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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第三章『 泥中之蓮 』

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「 蓮華の花守 - 青睡蓮の花と珠鱗 」(十二)

 
花蓮(カレン)女王と側近・晦冥(カイメイ)を中心とした臣下達がアスワド王とライル王子に宮中を案内する中、何事も起こらない宮中と 治安の良い王宮周りと云えども、今日から数日間は武官達は総出で警備に当たる事になっており、宮中の石畳の上に(たたず)んでいる銀龍(ぎんりゅう)は、消息不明となっている自身の想い人 ――― 蓮葉(ハスハ)の事を考えていた。


蒼狼(せいろう)からの朗報は、蓮葉(ハスハ)を忘れようと考えていた銀龍(ぎんりゅう)の心を余計に彼女に惹きつける結果となり ――― 蓮葉は花蓮女王の女官だったと云う噂があった事から、銀龍は彼女は何かに巻き込まれたのでは無いかと心配を重ねていた。

( ――― ()(かく)蒼狼(せいろう)白夜(ハクヤ)に詳しい話を訊かないとな……! )

銀龍(ぎんりゅう)が思い悩んでいる中、蒼狼(せいろう)白夜(ハクヤ)に見張りを任せて王族の居住棟の中に()ると云う晦冥の部屋を探して廊下を歩き回っていた。
意外と怪しまれないもので、別の場所を見張っている若く麗しい武官達は彼を見かけると宝石の様な美しい顔で微笑んだ ――― 。

「 何か? 」 ――― 二人居る見張りの片割れが、立ち止まった蒼狼(せいろう)に問い掛けると、蒼狼もあっさりとした様子で「 こちらの部屋は何の部屋なんですか? 」と問い掛ける。

「 ? ――― 知らないの!? コチラは晦冥(カイメイ)様の御部屋だよ。 」

「 執務室って事ですか? 」

「 君、新入り? ――― ここは晦冥(カイメイ)様の私室だけど、呼ばれて無いのに来ちゃダメじゃないか! 」
片割れの見張りが小さな子供の様に頬を膨らませて怒り始めると、もう片割れが「 いつか、君も きっと呼ばれるよ! 」と笑顔を見せた。

「 " 呼ばれる "って…? 」眉を(ひそ)めた蒼狼が訊ねると「 晦冥(カイメイ)様の" 特別 " になれたら解るよ! 」と見張りの一人が誇らしく笑い、「 晦冥(カイメイ)様の直属の部下になれたのなら、もうひと頑張りだよ! 」と、もう一人が何故か励まして来た。

「 その " 特別 " ってのには、どうすればなれるんでしょう? 」

「 さあ? 」 ――― と、見張りの二人は声を揃えると「 美貌を磨くとか? 」と、片割れが首を傾げながら答えた。





「 ――― 随分と呑気な見張りだな……。」
持ち場に戻った蒼狼(せいろう)白夜(ハクヤ)に見聞きして来た事を話すと、白夜は呆れた様子で感想を述べた。

晦冥(カイメイ)様に仕えてる皆さんって、若々しいと言うか幼い方が多いですよね。――― でも、御蔭で全然 怪しまれませんでした! 」

「 側近の人って、王族の居住棟に住めると思う? 」

「 ますます、山兎恵(ヤマトエ)さんと南海沼(ミナミヌマ)さんにお会いしたい所ですよね……。 」

白夜(ハクヤ)蒼狼(せいろう)が揃って頭を悩ませていると、珠鱗(しゅりん)が青い花束を持って歩いて来た。
花蓮女王がライル王子から手渡された花束を女王の私室へ置きに来たのだ ――― 。

「 ? ――― 青い(はす)睡蓮(すいれん)かな? 」と、白夜(ハクヤ)が彼女に話し掛けると「 睡蓮(すいれん)の花だそうですわ! ――― ロータス国の国花だそうですわよ? 」と、手にした花束にも負けない可憐な微笑みを浮かべて珠鱗(しゅりん)は女王の私室へ入って行った。
女王の私室へ運ばれた青い花束は、一瞬で 待機していた女官達の心を掴むと、彼女達によって美々しく威厳のある花瓶に活けられた。

睡蓮(スイレン)の名前と同じだね♪ 」
楽しそうな蝶美(チョウビ)睡蓮(スイレン)に声を掛けると、睡蓮は嬉しそうに「 はい…! 」と返事をして 自分と同じ名前の青睡蓮を見つめた ――― 。

「 綺麗ですね……! リエン国の(はす)のように、ロータス国には このお花が沢山 咲くのでしょうか? 」

「 そうみたいですわよ! 」と、珠鱗(しゅりん)睡蓮(スイレン)に微笑むと「 本当は、女王陛下には " 処分して " と言われたのですけど…… 」と、今度は沈んだ様子で花瓶の花を見つめた。

「 え!? なんで? ―――……やっぱり、陛下はご結婚されたく無さそうでしたか? 」と、緋鮒(ひぶな)が心配すると 「 いえ、そうでも無いと思いますわ? 」と、珠鱗(しゅりん)は答え「 それじゃあ、私は戻りますから また後程 ――― 」と、再び 女王の(そば)に戻って行った ――― 。



珠鱗(しゅりん)の予想は当たっていて、花蓮(カレン)女王はライル王子に非常に関心を持っており、食事中も 何かと長々と語るアスワド王の言葉は彼女の耳には全く入っておらず、花蓮は一心でライル王子を目で追っていた ――― 。

その事にライル王子は気付いており( マズいな…――― さっきから見られてるぞ…… )と、女王から目を逸らしがちに出された白い酒を口にする。
彼がリエン国の女王の夫の座に興味が無いのは、側室を持たなかった(ハチス) 先王の存在も影響している。
( たった一人の女…――― それも、まだ子供(ガキ)の女に縛られて生きるなんて(たま)ったもんじゃ無ぇ……! )


「 女王陛下、どうかな?我が息子は ――― ?」
結論を急ぐアスワド王が直球で訊ねると、女王は何時(いつ)も通り小さな声で「 素敵だと思います…。 」と愛想笑いを浮かべたが、心の中は夢の様に華やいでおり ――― 彼女はその想いが溢れ出た自身の顔を隠す為に(うつむ)いた。

女王が愛らしく恥じらいを見せていると判断したアスワドは、好感触に声を出さずに口元を微笑みで歪ませ ――― ライルは憂鬱の溜息が漏れない様に黙り込むしかなかった。


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