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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第三章『 泥中之蓮 』

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「 春光と日葵 」

 

睡蓮(スイレン)、あいつ等は晦冥(カイメイ)様に近い ――― あの二人の所に長居はしちゃ駄目だ! 」

「 は…はい! 」

何時(いつ)もは並んで歩いてくれる白夜(ハクヤ)が、自分より少し前を歩いている事に睡蓮(スイレン)は気が付いていた。
( ――― 何かお急ぎになられているのかしら…? )

「 あの……白夜(ハクヤ)さん、私 明日から七日間は宮中に泊まり込みで仕える様に云われて……――― 」

「 俺 や 蒼狼(せいろう)もそうだよ ――― 大丈夫、必ず守るよ。 」

「 は…はい…! ごめ ――― ありがとうございます…。 」と、理由は自分では解ってはいないので " 何となく " 睡蓮(スイレン)は頬を紅く染めて(うつむ)いた。

( 今、" ごめんなさい " と言おうとして、" ありがとう " と言ったよな……? )

白夜(ハクヤ)は、睡蓮(スイレン)がどんな表情をしているのか見たいのを桔梗(ききょう)を想って我慢したのだが、心の中で睡蓮(スイレン) と 睡蓮の花を見た日の事を思い返す ――― 。

( ――― 嬉しいと言う意味なのだろうか……? )



二人が白夜(ハクヤ)(いえ)に戻ると、中には懐かしい顔 ――― 日葵(ひまり)の夫 の 春光(しゅんこう)の姿があった。

「 やあ、二人とも御帰り! 久し振りだね。 」

春光(しゅんこう)さん!? 何で? 」と、最近、眉間にしわを寄せがちな白夜(ハクヤ)の顔が綻ぶと、睡蓮(スイレン)も「 お久しぶりです…! 」と彼に頭を下げた。


「 宮中の鍵を増やしたり、作り直すとかで 今日は鍵師の何人かで下見に来たんだ。 ――― で、僕は此処(ここ)に帰りに寄らせてもらったと言うか……何日か泊まらせてくれるかな? 」

「 勿論ですよ! 空いてる部屋はあるんで好きに使って下さい。」と白夜(ハクヤ)は笑顔で答えたが「でも、日葵(ひまり)は……家に独りなんですか? 」と日葵の心配を始める。

日葵(ひまり)ならホレ、畳の上に倒れておるぞ? 」と、秋陽(しゅうよう)偶然(たまたま) 手に持っていた扇を指した方向を白夜と睡蓮が見ると、相変わらず、ふっくらとした膨よかな体型の日葵(ひまり)が、王宮までの階段疲れで水分を含んだ濡れた布を額や脚などに乗せて寝込んでいた。

日葵(ひまり)さん!! 」睡蓮(スイレン)幼子(おさなご)の様に日葵の所に駆けて行く ――― 。

「 僕が日葵(ひまり)を置いて来れる訳が無いじゃないか? ――― でも、連れて来るのは正直 苦労したかな? 」と春光(しゅんこう)は持参した異国の紅いお茶を飲みながら笑った。


睡蓮(スイレン)~…! 聞いたよ!? 花蓮(カレン)様の女官になったんだって? 」と、日葵(ひまり)にしては珍しく弱々しい声で睡蓮(スイレン)に話しかけた。

「 はい…! まだ数日しか仕えておりませんが、日葵(ひまり)さんや桔梗(ききょう)さん、東雲(シノノメ)さんに教わった事が役に立っています。 」

「 なんか、しばらく見ない間にしっかりしてるじゃないのさ……! 手紙も読んだよ?アレ自分で書いたのかい? 」

「 はい! 」

五名は宴の様な食事を繰り広げながら、久しぶりの再会を楽しんだ。
話は次第に、晦冥(カイメイ)や 呪術、宮中で消えた者達の話題にも及んで行く ――― 。

(シノ)ちゃんからも聞いたけど、呪術とか行方不明って…… ――― (しゅん)ちゃんも気を付けてよ!? 」

「 うん…。 」 ――― 鍵も何か関係あるのだろうかと春光(しゅんこう)は考え込み始めた。

「 あー…そうだ、父さん ――― 俺と睡蓮(スイレン)は明日から七日間は宮殿の中に寝泊まりしなきゃいけないんだ ――― だから、家の事はよろしく? 」

「 それは良いが……睡蓮(スイレン)もか!? 」と秋陽(しゅうよう)が驚いた様子に、(いま)だに晦冥(カイメイ)の名を覚えていない日葵(ひまり)も目を見開いて続く「 ちょっ…大丈夫なのかい!? " 何とか様 " って奴もいるんだろ!? 」

花蓮(カレン)様の見合いの為にだから…――― 晦冥(カイメイ)様も忙しいと思うし、何処(どこ)かの王子様と御付きの人や、他の女官の人達も居るし、人は多いから ――― 」

「 人は多いかもしれないけど、それ 皆が忙しくしてるんだよね? ――― 白夜(ハクヤ)くん、睡蓮(スイレン)さんが矢に襲われたのも花蓮(カレン)様の即位式の行進の最中だったんだよ? 」
春光(しゅんこう)の言葉に、四名は静まり返る ――― 特に、睡蓮(スイレン)は蒼褪めてしまっている。

「 あ……怖がらせてごめんね、睡蓮(スイレン)さん ――― でも、二人共 油断はするな。 」
穏やかな春光(しゅんこう)にしては珍しく、語尾を強めて白夜と睡蓮の顔を真っ直ぐ見つめた。



「 明日、医院長達にも目を光らせてくれる様、またお願いしておくかのう…… 」秋陽(しゅうよう)も腕を組んで深刻な表情で呟く。

「 先生、あたしも行くよ! 話聞いてたら、その姫鷹(ヒメダカ)先生って人に会ってみたくてさ! 」

「 医院か…――― 医院の鍵も作り直すなら、僕も日葵(ひまり)や先生と一緒に行けるんだけどなぁ…… 」


酒が入ってるせいなのか、三名の大人達は直ぐに別の話題へと移って行ったが、春光(しゅんこう)の言葉で酔いが醒めつつある白夜(ハクヤ)と、まだ酒を飲む年齢に達していない白面(シラフ)睡蓮(スイレン)は蒼白の表情で沈黙したままだった。

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