◆ 演奏楽団と聖堂騎士団
闇夜に溶け込む2人の女がいた。
バーウィッチの郊外に打ち捨てられた廃れた礼拝堂。
そこが彼女たちの潜伏先だった。
朽ち果てた屋根に、穴の開いたレンガ壁。
雨漏りも必至でこれからの季節、温度管理も必要になってくる。それらは魔法の力を借りることで凌ぐことはできた。しかし、魔法という労力を使ってライフラインを繋ぐ現在の生活は、お世辞にも豊かとはいえない。
「アリサ、もう少しの辛抱よ」
「もう少し、なの……?」
アリサと呼ばれた少女は今年で16歳となる。クリっとした大きな瞳にあどけない顔立ちは年齢以上に幼く見えるが、早熟という獣人族の特徴から身体の方は既に成熟していた。そのスタイルの良い肢体や膨れ上がった双丘は大人の女を感じさせる。頭部の2本の巻き角もまるで房を作るように太く蜷局を巻いていた。
グレイスはアリサの身体をを背中から抱きしめ、その房を優しく撫でた。
グレイス・グレイソン。
旧"光の雫演奏楽団"の団長、そして楽団内ではフルートを担当していた。しばらく貧しい暮らしが続いていた彼女だが、街を歩けば誰もが熱烈な視線を投げそうな程、その美貌は相変わらずだった。
「貴方なら大丈夫。うまくいけば貴族になって裕福に暮らしていけるわ」
彼女は戦争被害者だ。
もう二十年ほど前の話だ。祖国が敗戦し、両親も失った。
野盗に捕獲され、度重なる人身売買の果てに流れ着いた先は奴隷商の飼い小屋だった。
彼女にとって幸運だったのは、その奴隷商が業界の中でも非道を極めた人物だったことだ。金回りが良くなれば必然的に排除の対象となる。ある同業者に雇われた暗殺者がその奴隷商を抹消し、彼女は解放された。
しかし、彼女が帰る先は既に亡国と化している。行く宛てのない彼女はその暗殺者に拾われ、村集落で殺人を仕込まれることになったのである。
彼女自身、殺人鬼になることは不本意なことだった。
―――だが、人殺しをしないと生きていけない世界。
彼女は殺しの技術を覚えて、暗殺、抹消、窃盗、誘拐、そういった諸々の罪を重ねた。その都度、そういった悪事の一つ一つが嫌いになり、それを犯す自分自身のことも嫌いになった。
"破滅のグレイス"―――いつしか同郷のアサシンからはそう呼ばれるようになった。彼女は殺しが上達すればするほど、慙愧に堪えかねた。
裏の世界には悪が溢れ返っている……。
彼女は戦争の被害者だ。
その彼女が思い描いた理想は、戦いのない平和な世界だ。
彼女はいつも通り仕事を終えた日の晩、夢で女神からの啓示を受けた。
争いのない世界はつくれる、と。
魔の女神であるケア・トゥル・デ・ダウからのその天啓に導かれ、グレイスは暗殺者集落から逃亡し、ある計画を実践した。虐殺、暴行、略奪―――そんな闇のない楽園を求めて、自分自身が最後の闇になれるように。
だが、その計画も全て破綻した。信頼しあった仲間もほとんど失った。残るのは目の前で寒さに震える、グレイスにとっての"か弱い女神"のみ。炎魔法の火力を高めて、暖を取った。愛くるしいアリサの体を優しく撫で続けて、彼女は今宵も思いを巡らせた。―――この子さえ幸せになれれば。
すべての子どもを救うことは出来ない。でもこうして寄り添うアリサ・ヘイルウッドだけでも、何に差し置いても世界で一番幸せにしようと心に誓った。
「グレイスちゃん……グレイスちゃんは?」
アリサは振り向き様にグレイスにそう問いかけた。
「え、私……?」
「グレイスちゃんも一緒じゃなきゃ嫌なの。グレイスちゃんが一番幸せになってほしいの」
もう三十路を控えたグレイスだが、ついぞ子どもなぞ作ることはなかった。だが、子を持つ母親とはこういう気持ちなのだろうと、アリサを見てそう思うのだった。
…
グレイスは寝かしつけたアリサを置いて、礼拝堂の廃墟から外へ出た。
煌々と照らされる虚ろな月明かりだけが、今では彼女に当るスポットライトだった。
鬱蒼と生い茂る森の奥へと入り、そこでふとフルートを構える。冬眠前の昆虫たちの演奏も遮り、お気に
入りの音色を奏で始めた。彼女にとってはこのフルートが唯一の鎮静剤だ。それを人知れず思う存分に吹き続けることで麻薬の作用にも似た多幸感に酔うことができ、それによって自我を保っている。
これもアリサと護衛の男とともに最近バーウィッチの楽器店で盗みを働き、新調したばかりだ。
チューニングも兼ねて、グレイスはわざと大きな音で吹き始めた。
―――……。
ふとした気配に、グレイスは演奏をやめ、その闇に問いかけた。
「………今日の収穫はどうかしら?」
「オルドリッジの家臣どもが忙しない。セレモニー奏者の募集も時期を早めるようだ」
「そう。ご苦労様」
淡泊な労いの言葉を入れると同時に、森の奥から黒衣の騎士が現れた。全身黒づくめの軽鎧を着込み、腰には黒い鞘柄の長刀。夜間での暗殺に特化した装備だ。
長く伸ばした艶のある黒髪。顔も線の細い輪郭は見て取れるが、黒い仮面に覆われた素顔は窺い知ることはできなかった。
「ガウェイン・アルバーティの方はどう?」
「……やれ、まだ成果はない」
「"潜入"は貴方の得意分野じゃなかったの?」
「善処している」
グレイスはこの男を遣えるだけ遣っていた。
もはやアリサの幸せ以外のことは眼中にない。この男が命令の果てに身を滅ぼそうとも知った話ではなかった。ましてやかつての演奏楽団崩壊の原因の一つになった男なのだから、酷使の果てに殺してやろうとさえ考えている。
「………」
「監視を続けてちょうだい」
「………」
返事をすることもなく、黒衣の騎士は闇に消えた。
彼はかつてグレイスとともに仕事をしていた誼だが、現在では彼女の闇魔法によって下僕となっている。彼自身に意志はなく、使い魔として使役されるだけの日々だ。
その懐柔は、精神をも汚染する洗脳だった。
以前の彼を知る人物が見れば、その変わり果てた人格に驚愕するに違いない。
◆
その1週間ほど前の話。
バーウィッチの裏路地に位置する集合住宅の一室。裏の人間のみぞ知る密会場だった。そこは窓さえ格子で覆われ、昼間だというのに薄暗い。
オージアス・スキルワードは、指定された面会場所で外の景色も堪能できないという事に気づき、厭そうな顔を浮かべていた。換気もしていないのか、部屋全体にカビ臭さが充満している。街の治安とここの密会場の出入り量は反比例する。だからこのカビ臭さや埃っぽさというものはバーウィッチの治安がある程度良好だということを示唆していた。
オージアスにとって治安の良さとは自分の景気の悪さでしかないことを痛感し、二重の意味で溜息が漏れるのであった。
しかも、彼はまた待たされている。
以前、魔術ギルドとの取引の時にもダリ・アモールの喫茶店で待たされた。
何故、聖堂騎士団トップである私が依頼者に待たされてばかりなのだと不満に思ったが、それほどまでに最近の自分自身は暇なのかもしれないと少し反省した。
年老いたものだ、とオージアスは自嘲する。
得意だった取引の勘も、最近は目の前の積まれた金に目が眩んで失敗続きだった。
おかげで聖堂騎士団の人員は徐々にその数を減らしている。一番最初は第五位階。そして今年は第四位階のコリン・ブリッグズ、第六位階のジョバンバッティスタと連絡がつかなくなってしまった。アザリーグラードの騒乱でその身を散らしたと考えているが、安否が不明なため、序列は空席が続いている。
聖堂騎士団とは即ち、メルペック教会の"戦力"だ。
人員の不足は不景気以上に痛手だった。
「なぁ、パウラ……私は最近どうも運に見放されたと思うのだが」
「さて、わたくしには分かり兼ねますわ」
聖堂騎士団第二位階のパウラ・マウラは上司の質問を冷たくあしらった。突如呼び出された彼女は不機嫌で仕方なかった。背中から生える大きな翼を羽ばたかせて、不快な空気が漂うこの部屋を少しでも換気しようと懸命だった。
それもそのはず、依頼主との面会にオージアスと同行するのは下っ端の仕事。だというのに遠路遥々、西の魔法大学からバーウィッチへと呼び出しを食らい、2週間の旅路の末にオージアスのお守をさせられているのだから、面白くないのは当然のことだった。
―――ギィ……。
部屋の古ぼけた玄関扉が軋みを上げた。
来訪者は2人。オージアスは依頼者との面会には同数で会うようにしている。物騒な世の中、取引が不成立となり、不満に思った依頼者が怒りに任せて殺し合いに発展するということも想定していた。
しかも、今回の依頼者は暗殺に特化した殺人鬼と知っては尚の事だ。
「オージアス」
前に立つのはグレイス・グレイソン。オージアスが彼女と会うのは楽園シアンズの子どもの養成事業で手を組んで以来だ。その背後には闇に溶けるように長身の男が佇んでいた。
その異様な殺気に、オージアスは一瞬怯んだ。だが、前を歩く女に貸しのあるオージアス・スキルワードは、立場上はこちらが優位だということを理解し、すぐに居直った。
その上司の威勢のアップダウンを眺め、部下のパウラ・マウラは呆れたように溜息をついた。
「グレイス、遅かったではないか」
「隠遁生活はいろいろと苦労が絶えないのよ」
「隠遁……? はっ、身を隠すだけの生活を隠遁とは呼ばん。逃亡生活の間違いだろう」
「……それもそうね」
グレイスは5年前と比べるとやつれていた。その美貌は未だに健在とはいえ、その苦労は様相に現われている。オージアスの挑発に対しても、昔だったら掴みかかってもいいぐらいだが、今ではその勢いすら失い、憔悴しきっている。
「それでだ。今さら私の下にのこのこ現れるということは、賠償の算段でも立ててきたというわけか?」
早速にも金の話を持ちかけるオージアス・スキルワード。
楽園ケアンズでの失敗は、主に楽団に原因がある。そもそもジャックという少年を楽団に引き込もうとした事も問題だったが、それ以上に命令を履き違えた楽団の一味によるソルテールの襲撃が大きな痛手であり、さらには隔離施設を離れてサン・アモレナ大聖堂まで巻き込んだ事によって、被害は大きくなった。
それもすべて光の雫演奏楽団の勝手によるものである。
「金は街1つ―――いえ、2つ牛耳ってから返すわ」
「街2つを牛耳るだと……? テロでも引き起こすつもりか?」
思いもよらない提案にオージアスも眉間に皺を寄せる。
「まさか。もう暴力なんて奮うつもりはないわ」
「じゃあ何をするというのだ」
「……うーん、ちょっと時間がかかるけど、本業に戻ろうと思うのよ」
「本業? 殺人鬼の本業とはまた物騒な話だな」
グレイスはその白くて細い腕を組んで、部屋の壁面に寄り掛かった。
「私の本業は演奏家よ。もう足は洗ったの」
「楽団を再開させるとでも? グレイスの名前では売れんぞ」
光の雫演奏楽団の悪事は街だけでなく、国中に知れ渡っている。その団長がグレイス・グレイソンというブロンドの女奏者だということも。
「イザイア・オルドリッジ」
「……なんだと?」
「その名前はもちろん知ってるわよね」
「知らぬものなどこの街に居らんだろう。ましてや聖典"アーカーシャの系譜"の発見者だ。私も実際に会ったことくらいある」
「オルドリッジはバーウィッチ周辺の町まで官公の手が届く侯爵位を持つ貴族だわ。密偵の調べによるとどうも魔法大学から帰ってきた息子に早くにもその実権を譲るらしいのよ」
グレイスの狙いは貴族オルドリッジの権力、そしてそれに付随する金であるということは理解できた。しかし、その方法をもったいぶって話さない彼女に苛立ちを覚えた。いまいち話が見えてこないオージアスは苛立ちで声を荒げる。
「だから何だと言うのだ! その息子にでも成り代わるつもりか?」
「息子には成り代われないけど、今度、お嫁さん探しも兼ねた祝典を開くそうなの」
「嫁探し? ……はっ、いくらお前でも行き遅れの年増なぞ相手にされるものか」
「あら、嬉しいこと言ってくれるのね。でも私じゃなくて私の娘の事よ」
「娘だと……?」
オージアスには不可解で仕方ない。暗殺者として古くから仕事の関わりがあったあのグレイスが、過去に妊娠出産を経験していたという話など聞いたことがない。
しかし仮に娘を使ったとしても無理な話だ。
「貴族は貴族同士で婚儀を交わすものだ。どこぞのじゃじゃ馬風情が、どう息子を誑かす?」
「それは"魔法の力"を使って」
グレイスの得意とする闇魔法――そこに相手を洗脳させる術もあるということは魔法に精通したオージアスも熟知している。
「ほう……なかなか現実味が帯びてきたな。それで、他の貴族連中を差し置いて息子に接触する方法は?」
「だから言ったじゃない。本業に戻るって」
「ううむ……?」
「式典には演奏家という"盛り上げ役"が必要だわ。奏者として屋敷に潜入し、隙を見つけて息子に接触、そして洗脳魔法をかける。どうかしら?」
オージアスは眉間に皺を寄せたまま何やら考え込んでいた。
年々決断が遅くなっていくその様は、彼自身の老いの表れだ。数年の歳月で街ごと牛耳れるとなら期待は大きい。しかし、もし実現させるのであれば、まだまだ詰めが甘いとも思える。
「策は理解した。しかし、貴族からの依頼ともすれば信頼のある団体に声がかかるぞ。さらにはお前たちには楽団としての人員も足りていなかろうが」
人員が足りていないという点は聖堂騎士団も同じだった。
「そこは貴方の力を貸してちょうだい。メルペック教会の墨でも付ければ信頼くらい軽いものでしょう。人員募集も教会の伝手でお願いするわ」
「おい、立場を弁えろ。お前が図々しく私に――――」
「負債の倍の額を返す、と言ったらどうかしら?」
オージアスは金に弱い。どのような依頼でも金さえ詰まれてしまえば簡単に意志が曲がってしまうのがオージアスの欠点だった。だがそれを本人が自覚しても尚、金には屈服してしまうのが守銭奴としての性である。
「それにダリ・アモールでは一時立場も危ぶまれたんだから、もう1つや2つくらい拠点があった方が貴方のためじゃない?」
「それは……お前たちがバーウィッチを牛耳ったら、その管理を我が騎士団に譲るという意味か?」
「監督役という名目でね」
オージアスはその提案に対してニヤリと不敵な笑みを浮かべた。それは承諾のサインだ。ちょうど力が落ちてきた聖堂騎士団だ。教会への寄金だけでは成り立たずに汚い仕事を繰り返してきた騎士団が、安定した税収でも得られるのなら安泰というもの。さらには各街から騎士団員の候補も選出できる。
一石二鳥だ。
「ちょっと待ちなさいな、オージアス」
そこに背後で傍聴を決めていたパウラ・マウラが口を挟んだ。
「なんだ、パウラ。文句があるのか?」
「文句はございませんよ。ただ、一つこちらからも交換条件を提示しなさいな。貴方それでも聖堂騎士団の大司祭なの? まったく、ボケ爺街道まっしぐらですわよ」
「な、なんだと―――」
「交換条件? それなら街の運営権利と税収で……」
話がまとまりつつあったオージアスとグレイスは2人してパウラに反感を覚えた。
「貴方もね、これでわたくしたちが手を貸しませんと言ったらどうするおつもり? 結局わたくしたち教会側の力にほぼ頼ってるわけじゃありませんこと? でしたら、こちらからもう少し条件を提示しても文句言われる筋合いございませんのよ」
「………んー、まぁそうね」
パウラは捲し立てた。彼女は日頃から魔法大学やエリンドロワ王都で面倒くさい重鎮を相手にしているため、交渉ごとには精通していた。
「じゃあ、その条件って何かしら? 目的を遂げるためなら多少の辛いことでも呑みこむわ」
「よろしくて? じゃあちょっとオージアスと相談させてもらいますから少しの間部屋から出てってくださる?」
「……わかったわよ」
パウラ・マウラは大きく黒い翼を動かしてグレイスを威圧した。パウラは鳥系統の獣人族だ。背中の翼で空も飛ぶことができるが、高いところで育った生い立ちによるものなのか、発言も高飛車なところがあった。
…
「なんだというのだ、パウラ。金と拠点、これだけあれば十分であろう」
グレイスと黒衣の騎士が出て行った後、オージアスとパウラは2人で話し合いを始めていた。オージアスは不満そうである。その様子は、上司が部下に見せる態度というよりも家族会議でも始めた弱い立場の父親のようでもあった。
「十分? ……まぁ、オージアス。貴方、年老いたものね。強欲のスキルワードの名が廃れますわよ」
「どういうことだ」
「今は完全にわたくしたちにアドバンテージがありますわ。ちょうどいい機会ですから、こちらで片付いてない教会の仕事を彼女たちに肩代わりさせるというのはどうかしら?」
「ほう。それは名案だ」
メルペック教会聖堂騎士団は、教会の労働力でもある。とりわけ教会のドルイド連中だけでは難しい戦闘や肉弾戦も必須な仕事には聖堂騎士団が駆り立てられるのは言うまでもない。
「確か、まだ封印指定の聖遺物の中でも、バーウィッチで野放しになっているものがありましたわよね」
「あぁ、遺物確保の仕事か」
この世には神々が遺した痕跡と称される聖遺物が存在する。人智を超えた力を持ったその遺物の数々の中には、あまりに危険すぎるが故に教会の判断で魔法によって封印を命じている物が存在していた。現在発見されている17個の聖遺物のうち、封印指定を受けている物は8個ある。
その遺物とは、以下の8つである。
・神の羅針盤<リゾーマタ・ボルガ>
・魔弓<エアリアル・ボルガ>
・聖典<アーカーシャの系譜>
・魔導書<黒のグリモワール>
・魔導書<白のグリモワール>
・怪基板<ティマイオス手稿>
・聖剣<リィール・ブリンガー>
・魔剣<ケア・スレイブ>
そのほとんどが未だに確保できずに野放しになっている。理由はヒト以上の上位存在が管理しているなどが挙げられるが、中にはヒト個人で占有していて非常に危険な状態にある聖遺物も存在している。
「そうですわね。彼女らが隠密仕事が得意なら、アルバーティの元へ送り付けましょう。あの男が魔法大学から持ち去った魔導書が何処かにありましょう」
聖堂騎士団第二位階パウラ・マウラが危惧しているのは、黒の魔導書の事だった。その所有者は、現在この街で親子仲良く学校を経営しているという話だ。日頃子どもばかりを相手にしていて気が緩んでいると、彼女は目星をつけていた。