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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第二章『 蓮の糸 』

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「 睡蓮花 - 長い一日 」(三)



「 矢が 呪術による物だったとしても、睡蓮(スイレン)が狙われた理由は何だ……? ――― あの光昭(こうしょう)とか言う奴の手を見たろ?下手すれば睡蓮(スイレン)は…… 」――― " 殺されていた " ・・・と言おうとして、白夜(ハクヤ)東雲(シノノメ)に言った ()の言葉の最後の部分を、睡蓮(スイレン)を怖がらせたくは無いので本人の前で口にはしなかった。

「 それに、即位式の時も さっき会った時も 晦冥(カイメイ)様は睡蓮(スイレン)の事を知らない素振りだった。 」

(やま)しい事があるから嘘を吐くんでしょうよ? 」 ――― と、白夜(ハクヤ)の言葉を姫鷹(ヒメダカ)が斬り捨てる。
彼女は、睡蓮(スイレン)晦冥(カイメイ)は知り合いで間違い無いと考えている。
そして、姫鷹(ヒメダカ)()の言葉に葵目(アオメ)は僅かに動揺していた。

「 彼が隠したい何かを、記憶を失くす前の睡蓮(スイレン)が知ってるとか……? 」――― " でなきゃ、命まで狙わないだろ "・・・・と続けるのを東雲(シノノメ)睡蓮(スイレン)を想って、本人の前で口にはしなかった。

「 私とあの方が知り合いだとしたら……どこでお会いしたのでしょう…!? ――― あの方は、私の過去をご存じなのでしょうか…… 」

もし、 晦冥(カイメイ)が自分の事を知っていたとしても、彼に話を聞く気にはなれない・・・――― と言うより、彼に話を聞くなど 恐ろし過ぎて自分には出来ないだろうと睡蓮(スイレン)(うつむ)いた。

( ここまで恐怖を感じるのは、確かに あの方の事を私は知っているのかもしれない…… ――― せっかく、私の過去の手掛かりが見つかったのかもしれないのに どうすれば…… )


「 もしかしたら、睡蓮(スイレン)さんって……… 」 ――― 葵目(アオメ)が言いかけて止まったので白夜(ハクヤ)が続きを訊ねる。

「 あの、それは最後まで言って頂けますか……? 」

「 ごめんなさい…! 睡蓮(スイレン)さんは宮中に居たんじゃないかしらって思って…… 」

葵目(アオメ)、地が出てるわよ? 」――― 姫鷹(ヒメダカ)の言葉に葵目(アオメ)は " しまった! " と、言った表情で両手で口元を覆った。
彼は通常、女言葉で話す男性で()り ――― ()れを隠す為に普段は寡黙(かもく)を装っていたのだ。
先日、 睡蓮(スイレン)の相談(?)に姫鷹(ヒメダカ)葵目(アオメ)を呼んだのは、単に 彼も恋の話が好きだからである。

「 やっちゃったね~ 葵目(アオメ)ちゃん 」と、東天光(トウテンコウ)は苦笑いする。

「 ……この子、心は女なのよ。 ――― あたしと東天光(トウテンコウ)と……あと、(ハチス) 様 と側近の方々しか知らないの。……これも秘密ね!? 」

睡蓮(スイレン)白夜(ハクヤ)東雲(シノノメ)蒼狼(せいろう) の 四名は ぽかんとした表情で(うなづ)いた。
睡蓮(スイレン)以外の三名は、そういう人間もいるらしいとは耳にしていたが、実際に対面するのは初めてだった ――― 。

「 だから、今まで 無口だったんですね? 」 ――― 東雲(シノノメ)の言葉に葵目(アオメ)は俯いたまま頷いて赤面する。
四人もの人間に、一気にバレる事になるとは彼は夢にも思っていなかったのだ。

「 あの、でも… 父さんには言っても良いですか? 」

「 あ… 秋陽(しゅうよう)先生が私みたいなのをお嫌いじゃ無ければ……どうぞ。 」

( と、云う事は……葵目(このひと)睡蓮(スイレン)の髪を触ったのは何も問題無いと云う事か……? )
思わず、睡蓮(スイレン)のほうを見た白夜(ハクヤ)は彼女がまた(・・)俯いている姿を目にした。
見る度に俯いている彼女が、どうすれば顔を上にあげて笑うのか・・・ ――― この瞬間から白夜(ハクヤ)は考え始める。

「 あれ? それじゃあ、俺も宮中で睡蓮(スイレン)を見たのかな…… 」

「 ? ――― 何の話だ? 」

自身の記憶を(さかのぼ)り始めた東雲(シノノメ)の耳に白夜(ハクヤ)の声は届かなかった。


「 宮中……、 晦冥(カイメイ)…さんは どの位 宮中にいらっしゃるのですか? 」

「 そんなに長くは無いわね……四~五年かしら?」

睡蓮(スイレン)の問いに姫鷹(ヒメダカ)が答え、東天光(トウテンコウ)も腑に落ちない表情で首を傾げながら続く。

「 考えてみれば不思議ですよねぇ……どうして、あの人が花蓮(カレン)様の側近になってるんだろう? ――― 山兎恵(ヤマトエ)さんとか、南海沼(ミナミヌマ)さんとか……最近、(ハチス) 様の側近だった皆さんのお姿を見ないけど、どこに行かれたのかしら? ……て言うか、あたし 目が悪いから 見えてないだけで居たら ゴメンなんだけど。」

「 そう言えば、あたしの前に医院長だった角田螺(カクタニシ)先生はどこ行ったか知ってる? ――― いろいろ確認したい事があるんだけど、お見えにならなくて困ってんのよ。 」

「 ……知らなぁい! 」

姫鷹(ヒメダカ)の問いに、葵目(アオメ)東天光(トウテンコウ)は声を揃えて首を横に振った。
角田螺(カクタニシ) 前医院長は何時(いつ)の間にかいなくなった・・・ ――― それが医院にいる三名の共通認識だった。

白夜(ハクヤ)蒼狼(せいろう)は、宮廷入りした時に山兎恵(ヤマトエ)南海沼(ミナミヌマ)などに対面しており、それっきり全員を見かけない事に 其々(それぞれ)気付いては居たが、()れが普通の事なのだろうと思っていた。

東雲(シノノメ)も、(ハチス) 先王の葬儀式の時に山兎恵(ヤマトエ)南海沼(ミナミヌマ)の二人に会っているが、七日後の法要の時は両者共 顔を出さなかった事を医院(この場)に居る全員に語り始める。



「 辞めるわけ無いしねぇ…? 」と、恥ずかしさから開き直りつつある葵目(アオメ)が呟くと、東天光(トウテンコウ)も自身の視力のせいかもと前置きしながら「 葬儀式から一回も見てない気がするなぁー… 」と首を傾げた。


「 ……他に見かけない人いる? 」


姫鷹(ヒメダカ)の問いに、葵目(アオメ)東天光(トウテンコウ)が 宮中で最近見かけなくなった人物達の名を挙げて行くと、()の人数は多く ――― (ハチス) 先王の近くに居た者達と、女王になる前の花蓮(カレン)に仕えていたと噂される人物ばかりが姿を消していた。

「 なんか、それ不気味だな…… 」蒼狼(せいろう)は 思わず(しか)めた顔で呟く。

「 まあ、宮中は広いから 会わなくてもおかしくは無いんだけどさ…… 」東天光(トウテンコウ)も蒼褪めた表情で蒼狼に続いた。

(ウチ)には来ていない(はず)だから、生きてはいますよ。たぶん……。(ところ)で、先生方、俺 こないだ宮中に大量の鏡が運び込まれるのを見たんですけど…――― 」

東雲(シノノメ)秋陽(しゅうよう)白夜(ハクヤ)に話した鏡と呪術の関係について医院の三名や蒼狼(せいろう)に話し始めると、蒼狼(せいろう)は、ややこしい話に巻き込まれてしまったな・・・と、白夜(ハクヤ)睡蓮(スイレン)に付いて来た事を 少し後悔し始めていた。



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