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水鏡に咲く白き花 作者:水城ゆま

第一章 『 一蓮托生 』

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「 " 藍玉 " 」


花蓮(カレン)女王の即位式こと " お披露目式 " は雨をもって終了と成り、女王は王宮へと帰還した。

彼女が風邪など引いてしまわない様に、女官(にょかん) 達が大急ぎで湯殿(ゆどの)に入れて着替えの準備を整える。
女官達に(ころも)を脱がされた花蓮(カレン)女王は、身体の隅々を洗われている中で
初めて宮殿の外に出た事よりも、自分の事を王に相応(ふさわ)しく無いと言い放った
あの 橙色(だいだいいろ)の髪の女の事ばかり考えていた ――― 。
あの少年が 義兄か義弟に当たるのなら、自分は一体どうすれば良いのかと頭を悩ませずにはいられない。


晦冥(カイメイ)は…? 彼はどこにいるの!? これが終わったら彼に会える?」

「 ええ、花蓮(カレン)様。 晦冥(カイメイ)様は 後程(のちほど)花蓮(カレン)様のお部屋へ(うかが)われるそうですよ。 」

晦冥(カイメイ)に会えると聞き、花蓮(カレン)は 湯船の温かさで赤く染まった頬を、更に赤く染まらせて花の様な笑顔を浮かべた。



色々と騒動が重なり、雨で途中終了した今回の即位式(そくいしき)は、本来ならば " 吉凶の前触れ " 等と言われてしまいそうな所なのだが
女王を外に出したく無かった臣下達にとっては、()の方が都合が良く、
(しか)も、ひょっとすれば 王位継承者が もう一人 帰って来たと云う(よろこ)ばしい結果で終わったので
宮中(きゅうちゅう)の誰も 即位式が失敗などとは思っていなかった。

強いて言うなら、花蓮(カレン)女王に もう少し 女王らしく振舞って欲しいと誰もが考えていたが
やがて、大人の女性になって行けば解決する問題だろうと 余り気に留めてもいなかった。




宮廷に戻った晦冥(カイメイ)は、雨で濡れた身体を自分専用の浴室で優雅に洗い温め
新しい衣服に身を包むと、少し急いだ様な様子で (ある)部屋へと足を運んだ ――― 。

()の部屋は何も無い殺風景な広間で、武器を手にした 四名の 若く(うるわ)しい 男の武官(ぶかん)達に見張られながら
(ハチス) 王 の 側室(そくしつ)と名乗った 橙色(だいだいいろ)の髪の中年女性と、()の息子と云う (ハチス) 先王の子息と云われている少年が立たされていた。



「 御苦労様でした ――― 君達はもう下がると良い。 」

「 はっ!晦冥(カイメイ)様 」
 
四名の若い武官達は、声と足並みを綺麗に揃えて広間から姿を消して行った ――――――。


「 ふん……あんたか! 随分(ずいぶん)とあたし達を待たせてくれたもんだね! 」

女は苛立(いらだ)ちを隠せない様子で晦冥(カイメイ)を睨みつけたが
少年のほうは、相変わらず 不安そうな瞳で晦冥(カイメイ)の姿を見つめていた。


「 それで?あたしらの部屋の用意はできたのかい?
  まさか、この何も無い部屋で寝泊まりしろって言うんじゃないだろうね!? 」


「 とんでもない……! きちんと用意してありますよ?


 ―――――― () () () () 少年(・・) () () () 。」


晦冥(カイメイ)が言葉を発したのと同時に、橙色(だいだいいろ)の髪の女性に黒煙を放つ複数の黒い矢が雨のように降り注ぎ、瞬く間に彼女の全身に突き刺さった ―――

「 ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!? 」

女が断末魔の叫びを上げ、忽ち倒れ込み 血で赤く染まりながら全身を細かく引く()かせるのを見て、
女の隣にいた少年は、衝撃のあまり床に腰を付いて、震えて後退りしながら息絶えて行く女の気道の音を聞いていた ――― 。


貴女方(あなたがた)は、(ハチス) が 遺言状を残していた事を御存じ無かった様ですね…?
  彼は自分の愛する女性と子供の名を書き忘れるような馬鹿ではありません。
  ――― つまり、例え 貴女方が本当に情婦と息子であったとしても、
  (ハチス)にとっては 『 不要な存在 』 でしか無かったと言う事ですよ?」

女の鼓動は既に止まっているのだが、晦冥(カイメイ)は少し声を荒げて語りながら()の女 ――― 先程まで女だった()の存在に優しく微笑み、彼女の頭を 自身の片足で踏み付けにした。
そんな物(・・・・)を 我々が 温かく王宮に入れるとお思いですか?
  貴女は、()の髪の色の様に 随分と御目出度い方の様だ。 」

女が絶命したのを確認すると、晦冥(カイメイ)はゆっくりと少年のほうに顔を向け
「 すみませんね ――― 今日は少し苛々しておりましたので……彼女の事を 何時(いつ)もより 早く殺してしまいました。 」と、何事も無かった様子で乱れた髪と衣類を整える。

「 あ…あの…僕はっ!! ――― そ…その人に言われただけで……!!
  違うんです!! すみません!!本当にすみませんっ!! 」

矢が何処(どこ)から如何(どう)やって飛んで来たのかは(わか)らなかったが
少年は自分も晦冥(カイメイ)に殺されると思い、身を庇うような姿勢で必死になって叫んだ。
()の様子を見た晦冥(カイメイ)は優しく微笑むと、少年のほうに近づき彼の頬に手を当てた。

「ひっ…――― !!」

「 大丈夫、ちゃんと解っていますよ…? 彼女と違って君は正直な子ですね。――― だから、私の " 特別 " に してあげますよ。 」と、告げながら晦冥(カイメイ)は少年の頬や髪を 優しく撫で回した。
最初から 女の話など信用しておらず、自分好みの顔をした少年の事が手許に欲しくて王宮に連れて来させたのだ。

女への態度から一変した晦冥(カイメイ)の優し気な様子に少年は半信半疑だったが
命が助かりそうな気配から、()の場は黙って従い、成り行きに任せる事にして彼に頷いた。


「 君の名前は " 藍玉(らんぎょく) " にしましょう ――― 良いですね?藍玉(らんぎょく)
  私の事は 『 晦冥(カイメイ) 様 』と呼びなさい。」

「 はい…! ――― わ…わかりました。晦冥(カイメイ)様 」


藍玉(らんぎょく)の返事を聞くと、晦冥(カイメイ)は最初に部屋にいた四名の武官達を呼び
其の内の二名に 藍玉(らんぎょく)の世話を(まか)せ、残った二名は橙色(だいだいいろ)の髪の女の処理を任せた。
女の処理を任された二名は、速やかに遺体を運び出して床に流れた血の掃除を始める。


()の女は 民衆の前で陛下に恥をかかせた罪深い女です。
  通常の手順など踏まず、そのまま海にでも捨てなさい。 」

「 はっ!そのように ――― 。 」

後の事を四名に任せ、晦冥(カイメイ)花蓮(カレン)女王の部屋へ向かった ―――――― 。
 
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