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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第一章 『 一蓮托生 』

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「 睡蓮と白夜 」



身体の傷は痛むが、睡蓮(スイレン)は 最初に診療所で目覚めた時よりも自分の頭の中がハッキリとしている事を感じていた ――― 。

相変わらず、自分の過去については何も思い出せずにいたが
代わりに、リエン国の事や 目覚めてから出会った人達の事など新しい事を覚え、
何かひとつの物事や ひとりの人物について、深く考える事が出来る様になって来ていた。

何も覚えていない睡蓮(スイレン)にとって、今は他者の存在が自分自身を知るための鍵となっていた ―――――― 。



「 ――― あの、光昭(こうしょう)さん……本当にごめんなさい…!! 」

睡蓮(スイレン)は荷物運びから戻って来た光昭(こうしょう)の 包帯に包まれまくった手を見て絶句すると、深々と頭を下げて謝罪した。

体を丸めた時に胸元の傷が痛んだが、自分以上に重症に見える光昭(こうしょう)は これ以上の痛みに違い無いと思い、痛みに耐えて頭を下げ続けた ――― 。

「 いや…お嬢さん、あなたのせいじゃ無いですよ!? 俺は務めを果たしただけですから…――― お嬢さんが無事で何よりですよ!! 」

「 で…でも…… 」

光昭(こうしょう)(にこ)やかに そう言ってくれたが、睡蓮(スイレン)は再び 光昭(こうしょう)の手を見ると涙目になった。
思わず、包帯で包まれた光昭(こうしょう)の手の上に 自分の両手をそっと添える ――― 。

「 あの…治るまでの間は、私 何でも手伝いますので!! 」

「 ありがとう、お嬢さん……! そりゃあ助かるよ! 」


――― 二人が和やかな雰囲気で微笑み合っている様子を、少し離れた所から白夜(ハクヤ)偶々(たまたま) 目にしていた。
光昭(こうしょう)より先に、自分の所に 睡蓮(スイレン)はお礼を言いに来てくれたのだが
現在、目にしてる様な盛り上がりは無かったので、何となく 二人を見ていて面白くは無かったのだが
( いやいや、待て待て……! 俺には 桔梗(ききょう)がいるんだから それで良いんだよ!? )と、心を落ち着かせつつ ――― 腕を組んで、海で睡蓮(スイレン)を助けた時の話を どんな風に彼女に伝えようかと頭を悩ませながら その場を後にした ――― 。


()白夜(ハクヤ)の後ろ姿に気づいた睡蓮(スイレン)は、姿が見えなくなるまで彼の背中を見つめていた ――― 。

白夜(ハクヤ)は二度も自分を助けたと皆は言うが、助けられた時の記憶が無い睡蓮(スイレン)には出会った人達の中で、白夜(ハクヤ)の事が一番 遠く ――― 知らない人物の様にも思えていた。


それでも、白夜(ハクヤ)が教えてくれた (はす)睡蓮(すいれん) の話は 今でも 強く心に残っていて
今となっては皆が呼んでくれる " 睡蓮(スイレン) " という名前を付けてくれたのも白夜(ハクヤ)なので、睡蓮(スイレン)は、他の誰とも違う ――― 何か特別な想いを白夜(ハクヤ)に感じていた。


白夜(ハクヤ)さんは 普段は どんな方なのかしら……? )




()が沈み、空が黒く染まって行く中、睡蓮(スイレン)秋陽(しゅうよう)白夜(ハクヤ) ――― 光昭(こうしょう)の三名と夕食を囲む事になった。
本来は、診療所の患者への食事は病室に運ばれるのだが、睡蓮(スイレン)光昭(こうしょう)は全く知らない仲では無いと()う事で廊下ひとつで繋がっている秋陽(しゅうよう)白夜(ハクヤ)の家屋に呼ばれたのだ。


「 え!? これ…白夜(ハクヤ)さんが作られたのですか!? 」

睡蓮(スイレン)は、天板の上に並べられた料理を白夜(ハクヤ)が作ったと聞き、元々 大きめの瞳を 更に大きく見開いた。
「 お前、剣士なのに料理人なのか!? 」と、白夜(ハクヤ)の意外な一面に光昭(こうしょう)も素直に感心する。

日葵ひまりにも手伝ってもらったけどね。 」

「 すごいです…! 」

海に囲まれているリエン国では魚介類が豊富なので、白夜(ハクヤ)が作った物も魚料理が中心となっていたが
自身と光昭(こうしょう)に合わせて作ってあり、(さら)日葵(ひまり)も自身が食べる量を基準として調理しているので矢鱈(やたら)と量が多い。
睡蓮(スイレン)の席には、胸が痛んでも食べやすそうな 優しめのあっさりとした料理も置かれていた ――― 。


(わし)に似て、白夜(ハクヤ)は料理上手じゃからな! 」 ――― と、秋陽(しゅうよう)白夜(ハクヤ)の料理に瞳を輝かせた睡蓮(スイレン)光昭(こうしょう)に得意気に言ったのだが
「 母さんが死んで、父さんが下手過ぎるから上手くなったんだよ…… 」と、彼の息子のほうは 独り言の様に呟いた。

「 おのれ! 東雲(シノノメ)に続きお前までっ ――― !! 」


「 ――― 御馳走さん!! ああ うまかった! それじゃあ、自分は失礼する! 」
行儀作法など気にしない光昭(こうしょう)が食べ終わるのは早く、あっという間に平らげて 椅子から立ち上がった。

「 お主、片手なのに もう食べ終わったのか…!? 」

「 あ!光昭(こうしょう)さん、お皿なら私が片付けますよ…!? 」

「 いやいや、これくらいなら大丈夫だよ お嬢さん 」

光昭(こうしょう)睡蓮(スイレン)に笑顔を向けると、自分で水屋(台所)へ皿を運び、診療所のほうへ帰って行った。
誰も彼の心の中に気づいていなかったが、光昭(こうしょう)桔梗(ききょう)の件で あまり白夜(ハクヤ)と一緒の空間にいたくないのだ。



「 ―――…睡蓮(スイレン)、あいつと仲良いね? いつの間に仲良くなったの? 」

真向いに座っている白夜(ハクヤ)に話しかけられ、睡蓮(スイレン)は少し緊張して 「 え…? そうでしょうか? ――― 光昭(こうしょう)さんとは こないだお会いしたばかりですよ?」と、微笑みながらも 彼から目を逸らした。
白夜(ハクヤ)の事は ()(まで) 後ろ姿ばかり見て来たせいか、顔を向かい合わせるのには まだ慣れずにいる。

睡蓮(スイレン)が 何となく余所余所(よそよそ)しい態度で答えたのを白夜(ハクヤ)秋陽(しゅうよう)も感じ取っていた。
睡蓮(スイレン)は、誰に対しても丁寧な言葉遣いで 余り自分から積極的に話す性質では無いと
秋陽(しゅうよう)白夜(ハクヤ)(わか)ってはいたが
騒がしい光昭(こうしょう)がいなくなったので、余計に部屋の中の静けさが際立っていた ――― 。


東雲(シノノメ)とも仲良しじゃぞ? のう、睡蓮(スイレン)

秋陽(しゅうよう)は、白夜(ハクヤ)()しかけるように会話を切り出した。
桔梗(ききょう)の事も娘の様に思ってはいるが、今後の事を踏まえて息子の嫁候補の睡蓮(スイレン)白夜(ハクヤ)の仲が 今一つなのも どうにかしたいと彼は考えている。

肝心の白夜は、東雲の名を聞いた睡蓮が満面の笑みを見せたので呆気に取られていた ――― 。


「 はい…!東雲(シノノメ)さんには とても良くして頂きました!またお会いしたいです… ――― ! 」

「 そうじゃな、東雲(シノノメ)もお主の事を心配しておったぞ?
  お主の隣にいながら、矢を食い止められなかった事を悔やんでおった。 」

「 そんな…! 東雲(シノノメ)さんのせいでは無いのに…――― ! 」


「 ――― て言うか、自分も仲良いよね……? 父さん 」


桔梗(ききょう)を裏切るつもりは全く無いが、自分が " 睡蓮(スイレン) " と名付けた女の子が
何時(いつ)の間にか 自分以外の男達と自分よりも親しくなっている事については
何だか、縄張りを荒らされてるような気分がして 白夜(ハクヤ)(こころよ)く思ってはいなかった。
彼自身は気付いていない様子だが、秋陽(しゅうよう)は計画的に ――― 睡蓮(スイレン)は図らずも 白夜(ハクヤ)の独占欲を刺激したのである。

()れが原因なのかは不明ではあるが、彼は 避け続けていた話を あっさりとした様子で睡蓮(スイレン)に切り出した ――― 。

睡蓮(スイレン)、俺が話したい事があるって言ってたの覚えてる? 」

「 はい…! 覚えています。 」

「 うん、じゃあ 食べ終わったら ちょっと二人で話せるかな? 」

「 ? ――― はい…… 」


空気を読んだ秋陽(しゅうよう)が食事の後片付けに名乗り出たので
白夜(ハクヤ)睡蓮(スイレン)を連れて、邪魔が入りにくそうな静かな場所を探した ――― 。

最初は、夜空に白く輝く月でも見ながら・・・・と思っていたのだが
情緒のある場所に他の女の子と居るのは桔梗(ききょう)を悲しませる様な気がして、
結局、現在 睡蓮(スイレン)の部屋となってしまっている病室の中で二名は話をする事にした。


「 ……早速だけど、睡蓮(スイレン) ――― 落ち着いて聞いて欲しい。 」

「 ? 」

角燈(ランタン)の中の蝋燭(ろうそく)に火を(とも)し、部屋の扉を閉めると白夜(ハクヤ)は海で睡蓮(スイレン)を見つけた時の話を始めた ―――――― 。

 
 
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