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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第三章『 泥中之蓮 』

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「 蓮華の花守 - 視察 」(四)

 

「 ――― 睡蓮(スイレン)!? 」


部屋から出て来た花蓮(カレン)女王 と 晦冥(カイメイ)睡蓮(スイレン)を連れているのを目にし、見張りを務めていた白夜(ハクヤ)蒼狼(せいろう)は、()(まで)と同じ様に女王に頭を下げると、立塞がる様に三名の前に立った。
花蓮(カレン)女王 ――― 王の近くに仕える者達は、逐一(ちくいち) 膝まづいていたら切りが無いので略式の敬礼でも許されている。

睡蓮(スイレン)は、不安を浮かべた瞳で助けを求める様に白夜(ハクヤ)の顔を見た ――― 白夜ハクヤも 彼女のその瞳に気付く。
五名は誰も言葉を発する事無く、()の場に佇んだ ――― 。


「 ――― 何方(どちら)へ? 」と蒼狼(せいろう)が切り出すと、「 ライル王子殿下を御案内する場所を花蓮(カレン)様と視察に行くんだよ。 」と、晦冥(カイメイ)が微笑む。
花蓮(カレン)は顔は動かさず、瞳だけ上目遣いで白夜(ハクヤ)を見ると「 護衛はあなた達で良いわ… ――― それなら、睡蓮(スイレン)も緊張がほぐれるでしょ? 」と、睡蓮のほうに顔を向け「 あなた、さっきから手が震えてる…… 」と睡蓮(スイレン)を見ながらクスッと笑って繋いでいた手を放した。

( !? ――― 今、女王様の表情が……気のせいかしら…? )

晦冥(カイメイ)への恐怖心が正常な感覚を失わせているのか ――― 睡蓮(スイレン)の瞳には一瞬、目の前に立つ 自分と同じ位の背丈の花蓮(カレン)女王の姿が黒衣も相俟(あい)まって 不気味な存在として映り込んだ。


「 君達、此処(ここ)を頼むよ。 」 ――― 晦冥(カイメイ)白夜(ハクヤ)蒼狼(せいろう)の背後を見ながら微笑むと、五名の(もと)に二名の若く麗しい男の武官が何時の間にか現れており、晦冥(カイメイ)と女王に敬礼していた。
彼等は見張りを交代する為に現れたのだが、まるで、始めから自分達を護衛に付ける予定で居たかの様で白夜(ハクヤ)蒼狼(せいろう)は眉を(ひそ)めた表情で顔を見合わせた。

「 これ何?――― 罠でしょうか? 」
「 良いから行くぞ……! ――― ほら、君もおいで! 」

白夜(ハクヤ)は立ち尽くしていた睡蓮(スイレン)の腕を引くと、蒼狼(せいろう)共に 女王と晦冥の後を追った ――― 。



 
睡蓮(スイレン)、なんで君まで連れ出されているんだ!? 」

「 わかりません…――― 女王陛下が……! 」

「 えっと、じゃあ 俺が睡蓮(スイレン)さんの前に立つんで ――― 御二人は、勝手に手でも何でも繋いでて下さい! 」

「 おい、真面目にやれ! 」

睡蓮(スイレン)達 三名がヒソヒソと話す姿を、彼等の前を歩いている花蓮(カレン)女王が 時々振り返りながら無言で眺める ――― 。
花蓮は眺めながら、白夜が睡蓮の手首部分を握っている事に興味を持った。


先頭を花蓮(カレン)女王と晦冥(カイメイ)が並んで歩き、次に蒼狼(せいろう) ――― 彼の後ろを白夜(ハクヤ)睡蓮(スイレン)が並んだ様に歩く事になったのは良いが、
時々、花蓮(カレン)女王が睡蓮(スイレン)に話し掛けるので 小声の花蓮と恐怖から声が出ない睡蓮の会話は、宮中に響く水と海の音で 何度も掻き消されては同じ会話が繰り返され ――― 次第に、苛立ちつつ見兼ねた蒼狼(せいろう)が 伝達係か通訳の(ごと)く糸の様に細い二人の声を繋ぎ始め、(はた)から見ていると、五名の()の様子は ()る意味 滑稽でもあった。


睡蓮(スイレン)白夜(ハクヤ)は一緒に住んでるのよね……? 」

( ? ――― 俺、名乗ったっけ? )と思いながら白夜(ハクヤ)睡蓮(スイレン)に代わって女王の問いに答えた。

「 そうです。 」

「 二人はいつから知り合い…? ――― どこで出会ったの? 」

「 ? ――― 蒼狼(せいろう)、何て(おっしゃ)った? 」

「 御二人は 何時(いつ)から知り合いで、何処で出会ったんですか? ――― って 」

「 ……出会ったのは、(ハチス)先王の葬儀式の次の日です。 ――― どうして、そんなご質問を? 」

「 どこで出会ったの……? 」花蓮(カレン)白夜(ハクヤ)が答え無かった部分を彼に背を向けたまま、もう一度 突き刺す様に (たず)ねた。
華奢な背中でありながら、身体的にも年齢的にも彼女より上である筈の白夜(ハクヤ)に対して威圧感を感じさせる。

「 ――― 海ですが? 」


「 あのー そう言えば、山兎恵(ヤマトエ)さんと南海沼(ミナミヌマ)さんはお元気でしょうか? ――― 最近、お見掛けしないので 」

白夜(ハクヤ)睡蓮(スイレン)への質問を(さえぎ)る様に蒼狼(せいろう)花蓮(カレン)女王 と 晦冥(カイメイ)に投げ掛けると、晦冥は、嘘か誠か何時(いつ)もと変わらない様子で「 そう言えば、私も見てないな? ――― でも、先日 御会いした時は元気だったよ。 」と答えた。

現在(いま)、何されてるんですか? ――― 花蓮(カレン)様の側近をされてる訳では無いんですよね……? 」

「 そうだね、(ハチス)先王が亡くなられたのに合わせて退かれたが、王宮の移住区にはいらっしゃると思うよ? ――― それより蒼狼(せいろう)、ちゃんと周辺に危ない場所が無いか確認してくれたまえ。()の為に、君と白夜(ハクヤ)を同行させたのだから 」

「 は~い……! 」 ――― " かわされたか…… " と、蒼狼(せいろう)()の場は引く事にした。


( やっぱり、知り合いが揃う日は(ろく)な事が無いようだ……――― )
白夜(ハクヤ)は隣を歩く睡蓮(スイレン)の姿を見たが、笑顔どころか顔色は最悪の状態になっている。
そして、目と鼻の先には ()(まで)と同じ様に華やかな装いの晦冥(カイメイ)の姿が・・・・

( まだ一日目でこれか……先が思いやられる…――― )
  

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