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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

序章

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「 蓮の国の姫君 」( 三 )



息絶えた父王の姿を見た瞬間から、花蓮(カレン)姫の心の中は
言葉では言い表せないような 様々な感情が渦巻いていた。


父の代わりを務め、父をきちんと見送るという使命感から
泣く事もできず、(ハチス)王の葬儀が終わるまでは 冷静そのものだった。


(しか)し、全てが終わって、自分の部屋に一人きりになると涙が溢れて止まらなくなってしまったのだ。


考えなければ成らない事が 山積みなのは(わか)っていたが何も考える事ができなかった。


”もう二度と 母にも父にも会えない ”


彼女の頭の中にあるのは、その事だけだった。



できる事ならば、今直(います)ぐにでも 父と母がいる場所に自分も逝きたかった。
この宮殿は高台にあり、真下には海もあるため、どこからか飛び降りれば
屹度(きっと)、全ての想いから解放されるだろう。


だが、そのような方法では父と母に会える(はず)が無い事も解っているし
そんな事をする(ため)に自分は生まれて来たのでは無い。
自分にはリエン国の(ため)に生きる義務があると自分の心に言い聞かせた。


一頻(ひとしき)り泣いて、なんとか自分の心を落ち着かせようとしていた その時、
部屋の外から音がした ―――― 。


()れは、()ぐ近く・・・寝室(へや)の扉の()ぐ向こうから聞こえたので
泣きながらも、気にならずには居られなかった。



全ての リエン王家の人間の部屋に共通する造りなのだが、
()ず、部屋への通路の入り口となる場所に門番のような見張りが立っていて、
その見張りが許可した者しか先に進むことはできない。


基本的に通過できるのは、部屋の持ち主と 持ち主の一親等と従者であり
あとは、全ての部屋に入室できる国王くらいだ。


()の入り口から 少し歩くと一つ目の扉が現れる。


一つ目の扉は花蓮(カレン)が不在の時や、就寝時は鍵が閉まっていて
外から扉を開けられる鍵を持つのは、花蓮(カレン)本人と
親である王と王妃、身の回りの世話をする女官長の四名だけである。


()の扉を開けると、少し離れた所に 二つ目の扉が()
()の二つ目の扉の向こうに、ようやく椅子や本棚など置かれた部屋と呼べるような場所が現れる。


―――― その部屋の中にある右側の扉が、今 花蓮(カレン)姫がいる寝室へ通じる扉である。



以上の理由から、寝室の横の部屋まで誰か来られるとするなら
それは 父、母、 世話係である女官の蓮葉(ハスハ)の三名しか あり得ない。


現実的に考えれば、蓮葉(ハスハ)が来たのだろうが
彼女が こんな夜更けに入って来るのは珍しい事だった。


国や宮中で何かあったのだろうか・・・?
自分に上手く対処できるだろうかと緊張も走る。
蓮葉(ハスハ)に泣き顔は見せられないので、花蓮(カレン)姫は急いで涙を(ぬぐ)った。


(しか)し、一向に蓮葉(ハスハ)が自分を起こす気配も無ければ、先程の物音以外は何の音も聞こえてこない。


違和感を感じ始めた花蓮(カレン)姫は、少し不安に思いながら蓮葉(ハスハ)の名前を呼んでみた。

「 ……蓮葉(ハスハ)? 」


――― 返事は無い。



音は間違いなく隣の部屋からだったので、花蓮(カレン)姫は 音の正体を突き止めるべく
寝台から立ち上がり、恐る恐る 自分が今いる寝室の扉を開いた。

昔、死者が幽体になって会いに来るという伝承を聞いた事があったので
もしかしたら、父か母ではないかと(あわ) い期待も(いだ)きながら・・・――― 。






――――― 扉を開けると、そこには 顔を隠すように黒い布を(まと)っている者が二人立っていた。


月明かりだけで暗く、花蓮(カレン)姫からは二人の顔は良く見えなかったが
二人組は花蓮姫を見るなり、ニヤリと妖しい笑みを浮かべた。
 
 
 
 
 
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