「DISTANCE」
夜の空を見上げながら 僕は頭の中で考える
空の大きさを 星の遠さを
あなたの姿を 手を伸ばせば届くあなたとの距離を
だけどそれを言葉に置き換えたとたん どうしてこんなに陳腐になってしまうのだろう
文字にしたとたん どうしてこんなに違う意味を持ってしまうのだろう
言葉はけっして純粋ではない 文字は不純ですらある
思いが思いのまま伝われば
きっとあなたは 僕の元から立ち去ってしまう――
「星よ」
星よ
太陽と比べてさえ 何百倍も大きなお前よ
だけど 僕の隣にいるひとのほうが よほど大きい
星よ
太陽と比べてさえ 何百倍もまぶしいお前よ
だけど 僕を見つめる瞳のほうが よほどまぶしい
星よ
太陽と比べてさえ 何百倍も熱いお前よ
だけど 僕の腕にふと触る 彼女の指のほうがよほど熱い
星よ
夜空に輝く星星よ
お前らを
僕らを
太陽を
すべてを内包する広大な宇宙よ
だけど 僕をそっと抱きしめる あなたの腕のほうがよほど広い
「ハグ」
しってる?
ぎゅってすると こころがとけあうんだよ
「レーザー」
Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation
放射の誘導放出による光の増幅
増幅された コヒーレントな光
僕の思いは 視神経を通じて 網膜で励起され
硝子体の中を往復しながら位相をそろえ 瞳孔からあふれ出る
増幅された コヒーレントな思い
それは君の思いと干渉すべく 君に向かって発射され 君の頬に当たって跳ね返る
って こっちみろよ!
「向こう側の少女」
画面の向こうに 少女がいる
真っ黒な肌の 痩せ細った少女
その大きな瞳は カメラを向けられたとまどいと わずかなおびえをはらみ
だけどその唇は 硬く しかし 少しだけ はにかみの形にほころんでいた
少女の名は…… 忘れた
彼女の背後に映る黄ばんだ壁 粗末な診療所の壁
貧困 十代半ば 売春 父親のいない赤ん坊
HIV陽性 そして 母子感染
生きるために身体を売り 病をうつされ
子を宿し 産み落とす
胎盤で へその緒でつながった 負の絆
それでもやっぱり 生きるために身体を売り
それが病を広げると解っていても身体を売り
それでもやっぱり 未来はなくて
無為な僕たちは なすべきことをなさぬまま
のんべんだらりと未来を過ごす
なのに…… 少女は硬く なのに ほほえんで
だけど 少女をみて流すあなたの涙が一番痛くて
僕はテレビを消した
「DISTANCE 2」
言葉は決して純粋ではない
文字は不純ですらある
色に色を重ねるほど 色は濁る
だから僕は 言葉を 文字を 重ねる
純粋な思いは 醜い
透明な心は 薄汚い
だから僕は 言葉をつむぐ
だから僕は 文字を書き連ねる
思いと心は言葉と文字でぐちゃくちゃにかき回されて
ほんのわずかな上澄みを残す
それだけが
僕とあなたの距離を縮める
(close)
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