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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第三章『 泥中之蓮 』

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「 姫鷹の義足 」

 

「 こんな所に突っ立ってるだけじゃ体も剣も鈍りますよね……俺達に見張りさせるのって、(わざ)となのかな? 」と、女王の部屋の前の見張りを(おこな)いながら蒼狼(せいろう)がぼやくが、白夜(ハクヤ)の頭の中は現在、桔梗(ききょう)睡蓮(スイレン)が占拠しているので聞いていない。


「 どうにか、晦冥(カイメイ)様の部屋を探せないかな……見張りが立ってるのかな……?――― 白夜(ハクヤ)さん?聞いてます?」

「 !? ――― ごめん、聞いてなかった。 」

「 どうしちゃったんですか!? 今日の白夜(ハクヤ)さん変ですよ? 」

「 うん……ちょっと。 」

「 そう言えば俺、昨夜は (ハチス) 様の夢を見たんですよ! 」――― 言いながら、蒼狼(せいろう)は嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「 へぇー…偶然だな ――― 俺も こないだ見たよ。 」

花蓮(カレン)様に不満がある訳じゃ無いけど、 (ハチス) 様が生きてる時に宮廷に仕えたかったなぁ…… 」

「 解るよ。 ――― 夢か……そろそろ寂しくなる頃だもんな。 」と、遠くを見ながら白夜(ハクヤ)は自身の母親が亡くなった日の事を思い出していた ――― と、視線の先に見覚えのある女性の影が現れる。


「 あれ?姫鷹(ヒメダカ)先生じゃないですか! おはようございます。 」蒼狼(せいろう)が爽やかに姫鷹に頭を下げる。

「 やだぁ!あなた達、あたしを追いかけてこんな所にまで ――― !! 」

「 いや、仕事してるだけです。 」白夜(ハクヤ)蒼狼(せいろう)は微笑んだ表情だったが感情の無い声を揃えた。

「 じゃあ、あたし達は運命でぇ ――― ! ごめん、遊んでる暇 無いの。花蓮(カレン)様の健診に来たのよ、通して? 」姫鷹(ヒメダカ)は途中で飽きて真顔で告げた。

「 どうぞどうぞ。 」と、姫鷹(ヒメダカ)を誘導する様に白夜(ハクヤ)は両手を奥の通路のほうへと伸ばす。

「 御自分が遊んどいて…… 」 ――― 蒼狼(せいろう)は苦笑いで姫鷹(ヒメダカ)の足下を注視した。
片脚が義足の彼女は医院から診察具を持ち、杖を突きながら女王の部屋に通っており、姫鷹(ヒメダカ)本人は口にはしないが 正直、行き帰りが彼女の身体の負担になっている。
白夜(ハクヤ)蒼狼(せいろう)の様に、医院から此処(ここ)までの距離を知ってる者から見れば、姫鷹(ヒメダカ)本人の言葉を聞かなくとも 負担になっているのは一目瞭然であった。

「 医院長、実は 睡蓮(スイレン)花蓮(カレン)様の ――― 」

「 知ってる!秋陽(しゅうよう)先生に聞いた ――― 昨日 医院に来たの。 」




女王の私室にて、睡蓮(スイレン)は口には出さないが( 御一人で入浴したほうが早いような気がするのだけど……王様とは、こういうものなのかしら……? )と 湯浴みの手伝いについて、やや疑問に思っていた。

朝・夜・場合によっては昼間も入浴する女王を複数の女官達が介助する ――― 睡蓮(スイレン)には、()れは何だか可笑(おかし)な光景の様に思えていた。


「 お寒くないですか? 今日は、間もなく姫鷹(ヒメダカ)医院長がいらっしゃいますので薄着のままお待ち下さいね。」
――― 紅魚(ホンユイ)が優しげに女王に声を掛けると、女王は無言で頷いた。

姫鷹(ヒメダカ)先生!? ) ――― 睡蓮(スイレン)は思わぬ知人の名に心を華やがせる。

「 噂をすれば、いらっしゃいましたわよ! 」珠鱗(しゅりん)姫鷹(ヒメダカ)の手を引きながら部屋に入って来る。

「 よっこいしょ、失礼しまーす! ――― あら、マジでいるじゃないの 睡蓮(スイレン)ちゃん 」

「 おはようございます!姫鷹(ヒメダカ)先生 」睡蓮(スイレン)が姫鷹に頭を下げると紅魚(ホンユイ)が「 姫鷹医院長とも知り合いなのっ!? 」と驚愕の表情を浮かべる。

睡蓮(スイレン)ちゃんも医院に通っているのよ。 」 ――― 姫鷹(ヒメダカ)は睡蓮の事も自分が診ているとまでは口にしなかったのだが「 はい! 私も先生に ――― 」と、睡蓮(スイレン)が自分で説明しそうになったので、()ぐに睡蓮の口を塞いで " それは言ったら駄目! " と、小声で睡蓮を真っ直ぐ見つめながら告げた。


睡蓮(スイレン)が女官になってしまった現在、女王の専属医が 女王と同等に女官を扱っているとなれば、自分と 睡蓮(スイレン)の立場が ややこしくなる可能性が大いにある ――― 。

晦冥(あいつ)が狙ってるのは、それなのかも…!? ああっムカつく!! あのクネクネ頭!! )


「 ――― 先生にお会いした事がありまして…? 」これで良いのかなと思いながら睡蓮(スイレン)姫鷹(ヒメダカ)の顔を見た ――― これで良いらしい。


姫鷹(ヒメダカ)睡蓮(スイレン)が親し気に話した()の様子を、花蓮(カレン)は何も言わず、二人を観察する様に ――― 特に睡蓮(スイレン)の姿を眺めていた ――― 。


「 先生、お話されながらで結構ですので、陛下の御健診をお願いできますでしょうか? お見合いが控えておりますので、風邪をひかれてしまっては(わたくし) 達が怒られてしまいます……。 」苦笑いで珠鱗(しゅりん)が催促をする。

「 そうね!失礼しました花蓮(カレン)様 ――― 始めましょうか。 」


" 花蓮(カレン)様 " と姫鷹(ヒメダカ)が口にする度に、睡蓮(スイレン)は花蓮の顔色が気になっていた。
怒っている様子も 悲しんでいる様子も無く、何を想っているのか見えない ――― 。
( 女王様は、あまり言葉を口にされない(かた)のようね…――― ? )



「 はい、健康そのもの! もう(ころも)を羽織られて結構ですよぉー 」

「 ……。 」

( 相変わらずね、この()……。見合い相手にもこうじゃないでしょうね?! ああっ!もう!! 代われるもんなら あたしがっ……!! )


睡蓮(スイレン)さん、医院への道をご存じなら 近くまで姫鷹(ヒメダカ)医院長をお見送りして頂いても宜しいかしら? 」
姫鷹(ヒメダカ)睡蓮(スイレン)は知り合いと見た珠鱗(しゅりん)が 睡蓮に笑顔を向ける。
彼女も姫鷹の脚については負担になっているのではないかと気になっている一人だ。

「 はい! 」



「 おや、睡蓮(スイレン)さんがお見送りですか? 」
戻って来た姫鷹(ヒメダカ)睡蓮(スイレン)を連れているのを見て、蒼狼(せいろう)は微笑んだが 白夜(ハクヤ)は少し緊張したのを姫鷹が嗅ぎ付ける ――― 。

「 ……ん? あなた達 また何かあった?! 」

「 ――― またって何ですか? 」

「 何もありません! 」 ――― 白夜(ハクヤ)に手紙の時の話を聞かれたくなくて、慌てて否定する睡蓮(スイレン)の姿を見て( 何かあったな…… )と、姫鷹(ヒメダカ)は医院に帰ったら葵目(アオメ)東天光(トウテンコウ)と お茶しなければと企む。


「 そうそう、睡蓮(スイレン)ちゃん ――― これ、葵目(アオメ)から預かって来たの。」

姫鷹(ヒメダカ)が睡蓮に手渡した()れは、花柄で桃色の書簡紙 ――― 葵目(アオメ)からの手紙だった。
彼は、女王の(りょう)の事を秋陽(しゅうよう)から聞き、睡蓮(スイレン)の事を心配して その想いを手紙に(したた)めたのである。

( ――― 葵目(アオメ)さんは女性には興味無いんだよな……? )

白夜(ハクヤ)は、相変わらず縄張りを荒らされている様な気持ちで、睡蓮(スイレン)が好きそうな可愛らしい書簡紙の葵目(アオメ)の手紙を見つめる。
()の気持ちが、桔梗(ききょう)(まと)わりつく他の男を目にした瞬間と同じ気持ちである事は白夜自身、薄々 気が付いてはいる。

( こういうのを止めないといけないんだよな……。 )


「 ありがとうございます…! お返事を書きますとお伝え頂いても宜しいですか? 」

( 返事 書くのか……まあ、書くか。 ――― ? ――― 俺は、睡蓮(スイレン)をどうしたいんだろ……? )白夜(ハクヤ)は無言で睡蓮を見つめた。



睡蓮(スイレン)ちゃん、晦冥(カイメイ)…様の近くにいる人間にあまり自分の事を話しては駄目よ。 」
――― 誰か聞いているかもしれないので、小声で、一応、晦冥(カイメイ)に " 様 " も付けて姫鷹(ヒメダカ)は睡蓮に忠告した。

「 はい…! 」睡蓮(スイレン)は真剣な表情で姫鷹(ヒメダカ)に返事をしたのだが、()ぐに、何時(いつ)もの調子で「 そういえば、姫鷹(ヒメダカ)先生達はお昼のお食事はどうされていらっしゃるのですか? 」と姫鷹に訊ね始めたので 白夜(ハクヤ)蒼狼(せいろう)は ――― 特に白夜(ハクヤ)は嫌な予感がする。

睡蓮(スイレン)、それ以上は ―――… 」



―――――― " 私と白夜(ハクヤ)さんと蒼狼(せいろう)さんは食堂に行く "


()れを聞いた姫鷹(ヒメダカ)が、()の日の食堂に態々(わざわざ)杖を突いて現れては白夜(ハクヤ)の隣に座ったのは言うまでも無い。



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