の人達って十代ばっかりかと思ってた…… ――― あのデカい金鎚を持ってる人なんか、絶対 アタシより年下だと思ってたのに……!! 」と、自分よりも年上だった桃簾(トウレン)に衝撃を受けながら緋鮒(ひぶな)も湯殿から出て行った。


睡蓮(スイレン)さん、白夜(ハクヤ)さんは あなたのお兄様では無かったの!? 」
白夜の年齢を知らなかった睡蓮に困惑した様子で珠鱗(しゅりん)が問うと「 白夜さんは兄ではありません…! 私は家族がどこに居るのかも分からないので…… 」と淋し気な瞳で睡蓮は答えた。

「 では、お部屋が一緒なのは!? ――― どういう事ですの… 確認したい事は色々ありますが……まずは女王様のお手伝いに戻りましょう…! 」と困惑したままの珠鱗(しゅりん)睡蓮(スイレン)を連れて湯殿を後にした。


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