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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第三章『 泥中之蓮 』

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「 蓮華の花守 - 一日目の食堂 」(二)

   
 
―――――― 午の下刻 ( 十ニ時過ぎ )


食堂の円卓を睡蓮(スイレン)白夜(ハクヤ)達一行が 二台程 独占している。


「 ちょっと、日葵(ひまり)ちゃん! こんな良い男と どこで出会ったのよ!? 」
「 あたしも知りたい! 」 ――― と、酒は無いが夜の飲み屋のノリで姫鷹(ヒメダカ)東天光(トウテンコウ)何処(どこ)から如何(どう)見ても、美青年で愛妻家の春光(しゅんこう)の姿を見て日葵(ひまり)に問うと、葵目(アオメ)も少し頬を染めながら無言で頷く。

「 それは、話せば長くなるねぇ! 」と、日葵(ひまり)が思い出の日々を脳裏に浮かべて幸せそうな笑顔で医院の三名へ告げると、春光(しゅんこう)も「 まぁ、そうだね。」と、日葵(ひまり)と見つめ合い、仲睦まじげに微笑んだ。


「 なかなか良い食堂じゃの ――― (わし)も今度から此処(ここ)に食べに来るかのう? 」

「 でもね!秋陽(しゅうよう)先生 ――― 前はもっと美味しかったんだよ? 」と、蝶美(チョウビ)秋陽(しゅうよう)に告げると「 だよねぇ!? アタシも前のほうが好きだった! 」と緋鮒(ひぶな)が同意する。


「 ――― なんで、こんなに人が……? 」
白夜(ハクヤ)が知り合いだらけの円卓を訳が分からないと言った表情で眺めていると「 良いじゃないですか? 賑やかで楽しいですよ。 」と 蒼狼(せいろう) が 特に気にせず麺を啜る ――― 。

( 最近、知り合いが揃った時は(ろく)な事が無いんだが…… )と、考えながら白夜(ハクヤ)は周囲を警戒した。


秋陽(しゅうよう)日葵(ひまり)春光(しゅんこう) ――― 姫鷹(ヒメダカ)葵目(アオメ)東天光(トウテンコウ) の 六名は、睡蓮(スイレン)達が来るであろう時間に合わせて食堂に張り込んで世間話をしており、女王の御見合いに医院は余り関係無いだろうと言う事で、医院の三名も出来る限りで睡蓮(スイレン)達を見守る事を秋陽(しゅうよう)と約束していた。

――― 睡蓮(スイレン)は、余り 会話に参加する事は無かったが、皆が居る光景を楽しそうに眺めながら食事をしている。




「 さ~てと、アタシは先に戻ろっかな ――― 皆さん、サヨナラ! 蝶美(チョウビ)睡蓮(スイレン)ちゃん また後で~! 」
緋鮒(ひぶな)は席を立ち上がり食器を手に持つと、皆に手を振って仕事に戻って行った ――― 。
一行は色々と話したい事が有るのだが、睡蓮(スイレン)の事情に無関係で女王や 晦冥(カイメイ)に近い 蝶美(チョウビ)が居るので 口を閉ざしている。


「 あの、葵目(アオメ)さん…――― こないだは、お手紙を有難うございました。 」
睡蓮(スイレン)がお礼を言うと、日葵(ひまり)春光(しゅんこう)には自分の事情を説明済みだが、蝶美(チョウビ)の前なので葵目(アオメ)は優し気な笑顔で無言で頷いた。
「 今度、お返事しますね。 」――― と、睡蓮(スイレン)葵目(アオメ)に微笑んだのを決して、白夜(ハクヤ)は見逃がしてはいない ――― 。


葵目(アオメ)さんって、女王さまみたいだね! 」

寡黙(かもく)葵目(アオメ)の様子を見て、蝶美(チョウビ)が無邪気に笑うと、姫鷹(ヒメダカ)は「 あ~…確かに。 」と苦虫を噛み潰したような顔をしながら( " 女王様 "と聞くと何だか……――― )と彼女らしい妄想を頭の中で繰り拡げ始めた。

「 ? ――― 花蓮(カレン)様も寡黙な御方なんですか? 」と 蒼狼(せいろう)が訊くと、「 うん、そうだよ ――― ねっ?睡蓮(スイレン) 」と 蝶美(チョウビ)が相槌を求めたので睡蓮(スイレン)も彼女に続く「 はい…!()…――― 女王様はお静かな方です。 」



「 なんだい? (ハク)ちゃんと (せい)ちゃんは会ったんじゃないの? 」
「 ――― あの、 (せい)ちゃんって俺の事ですか? 」と、蒼狼(せいろう)が口を挟んだが白夜(ハクヤ)日葵(ひまり)は気にせず会話を続けた。

「 部屋の出入りをされる時のお姿は何度か見たけど、喋ってはいないから…――― 」

(ハチス) 様 は そんな事は無かったのよぉー! 」と姫鷹(ヒメダカ)(ハチス)に想いを馳せると、葵目(アオメ)も淋しげな表情で同意する様に頷き、東天光(トウテンコウ)も温かい緑色のお茶を飲みながら、しみじみと「 なんか、友達みたいな王様だったよねぇ…――― 」と(ハチス)の姿を思い返す――― 。

「 あ!それ解ります ――― その辺に居そうで居ない御方って言うか 」と蒼狼(せいろう)も笑い「 (ハチス)さまは、よく(アメ)をくれたよ! ――― 女官のみんなに配ってたの! 」と蝶美(チョウビ)も笑うと「 俺も(アメ) 貰ったな……持ち歩いてるのかな? 」と 白夜(ハクヤ)も笑う。

睡蓮(スイレン)は、リエン国の人々は (ハチス)先王の話をする時は何時(いつ)も楽しそうだなと考えながら、皆のその様子を見て自身も微笑んだ。
残念ながら(ハチス)先王の記憶は無いが『 (アメ) 』と云う言葉には覚えがあった ――― ( (アメ)…… たぶん、食べた事あるような気がする…―――? )



(ところ)で ――― (ハチス) 様と言えば、蝶美(チョウビ)さんは山兎恵(ヤマトエ)さんと南海沼(ミナミヌマ)さんには会った事ある? 」と、蒼狼(せいろう)が切り出すと「 あるよ~!――― あれ!? そう言えば、最近 見てないかも?……アタシが女王さまに付きっきりだからかなぁ? 」と、蝶美(チョウビ)は愛らしく小首を傾げた。

「 ――― 晦冥(カイメイ)様が側近になられた理由って知ってる? 」と、 白夜(ハクヤ)蝶美(チョウビ)に訊ねると、医院の三名や秋陽(しゅうよう)達三名も 皆、彼女の言葉に注目したが「 ん~ん!知らな~い! 」と、嘘か誠か ――― 本当なのだが、彼女は首を横に振った。


「 君は、女王になる前の花蓮(カレン)様にも仕えていたの? 」 白夜(ハクヤ)は続ける ――― まるで、尋問の様だ。

「 ううん!違うよ? ――― アタシ達は皆、女王になった女王さまから仕えてるよ? 」

「 女王になる前の花蓮(カレン)様に仕えてた女官の人達って誰だったか知ってる? 」

「 え~っと……ゴメンなさい、わかんないや…! ――― そう言えば、引き継ぎ(?)みたいなのは無かったかも? あれ? あったっけ? 」と、普段は笑顔を絶やさない蝶美(チョウビ)が真顔で考え込み始めると「 医院と同じね……。 」と、姫鷹(ヒメダカ)葵目(アオメ)東天光(トウテンコウ)のほうを見ながら呟いた。
葵目(アオメ)東天光(トウテンコウ)も真顔で頷く。


「 ――― 知り合いの中で 最近、見かけない人って居る? 」蒼狼(せいろう)の質問に蝶美(チョウビ)は不信感と退屈を覚え「 ちょっとぉ~!さっきから何なの?意味わかんないんだけどぉ! 」と眉を(ひそ)めながらも「 見かけない人……いっぱいいるよ? ――― だって、アタシ達は女王さまに付きっきりだもん! 」と頬を膨らませた。

「 だから、こ~んなに たくさんの人と ご飯 食べたの久しぶり! ――― 緋鮒(ひぶな)もそうだよ! 睡蓮(スイレン)、友達いっぱいなんだね! 楽しかったぁ~ アリガトっ! 」

「 え? 」

睡蓮(スイレン)は、蝶美(チョウビ)の明るく愛らしい笑顔を見て、思わず微笑み返したが( どちらかと言うと、 白夜(ハクヤ)さんのおかげよね……? )と、円卓に座る顔ぶれを改めて眺めた ――― 。
良く見ると、日葵(ひまり)だけは まだ何かを美味しそうに黙々と食べ続けていたので、思わず睡蓮は微笑んだ。



一行は、取り敢えず明日のお昼も合流する事にして()の日は解散する。

「 まっ 、時間が合ったら あたし達とは夜も会いましょう ――― ねっ? 白夜(ハクヤ)くん 、夜よ?夜。」と、別れ際に姫鷹(ヒメダカ)が妖しげな笑顔で " 夜 " を強調して来たので、白夜(ハクヤ)は( ――― 絶対に会ってはいけない気がする…… )と危機感を募らせた。




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