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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第三章『 泥中之蓮 』

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「 睡蓮の一日 - 閑話 」

 
「 ……。 」

「 ……。 」

夕闇の蒼が夜の黒に変わろうとしている中、白夜(ハクヤ)は帰路の中で睡蓮(スイレン)の変化に気が付いていた。
(しか)し、二つ三つある候補の中から どれが理由で彼女が変化してしまったのかが判らずにいた ――― 。

晦冥(カイメイ)様の事なのか、海の話の事か、桔梗(ききょう)の事か……(ある)いは、花蓮(カレン)様や女官達と何かあったのか…… )

睡蓮(スイレン)花蓮(カレン)様の所はどうだった? 」

「 想像していたよりも良くして頂きました…! 」

睡蓮(スイレン)は助けて貰った時の話を思い出して、白夜(ハクヤ)から顔を背けながら通路の既視感について話したほうが良いのか迷う ――― 。
白夜(ハクヤ)は記憶を取り戻す手伝いをすると言ってくれたが、人間関係に関する過去の記憶が無い睡蓮(スイレン)は、何処(どこ)まで彼に ――― 他の人間に頼って良いのか判らずにいた。
白夜(ハクヤ)の困った様な表情や、桔梗(ききょう)の悲し気な顔と怒った様な顔の理由が分かっている今は、二人のそんな顔は二度と見たくは無いので、余計に彼に頼る事には躊躇(ためら)いがあった。


睡蓮(スイレン)桔梗(ききょう)の事なんだけど ――― 」と、話し始めたは良いが、()の後、どんな言葉を続ければ良いのか白夜(ハクヤ)は判らなくなっていた。
( ん? ――― 謝ったほうが良いのか? でも、睡蓮(スイレン)は俺と結婚する気は無いと言っていたし、俺が好きなのは桔梗(ききょう)…… )

「 お元気でいらっしゃいますか? 」

「 う…うん! 元気にしてるよ。 」

「 本当は、この髪飾りをお返ししなくてはならないのですけど…… 」

「 俺が渡そうか? 」と、言いながら白夜(ハクヤ)は自身の言葉の響きに心が凍り付きそうな想いだった。
彼が想う程に睡蓮(スイレン)桔梗(ききょう)の事を気にしてはいないのだが、彼の生真面目さと良心がそう思わせるのだろう。

「 いえ…――― できれば、直接 お返ししたいので…… 」

返さなければならないのは髪飾りだけでは無い ――― そう思いながら、睡蓮(スイレン) は悲し気な表情で白夜(ハクヤ)の悲し気な横顔を無言で見つめた。
空も景色も薄暗くなっている事もあり、互いの顔を見つめる機会が少ない二人が 互いの表情に気付く事は無かった。


二人が(いえ)に帰り着くと、心配していた秋陽(しゅうよう)が駆け寄って来て、二人の表情をじっと見つめる。
「 ん? お前のほうが顔色悪いのは予想外じゃったな。晦冥と何かあったか!?」と、先に白夜(ハクヤ)を心配するが「 ちょっと、疲れてるだけだよ 」と彼の息子は足早に自室に戻って行く。

「 なんじゃ、アイツは……風邪でもひいたか? ――― 睡蓮(スイレン)はどうじゃった? 女官着が なかなか様になっておるではないか! 」

「 ありがとうございます…! 想像していたよりも良くして頂きました。 」

睡蓮(スイレン)秋陽(しゅうよう)にも既視感について話す事は無かった。――― と、云うより " 遠慮から言えなかった " が正しいだろう。





夜の闇が 白光で照らされ始めた早朝 ―――
朝を報せる宮中の鐘が鳴り響く中、着替え終わった睡蓮(スイレン)は、桔梗(ききょう)の髪飾りと 白夜(ハクヤ)から貰った貝殻を持って自室の扉を開いた。
「 準備出来た? 」――― 彼女を待っていた白夜(ハクヤ)が何時も通り ――― 自身に何も無かったかの様な表情で声をかける。

「 はい…! お待たせしました。 」

「 二人とも気を付けて行くのじゃぞ。帰りもな。 」

秋陽(しゅうよう)に見送られ宮廷に着くと、 白夜(ハクヤ)睡蓮(スイレン)は 一旦、別れ ――― 睡蓮は女官達に与えられている一室に入って行く。
「 おはよう、睡蓮(スイレン)! 」 ――― 先に着ていた紅魚(ホンユイ)緋鮒(ひぶな)が挨拶し、睡蓮は彼女達に頭を下げる。

「 おはようございます! 今日もよろしくお願いいたします! 」

――― ()の後、蝶美(チョウビ)がやって来て、ごきげんに睡蓮(スイレン)の髪をまとめあげ、四名で湯殿の中を整えると、女王の起床時間になったら珠鱗(しゅりん)花蓮(カレン)女王を起こしに行く ――― 。

睡蓮(スイレン)の新しい日々には()の動作が毎日加わり、睡蓮(スイレン)()(まで)以上に時の流れ ――― 『 時間 』を意識する様になって来ていた。
以前よりも、白夜(ハクヤ)と一緒の時間が増えているのだが、二人の心の距離は離れるばかり ――― 桔梗(ききょう)の存在を口にした事で其々(それぞれ)距離感に違いはあるものの、睡蓮(スイレン)白夜(ハクヤ)も お互いから " 心を離さなければ "と考え始めていた。




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