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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第二章『 蓮の糸 』

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「 東雲と白夜 」

 

「 え…? 睡蓮(スイレン)からの手紙!? ――― なんだろ? 」

白夜(ハクヤ)東雲(シノノメ)の家で彼に手紙を渡すと、東雲(シノノメ)が手紙を読む様子を面白く無さそうな表情で見守った。


『 ――― 東雲さんへ

風が心地よい日が続いておりますが、お変わりなくお過ごしでしょうか?
東雲さんのお姿を心に思い浮かべるにつき、いつもお元気でいらっしゃいますようお祈りいたしております。

先日は、沢山のお飲み物をご恵贈いただきまして心よりお礼申し上げます。
皆様と一緒に美味しくいただいております。
私も 早速、六種類ほど いただきましたが 枇杷の味が大変気に入っております。

お話は変わりますが、初めてお会いした時に私に見覚えがあると仰られていた事を覚えていらっしゃいますでしょうか?
次にお会いできる時で結構ですので、詳しいお話をお聞きしたく思っております。

それでは、くれぐれもご自愛をお祈り申し上げます。
またお会いできます日を楽しみにしております。  ――― 睡蓮 』



「 何て? ――― 返事伝えとくから 」
白夜(ハクヤ)は急かす様に東雲(シノノメ)に聞いたのだが、東雲(シノノメ)は内容よりも睡蓮(スイレン)の字に心を打たれており、暫くの間 手紙を持ったまま感動していた。

睡蓮(スイレン)の字、すげぇー!! これ彼女が自分で書いたの!? 」

「 他に感想は無いのかよ!? 何て書いてあった? 」

「 ――― 枇杷(びわ)が好きだって? 」

「 なかなか危険な物を好むな、 睡蓮(スイレン)…… 」

「 いいんじゃない? 枇杷はどんな病気でも治すって言うじゃん! ――― (ところ)で、先生から黒い矢の話は聞いた? 」

「 呪術の話? ――― 相変わらず突拍子も無い事 言い出すよな…… 」

「 うん、まあ 俺も興味無い分野だから あんま良くわかんないんだけど ――― あと… 桔梗(ききょう)から宮殿に運ばれる鏡の話は聞いた? 」

「 いいや? 何それ? 」


東雲(シノノメ)は、桔梗(ききょう)と見た 沢山の鏡が運ばれていた話と呪術の話を織り交ぜながら白夜(ハクヤ)に伝えたのだが ――― 白夜(ハクヤ)東雲(シノノメ)の語る絵空事(えそらごと)の様な話に余り関心が無く、話半分で聞き続けていた。

「 ただの飾りじゃない? 花蓮(カレン)様も女の子だし…――― 桔梗(ききょう)睡蓮(スイレン)も鏡ばかり見てるよ?日葵(ひまり)も沢山持ってたろ? ――― そう言えば、武官が使う稽古場にも 此間(こないだ) 設置されたけど、剣の構え方とか確認出来て便利だよ? 」

「 そうなのかなー…でも、時々 説明がつかない不思議な事ってあるじゃん? ――― お前の所は診療所やってるから解るだろ……? 」

「 ……う~ん、まぁ 無くは無いけど 」

" 死者が幽体になる " と云う伝承だけは、白夜(ハクヤ)も否定しきれなかった ――― 。
二人は()(まま)会話の脱線を繰り返し、次第に話は桔梗(ききょう)睡蓮(スイレン)の話に変わって行く ――― 。


「 何それ? お前がちゃんと 睡蓮(スイレン)桔梗(ききょう)が好きだって言えば良いだけの話じゃん? 」

「 そうだけど、良心が痛むと言うか……。 」

「 まあ、この国的には最低最悪な奴だよね? ――― 人助けって言っても、色々仕出かしたようなもんだし。」

「 ………否定は出来ない。 」

「 でも、 睡蓮(スイレン)はリエン国生まれじゃ無いかもしれないじゃん? 」

「 手紙を見ただろ!? ――― 誰も教えてないのに、あんなに綺麗な字でスラスラとリエン国の文字を書くんだぞ? この国の人間だろ…… 」

「 でも、あの娘 この国の事を覚えて無いみたいだし ――― そこんとこ、そんなに(こだわ)って無いんじゃないかなぁ? 」

「 確かに、そういう所はある……。 」

「 とにかく、 睡蓮(スイレン)に ちゃんと言え! 言わないから桔梗(ききょう)も不安に思うんだよ。 ――― 記憶を取り戻す手伝いをする事で手打ちにしたんだろ!? 桔梗(ききょう)と違って、 睡蓮(スイレン)はお前に気があるわけじゃ無いんだし 喜ぶかもしれないよ? 」

「 お前にそう言われると、なんか ムカつく…… 」

「 なんで? 」


()の後 ――― 白夜(ハクヤ)が帰った後に、独りになった東雲(シノノメ)睡蓮(スイレン)何処(どこ)で会ったのか思い出そうと自身の記憶を(さかのぼ)ってみたのだが、全く思い出せずに居た。

睡蓮(スイレン)は 結構 可愛いし、歳の割に落ち着いているし……忘れるほうが難しそうなんだけどな……? ――― もしかして、会話はしていないのかな? でも、どこで見た……!? )


―――――― 考え込んでいると、もうひとつの手紙が彼の目に映り込んだ。


「 あ! 先生からも貰ってたんだっけ! 」

秋陽(しゅうよう)からも手紙を貰っていた事を思い出し、手に取って紙を開くと、東雲(シノノメ)泥沼の現場(・・・・・)を見逃した事を深く後悔した。
白夜(あいつ)、この事 隠してやがったな……――― どおりで桔梗(ききょう)睡蓮(スイレン)の話になるわけだ! )


『 ―――…と言う訳で 東雲、白夜が世話をかけてすまないが 桔梗の様子を見てやってくれ。
儂も あの娘の悲しそうな顔は見たくないんじゃ……、この事は日葵達にも伝えてある。
睡蓮は気づいていないようじゃが、もしもの時はこちらで何とかするから桔梗の方は頼んだぞ? ――― 秋陽 』


( 後で、桔梗(ききょう)の様子を見に行ってみるか…… )

東雲(シノノメ)は、二人から貰った手紙を小物を入れる箱に大事に仕舞うと、睡蓮(スイレン)何処(どこ)で会ってるのかを考えながら仕事に戻って行った ――― 。


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