挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。
<R15> 15歳未満の方は移動してください。

泥濘

早久良2

作者:いけちぃ
※前作の続きとなります。
精液をかけられるというおぞましい経験をした翌日、早久良は変わらず温室の世話のため学校へ赴いていた。
そこに自分以外の人間がいて、此処のセキュリティ大丈夫なのかと心配になる。
嫣然とする長い黒髪の美しい人。
あまりに母と瓜二つで愕然とする。
母は死んでなかったんだと喜びかけて、すぐ勘違いだと気付かされた。
「こんにちは」
鈴の音のような声。
母と似ていて、その込められた物の違いにゾッとした。
微笑しているのに、それを穏やかとは感じられない。
「私の息子がお世話になってるんですってね?」
「・・・・・・」
「ご迷惑じゃないかしら?あの子、大切に育てたから凄く我が儘でしょう?」
同じ空間にいるだけでどうしてこんなに緊張するのか。
知らず握っていた掌には汗。
何もかもが作り物めいていて本音を語っているのは瞳だけ。
敵意がハッキリ伝わって怯んでしまう。
「あの子を返して頂戴。ね?」
「・・・あの、」
「貴方、これ以上酷い目に遭いたくないでしょう?」
ゴクリと喉を鳴らしてしまったこと、相手は気付いただろう。
「それじゃあ」
隣を横切る際、クスッと漏らされた笑みと鼻に付いたまとわりつくようなきつい香り。
女性がいなくなってようやく抑えていた吐き気をさらけることが出来た。
ドッと溢れる冷や汗と、言いようのない恐怖心・不快感。
彼女が母の妹であり、万里の母親。
「・・・異常だよ・・・」
他に見付けられる言葉がない。
母親に虐げられ、精神にも肉体にも追い詰められてきた万里をどうして同情しないでいられるだろう。
とても追い出せない、突き放せない。
どうして、助けてやらないとと思ってしまうんだろう。



余計なことを考えすぎて温室の世話がいつもより遅くなってしまった。
挙げ句、夕食を作りに一度も戻っていない。
大仰にため息をついて自宅に戻った早久良は、リビングから漏れる灯りとテレビの音に万里の存在を認識した。
空腹でもあるし、とりあえず食事作りと真っ先にキッチンへ向かった。


着替えてから食事にしようと階段を上がり自室のドアを開けて目を疑った。
「上野っ」
ベッドに寄り掛かって眠る万里の腕からは血が滲んでいる。
もしベッドの上にいよう物なら叩き起こして殴っていた。
それに先程の事もあるし、印象的な瞳が閉じていても見惚れる綺麗な顔立ちを前に怒りも納まってしまう。
「・・・上野、起きろ。上野!」
肩を揺らせば微かに身動いで、一瞬後思い切りの力で振り払われた。
痛みより驚愕した。
同時に過ぎったのは恐ろしい女性の姿。
「げっ、わ、悪い!」
「・・・それは何に対して?」
「は?」
「は?じゃなく、無断で部屋にいる理由を知りたいんですけど」
「やっべ」
居る場所を忘れる辺り呆けている。
「今何時?」
「話逸らすより出てけ。それから、ご飯あるから」
部屋を追い出した早久良は、どうしてもちらつく存在にうんざりした。
これでは支障をきたす。
万里が振り払った相手は自分じゃない。
目を見開いて気まずそうにした事を気付かないふりで通したけれど、そうすることがあんなにも気疲れするとは思わなかった。
見ない、言わない、聞かない、これがこんなに大変だとは。


今日は晩飯も作っていなかったし帰宅は特に遅かった。
階段で呼び止められることもなくスムーズに早久良の自室へ忍べたのもその所為だ。
空腹は満たされたし、風呂に入ってご丁寧に包帯を変えてもくれてるわけだから、これでどう気付けってのか、逆にこっちが困る。
「今日叔母さんに会った」
唐突に呟いた早久良に衝撃以外何も感じない。
何でもないことのように言ってるが、そんなわけはない。
会ったと言うなら、その前から色々と調べられているはずだ。
思考がそう辿り着いて、やっと早久良の日常が害されてるのに気付く。
「・・・いつからだ?」
「・・・・・・」
「いつから嫌がらせ受けてたんだって聞いてんだよ!」
早久良にキレる必要はないのに、どうしても感情がコントロールできない。
アレが回りを彷徨いてるだけで全身を覆う不快感が溢れるんだ、目の前にいたら本気で殴りかねない。
これまでそうしなかったのが不思議なくらいに。
「上野」
落ち着き払った早久良。
それですぅっと頭が冷えた。
「今更話す気ないし、私は違う話がしたいんだけど」
「・・・話って?」
聞く耳はある。認識する程度に冷静にもなってる。
暴れ出しそうだった感情は不気味な事に静まっているから問題はない。
「耳は貸すけどそれだけ。首突っ込む気はサラサラ無い。前もそう言ったけど、今も気持ちは変わってない」
明らかに情緒不安定な万里に気付いてなお、早久良は言い切った。
「で?」
「踏まえた上で・・・上野の家庭の事情に首を突っ込むから」
「はあ?」
素っ頓狂な声。
万里らしい反応だけど、瞳に映る激情は少しも変化がない。
「叔母さんと対面して本当に気持ち悪かった」
「・・・・・・」
「軽々しく上野を受け入れて、かなり後悔した」
「お前ねぇ、普通、思っても言わないだろ」
「上辺取り繕っても意味無いし、辟易して上野が出てってくれるなら助かる」
「マジホント、結構堪えるんだけど」
百も承知。だからこそ、思ったことは全てさらけ出すべき相手だ。
自分が逃げ場にしている相手は、優しくないし自己防衛のために他人を弾き出せる人間だと認識してもらわないと困るから。
「上野はどうしたい?」
「どうって何が?アレ?つーか、殺しそうだから出てきたって言わなかったか?」
冗談のように言っていても、重みが以前とずっと違う。
万里のスタンスや想いは変わってないだろう。
叔母と対面して初めて現実を帯びた早久良の受け取りの問題だから。
「早久良のお陰でかなり理性繋がってるし、流石にマズイだろーからやんないだけ。第一、これ以上人生壊されるのゴメンだろ、かと言って実家出たら付け回されて。俺、結構家出したんだけど、アレが異常で周囲攻撃していられなくすんだよ。解ってたんだけど居心地良すぎて忘れてたわ」
潮時だと言いたげな万里の様子。
早久良は人の話を聞いていない事への呆れをそのまま溜息に変えてやった。
「首突っ込むって言ってるんだから、利用しようとか思えば?」
「何言って、」
「二度と目の前に現れない様にならしてやれる」
してやれるから、それからは独りで乗り越えてもらうしかない。
投げ出す非道さは解っているけど、実の母から異常な愛情を押し付けられてきた万里を。
浸透した闇を。
垣間見てしまったのだから、逃げ出す他はない。



今、目の前にいる生き物が喚き散らさないでいるのを初めて見る。
思えば、こうして家の外でコレを直視したことすら無い。
今更で良かった。
こんな距離があったなら、即、その場でコレを消していただろうから。
「万里、帰ってきてくれるんでしょう?」
呼び付けた=帰宅に結びつく辺り、コレは頭が可笑しい。
「俺さぁ、二度と帰るつもりないぜ?」
瞬間、目の色が変わった。
落ち着いた静かな喫茶店で到底似つかわしくない生物だろう。
「あの女に誑かされたのね」
「貴方には不釣り合いだわ」
「帰って来なさい。ね、私がいるんだから」
「万里、万里。寂しかったのよ、貴方がいなくて」
「刺したりしてゴメンなさいねぇ、二度としないわ。反省してるの」
「お願いよ、万里」
耳障りな声。
テーブルを挟んでいなければ擦り寄ってきただろう。
外でも中でも所詮、コレは変わらない。
「傍に居てくれるでしょう?」
伸びてくる指先が気色悪い。
存在を主張する声が鬱陶しい。
これ以上付き合いきれないと立ち上がった万里は、腕に縋り付く体温と嫌悪する香水の匂いに殺意を抱いた。
振り払えばカッとなったアレが半分と減っていないグラスの中身をぶちまけて振り翳してくる。
突き飛ばせば簡単に転げて、拍子に割れたグラスの先で頬を引っ掻いたらしい。
ああ、アレにも赤い血が流れてたのか。
もっとどす黒い、汚い何かかと思ってたけれど。
「嫌よっ、絶対、誰にも渡さない!」
ぶつぶつ喚く。
尋常じゃない様に店内にいた誰もが動揺している。
理性が切れる前に店を出たかった。
踵を返し背を向けた瞬間、響いた第三者からの悲鳴。
騒めきがこれまでとまた違う。
もし、床に滴っている血液がアレの物なら笑っていた。
割れたグラスが突き刺さっている手が、アレのなら最高に可笑しかった。
テメーの指を傷付けて使い物にならなくした程度で、俺をつなぎ止める気だったのかと嘲笑して捨ててやったのに。
なのに、どうして、アレの手を庇い、傷付いているのが早久良なのか。
「お  まえっ、何やってんだよ!!」
甲から突き刺さったグラスを手にしていたアレは、近付く俺に喜んだ。
でも、それすら目には入らない。
痛みで声も出ない早久良の手首を取り、目に見えるガラスの破片を抜いていく。
出血の酷さと滑りで焦れる内、見る間に異常な汗をかき青ざめていく早久良。
「何で庇う!放っておけば自滅しやがったのにっ、馬鹿か!!」
大体、どこから出てきたのか。
こんな事、予定にはなかった。
ふと気付いたときはアレが名前を連呼して喚き散らし、それを2人の男が連れ出していた。
早久良の側には焦りを隠せない男が応急処置に必死だった。
「病院に運びます、貴方は怪我ありませんね?」
「無い!俺も行くからっ」
それからすぐ病院に運ばれた早久良は緊急手術を受けた。


アレを呼び出して終わりだったはずだ。
後は、早久良が手配した精神科の医者がアレを引き取って隔離処置で済む話だった。
アレが半狂乱になるのは解っていたし、何を言われてもされても殺したりするなと早久良に言われたから耐えたのに、どうして結果がこうなる。
迷惑を被りたくないから首を突っ込むだけだと断言したくせに。
放っておけば済んだ物を。
アレが傷付いたところで痛くも痒くもないっていうのに。





早久良と万里が会ったのは夏休み終わりの始業式だった。
怪我の完治はしていないものの、ようやく退院できた翌日が学校だった早久良。
それまで手続きや何やらで振り回され見舞いにも行けず、挙げ句、恩は温室の世話をして返せと早久良からのメールで暇すら無かった万里。
やっと話が出来ると期待した万里にとって現実は苛立たしい物だったけれど。


「上野君!」
教室に入って真っ先に、早久良を映す視界を塞がれた。
「は?」
「も~、夏休みずっと連絡取れないから心配だったんだよ」
腕を取られ微かに甘い香りがして思い出す。
自分がつきあっていた女だと。
「あー、悪い、ちょっと立て込んでた」
「携帯も繋がらなかったし」
「壊れたんだよ」
「新しいのは?買ってないの?」
胸が押し当てられ不快が溢れる。
こんなにウザイ奴だったかと思案して、どうでも良くなってしまう。


二週間以上、花たちの様子を見ることも出来ずに不安だったのに、今朝温室を覗いてホッとした。
万里に頼んだとは言え、世話が出来るとは思っていなかったからあんなに元気でいてくれた事が嬉しかった。
今は一層、勇気付けられる。
あの日、万里に叔母を呼び出してもらうまでは計画通りだった。
暴れ出すことも事前に万里が教えてくれたから知人の医者は多めに人を連れてきてくれた。
父を通して頼んだことだから、こんなに早く片付いてくれたのは不幸中の幸い。
ただ、半狂乱になった叔母を目の当たりにして。
必死に感情を殺して背を向けた万里を見て、勝手に体が動いていたんだから仕方ない。
割れたグラスが凶器となって万里に向かうんだと思ったのに、どうしてか床に着いていた叔母の片手を自分の右手で覆っていた。
理由を聞かれても体が勝手にしたことだから説明できないけれど、右手の甲に突き刺さるグラスを見て、それから息が止まる激痛が駆け抜けて、やっと行動の把握をした。
叔母は何としてでも繋ぎ止めておきたかったから、傷を作ることで万里を雁字搦めにしようとした。
もしかしたら万里は意にも返さず、寧ろ望んでいたことだったかも知れない。
余計なことをして、とんでもない代償を食らって馬鹿を見た。
包帯でグルグル巻きの右手を眺め心底呆れ返るけど、あれ以上、万里に背負う物が出来てしまうのは・・・きっと辛い。
本人は否定して笑うだろうけど絶望は容易な事じゃない。

「ん?」
ホームルームが終わり各自解散ムード。
早久良は席を立つ気力がなくて窓の外を眺めていたから、校庭で大人数を引き連れて現れた人物にもすぐ気がついた。
男女入り交じって騒いでいる。
一際目立って存在主張していた男子生徒を無意識に目が追ってしまう。
遠目でハッキリはしない物の、綺麗な顔立ちで格好いいだろう事は分かる。
しかも男女ともにモテる人柄の良さなんだろう。
「・・・上野と正反対」
人から愛される存在。
きっと人を愛することも知っているんだろう。
歪んだ愛情を押し付けられてきた万里はそれすら嫌悪してるから救いようもない。
「ホント馬鹿」
早久良はいい加減帰ろうとイスを引き、鞄を持って初めて教室の異様さに気付いた。
男子は心なしかギスギスして、女子は浮き足立ち気味。
それより何より、もっと人が帰っていても良さそうなのに。
諸悪の根元がドア付近にいて、恋人である杉田が側に立っていた。
ああ、もう、逆のドアから出て行こう。
夏休み、万里が自宅に居候していたことも、起きた出来事も、特に杉田に知られたくない。
見ないことにして立ち上がった瞬間、万里の気配も動いた。
というより、帰ろうとした早久良に気付いたのだ。
「おい、こら、早久良!」
早足で逆のドアを目指していた早久良は、遠慮のない名指しでビクンと肩を揺らした。
一斉に視線が集まると、渋々振り向くしかない。
その際、一際強い杉田からの視線には愛想笑いも出来ない程で。
「普通無視しないだろ」
普通はする。確実に。
お願いだから杉田を押し退けてまでこちらに歩んで来ないで欲しい。
「手は?」
「そりゃこっちの台詞だろう。大丈夫なのかよ」
下手なことを言われる前に聞けば露骨に呆れられ、聞き返されて正直に言う気も無く肩を竦める。
「・・・神経イってんだろ?医者に聞いたぜ」
「あぁ、まあ、そうね」
「お前、質問の意味解ってんのか?」
「左手養成中。上野、花の世話ありがと、結構感謝した。だからもう良いし」
「は?」
何が?と続く前に万里の腕にするりと巻き付いた細く綺麗な指。
「上野君、遊びに行こう、いいでしょ?」
意識的に胸を押し付けた杉田が、チラリと早久良を見て牽制。
一気に居心地が悪くなり早々に退散するのが利口だと踏んだ。
これを言い訳にと口を開く寸前、万里からの恐ろしい一言。
「盛りのついた犬みてぇ」
これで凍り付かない人間が居たなら、相当図太い神経なんだろう。
唖然としていた杉田も怒りのあまり唇を震わしているから。
何故、この場に自分が居なきゃいけないのか。
万里は解放される前よりずっと症状が悪化してるんじゃないのか、不安が過ぎる。
でも、とりあえず解っているのは、今日を境に早久良は女子総勢を敵に回した。




女同士がこれほど陰険だったとは体験してみないと解らないもの。
一ヶ月くらいは授業どころじゃないほど酷くて、異変が教師の目につき出すと裏での呼び出しへと変更していった。
応じれば集団リンチ。
無視すれば待ち伏せリンチ。
結局されることが変わらないらしい。
日に日にエスカレートする虐めは、万里があからさまに親しくする事に比例していく。
もう、どうにもならない。
癒しは逃げ隠れできる温室と、最近特に目につくようになった男子の存在だった。



「・・・また彼女変わってる・・・」
教室へ戻る途中、決まって視界に映る。
大勢の仲間に囲まれて、中心には"高坂 建一"と寄り添い腕に抱き付いている彼女。
結構な早さでパートナーが入れ替わっている気がするけれど、万里のように蔑ろにしているわけではなさそう。
「早久良」
「・・・・・・」
「おい、こら、無視すんな」
止めていた足を進めたのは、万里が当たり前のように声を掛けてきたからだ。
傍らには見かけない女子。
雰囲気からして上級生だと解る。
それに自分をそこまで敵視はしてない。
落ち着いていて、それが美しさに拍車を掛けている、そんな大人っぽい綺麗な人だ。
それを平然と振り切ってこちらに駆けてくれば誰だって嫌だ。
こんな万里の所為で友人をなくした自分だからこそ優越を抱くことなく心底から迷惑だと思うんだろう。
「何見てたんだ?」
「・・・別に」
「ふーん?」
チラリと万里が先を窺う。
幸いは彼等が既にいないこと。
「香水は?」
「・・・・・・・・・」
今度は人の顔を覗き込んでくる。
至近距離にあっても万里は綺麗な顔立ちをしている。
それに母の面影を探してしまう。
「お前が言うから女作ってるだろ?約束守れよ」
「・・・意味解んないし」
いつ女を作れと言ったのか。
そもそも約束って何のことなのか。
大体、ことある事に人様の彼女を寝取って略奪した先から捨てていく行為のどこに愛があるのか。
問題は、彼女=香水となっている万里の認識状況にあるけれど。
それを今初めて知った早久良との行き違いもまた大いに問題だろうが。
「あぁ、今日、メシ用意しとけよ」
「何で?」
「食いに行くからに決まってんじゃん」
別に決まってない。
「香水も作れよ。いい加減出来ててもよくねぇか?」
「サヨナラ」
これ以上は会話にならない。
早久良は表情を凍り付かせて横をすり抜けると、言わぬ聞かぬを決め込んだ。
擦れ違い様に連れていた女子と目が合った気がした。
僅かでも嫉妬が読みとれると相手が誰であれ体が震えそうになる。
無意識に右手を触れてしまうのは、叔母と痛みを思い出してしまうから。
「美人だったなぁ」
是非、万里と上手くいって欲しいものだ。
そうすれば一々こんな風になってる自分に引け目を感じず、万里を気遣う必要もなくなるから。
というより、やっぱり関わるんじゃなかった。
今更だけど本当に遅すぎるけど後悔ばっかりしてる。
あの時、万里を見捨てても結局は酷く後悔したんだろうけど。
それがまた嫌なところだと早久良は溜息を吐いた。



既に万里が北方家へ訪れることは日常茶飯事と言えた。
裏庭や二階の窓から侵入されるのは腹立たしい。注意したところで聞く耳はない。
結局早久良が折れて合い鍵を渡す事で落ち着いたからだ。
行き来自由とは言え、それでもルールはある。
早久良の自室には絶対に入らないこと。
ただそれだけなのに、守られたことは少ない。
今日もまた、夕食を作り終え着替えのために自室を開いて苛立った。
「・・・上野・・・」
怒鳴るとこちらの体力を消耗するだけで意味はない。
何か投げてやろうと思いつつ、振り向いた万里が手にしている小瓶に気付いた。
「もらって良い?」
「・・・・・・」
室内にはバラの香が充満している。
匂いを確認するために万里が振りまいた所為だろう。
「オレの作るまで、これ代用」
「・・・気に入った?」
「鼻にくるのは好きじゃねぇけど、これは結構好きだな」
「そう」
実は万里のために作った試供品のひとつだとは言えない。
「夕食用意したから、先に食べて早く帰って」
「早久良の顔見て食べたいから待ってるわ」
小瓶片手に上機嫌で出て行った万里。
発言に鳥肌を立てたことは気付いていないだろう。

「だいぶマシになってきたな」
言いながら箸で掲げたのは野菜の切れ端。
「・・・そっちは駄目駄目だけどなぁ」
続いた呆れ声は、早久良の左手使いに向かっていた。
ぎこちない上にフォーク握りでブッ刺して食べているのだから、言われても仕方がない。
「ちゃんとリハビリやってんのか?」
「上野に関係ない」
「有るだろ、どう考えたって」
「・・・格好いい人だから、毎日熱心に通ってる」
「はあ?何だそれ、お前いつからそーゆーキャラになったわけ?」
「最初から」
鬱陶しいし、愛想つかせてくれる方が凄く楽。
人をどう思っているかは知らないけれど、万里は良いように解釈している気がしてならない。
「ふーん・・・で?」
「・・・は?」
「その先生とはどこまでいってるわけ?」
急に目の前の万里が色気づく。
頬杖をついてジッと見つめてくる様が絵になりすぎていて、気を抜けば吸い込まれそうだ。
「やることやってんじゃねーの?」
「人の私生活聞いて何か楽しいの?」
思わずムッとした。
「全然。早久良だから聞きたいだけ」
「聞いてどうすんの?」
「その先生様の顔でも拝みに言ってやるよ」
にぃっと口端を上げた万里。
冗談と本気の区別が付かない物言いだから殊更怖い。
万里とのつきあいは浅い。
高校に入ってから暫く後、お互いのことを知った位だからどういう人間かなんて万里を取り巻く友人の方がよっぽど詳しい。
でも、そんな友人が知らないことを早久良だけが知っているのは事実で、誰より深いところに触れてしまったのも否定の仕様がない。
どんな切り返しが好ましくて、万里を挑発しないのか見当がつかなくて困る。
「・・・今日」
「ん?」
「一緒にいた彼女、二年の人?」
話題を変えるしかない。
幸いにものってくれたから有り難い。
けど、お陰で興味のない話題を広げなくちゃ行けなくなった。
「あー・・・」
一瞬考えるよう視線を上に向け、思い出したのかこちらに視線が戻る。
「さあ?声かけたら付いてきただけ」
「・・・・・・」
「テクも感度も今一。顔も特別記憶にない」
「・・・・・・」
「下手に喘がれるよりはマシだけどな」
コメントのしようもなく、早久良は慣れない左を使うために集中する。
「聞いといて無視すんな」
「・・・・・・」
「てめ、こら、無視すんな!」
「・・・そんな嫌なら無理してつき合わなきゃ良いじゃん」
「お前がそうしないと香水作らないからだろうが」
そういえば、そんな誤解があったか。
「あげたじゃん」
「オレの為ってのがミソなんだよ」
「?意味解んないんだけど、まあ・・・一応さっきの、上野の試供品」
「マジか?」
頷いて、けれど皿から顔は上げない。
箸を使おうとすれば、手が震えて言うことを聞かない。
苛立ちは抑えて、根気よく、めげずにやり続けるしか近道はない。
「オレの為に作る気あったのか」
「同情」
「テメェ」
「だからヤな事は止めれば?人様の恋人奪うのもどうかと思うし」
「・・・・・・お前さー」
沈黙が長かったから無駄話から解放されたんだと思っていた。
万里のトーンが変わっていたし、手を止めてつい、目線を上げてしまう。
「理由とかは絶対聞かないのな」
「興味ない」
何とも言い難そうに、気の抜けた顔をしている万里。
それが珍しいと言いたげで。
キッパリ言えば苦笑された。
「普通は詮索するだろ。何で人の女なのかとか、何が嫌なのかとか」
「言いたいならどうぞ」
「それじゃあ意味ないだろ」
他人に干渉されることが嫌なくせに、一体何をしろと言うのか。
大体、万里を受け入れるに当たっての大前提は関与しない事だったはずだ。
それは何も変わらない。
「上野さぁ、いい加減、好きな人見付けたら?」
「どの面下げてだよ」
鼻で笑った上に希望の宿らない瞳。
その絶望に人を引きずり込まないで欲しい。
救い出せるわけはないし、救う気なんて更々無い。
どうしてそのことに気付かないんだろう。
「お前もいい加減、観念しろよ。したら虐めなんぞされねぇのに」
「意味が解りません」
「そんな鈍くて大丈夫か?お相手は年上なんだろうに」
「・・・・・・・・・」
話が戻ってしまった。
折角したくもない話をしていたのに、これではさっきまでの意味が消えた。
ほとほと自分は馬鹿なんだと悟り、左手訓練中を言い訳に万里を完全無視することに決めた。
本当に、どうして最初からそうしなかったのか。
万里の闇に触れなければ、手を貸したりしなければ、こうやって譲歩しなければ、徹底して突き放せば違っていただろうなのに。
「観念したか」
ククッと笑う万里。
一体何を考えているのか。
そんなことを心配したところで意味はないんだろうけど。


三ヶ月後
万里の女遊びが以前を上回ったお陰で集中的な虐めはなくなった。
当然、クラスや女子からは相変わらず嫌われたまま。
それでも、痛みを負うことなく孤独ではあるけれど静かな生活は平穏だと思える。
だからこそ、目の前に広がる光景は信じがたかった。
どんなときでも支えだったから、温室の植物たちが暴力によって破壊されている姿は言葉を無くし、思考を停止させるくらい衝撃だった。


犯人は自ら名乗りを上げてきた。
一日掛けて植物を植え直し、翌朝訪れた温室で待っていた見慣れない男。
早久良に気付くなり、銜えていた煙草を地面に落として踏み消す。
その行為に早久良は嫌悪を抱いて眉を寄せた。
「よぉ、昨日はご苦労だったみたいだな?」
ガラス越しに覗ける温室を指してニタリと笑う男が、自分の大切な物を踏み付けたんだと察した。
瞬間、頭に血が上り早久良は手にしていた鞄を強く握り締めていた。
「恨むなら、人の女を寝取って捨てた彼氏を恨むんだな」
バリンとガラスが割れる音。
先程とは打って変わった敵意剥き出しの男がガラスを蹴破り、早久良を一瞥すると肩をぶつけて通り過ぎる。
昨日の惨状は引きずったまま、目の前で痛め付けられた温室。
これを早久良が黙って見過ごすわけはない。
踵を返すと同時に、直ぐ側にいるはずの男目掛けて鞄を振り回した。
教科書の重みと革製の尖った角が命中した手応えを感じた早久良は、視線の先に倒れる男を確認して腕を下げた。
怒りのあまり、呼吸が荒れて肩が上下する。
「貴様」
起き上がった男は目元を押えているようだった。
背中を向いていたから確かではないけれど、低く響く声音で相手の怒りも知れる。
だからといって早久良は怯まない。
譲れるほどお人好しではない。
「良い根性してんじゃねーかよ?」
「・・・・・・」
ゆっくり立ち上がり振り向いた。
不気味に笑い、右目蓋より少し上を押えていた手が離れた。
「眼球当たってたら失明してたんだぜ?」
幸いに目蓋を切って出血しただけ。
言いながら全身で怒りを発している男が一歩こちらに踏み出してくる。
気迫に思わず後退るけど許せない。
「ったしは・・・上野と関係ない!」
「へえ?」
また一歩近付かれ恐怖が覆う。
右手が疼く。
もう、傷は完治しているはずなのに。
「に、二度とここに近付かないでよ!!」
「人に怪我させて言うことがそれか?ナメてんの?」
震える体を奮起させて防衛手段として鞄を持つ左を動かそうとした。
が、距離を詰めた相手に容易く止められ、使えもしない右手を反射的に振り翳した途端、手首が折れそうなほど握られてしまった。
捻られているせいか酷く痛い。
感覚も鈍いはずなのに、痛みと疼きが右手に広がっていく。
「っつぅ・・・!」
「あ?」
「は、なしてっ」
「お前・・・」
何故か拘束する力が緩んだ。
早久良は相手を突き飛ばす勢いで体をぶつけると、捻られていた右手首を押えた。
血液が掌に集まって沸騰してる気がする。
不快感が酷くて顔が歪んでしまう。
「・・・防弾ガラスにでもすることだな」
右手の痛みばかりに気がいって、男の言葉も既に去っていったことも気付かなかった。
「何でっ」
右手の傷跡も薄くなり、利き手が使えない不自由さにも慣れてきた。
女子からの嫉妬や怒りを全て受けなくても良くなって、時折感じていた痛みなど記憶から呼び起こすこともなくなっていたのに、何で今更。
ただ、心の平穏が欲しいだけなのに。


諦めたように静かだし、何だかんだこっちの要求を受け入れる早久良に調子に乗っていた。
というか、それが当たり前だと感じるようになっていた。
あいつは温かく優しかった人の愛情を一心に受けて生きてきた。
形こそ失われてしまったけれど、その事実は変わらない。
幸せな早久良が、孤独な俺を救うのは当然だ。
何より拒絶できるはずがない。
あの人と同じ顔をした女が狂気に染まった姿を目の当たりにしたんだ、それを押し付けられて育った俺をあいつが拒めるわけがないんだ。
精々哀れんでくれれば良い。
そうしてる間に、アイツの回りは誰もいなくなった。
俺しかいなくなって、それでも絶望しない早久良だからこそ放せない。
俺に引きずられない。
決して手を差し伸べようとしない、救う気などないと頑なに意志を曲げない。
だったら、そうせざるを得ないようにするだけだ。
本当に早久良は気付かないのか。
考えることもしないのか。
もし、俺と早久良が従兄ではなく知り合っていたらと。



女を侍らすことに飽きてきた頃、滅多に出ない授業で暇潰しをした。
良いのか悪いのか、色目を使う女教師で、堂々眠りこけようが文句ひとつ言わない。
教師面で触れる女を雑に払って、ふと早久良が視界に入った。
左手が違和感なく使えるようになってしなくなった、右手を気遣う動作が。



温室は直り、突然現れた男もあれ以来見かけない。
なのに、治まらない右手の疼き。
突然起こる発作のようにズキズキと脈打つ。
こんなときは無意識に右手首を掴んでしまう。
「早久良」
意識が右手に集中していた所為で、声を掛けられるまで万里の存在に気付かなかった。
驚きで体が跳ね、そうと気付かれないように右手から手を離した。
「痛いのか?」
「・・・何?」
「腕押えてたろう」
「あぁ、そうなの?」
自覚がないことにすれば面倒な説明をしなくて良い。
何より、万里と言葉を交わすことが一番嫌だった。
普段は教室にいないくせに、偶にいては見られたくないことばかり気付く。
それが煩わしい。
「・・・何かあったのか?」
叔母のことが含まれた言い方。
眉を寄せて、神妙に、こちらの変化を窺い知ろうとする態度。
「別に何も」
「嘘つくな」
「・・・上野、廊下で彼女が待ってるよ」
「質問に答えろ」
瞬間、腹が立って万里を突き飛ばしていた。
途端、感じないはずの右手に激痛が走って、屈み庇ってしまった。
「おい!」
心配と焦りで万里が触れようとするから、後退って拒絶した。
「早久良っ」
「五月蠅い!五月蠅い!!上野には関係ないっっ!!」
人目も教室であることも構わず怒鳴った早久良は、勢いのまま飛び出した。
お前の所為で温室が壊された、そう責められたらどれだけ楽か知れない。
でも、それはできない。
万里が相手のいる女性に片っ端から手を付けるのは、寝取った後に容易く捨ててしまうのは、理解など出来ないけれど理由は知っているから。


温室に逃げてきた早久良は、そこで待ち構えていた三人に青ざめた。
「よぉ」
耳中ピアスで埋め尽くされた男と制服に隠れきっていないタトゥーだらけの男、その間にいる温室を破壊した男がいたから。
「防弾ガラスにでもしたか?全然割れねーなぁ?」
「な、何の用ですか?」
「お前こそ、授業サボって草弄りか」
「関係ないじゃないですか!こ、ここに無断で入ったら警察呼びますから!」
「学校の敷地内にあるんだ、生徒が入って何が悪い?」
「ここは、わ、私のっ」
上手く言葉が出てこない。
それでも引くわけにいかず必死だった早久良は、突然掴まれた右手に怯えた。
「目、無事で安心したろ?」
言われて初めて、自分がしでかした暴力行為を思い出した。
眉より少し上に張られている絆創膏。
その程度の怪我だった事に今更ホッとした。
「女にやられて傷が残っちゃ堪ったもんじゃねーからな」
「す、すみません。でも、あれは、」
「まあ、フェアじゃなかったから、お互いチャラだ」
チャラにするにはこちらの方が代償は大きい。
しかも最初から間違っている。
こんな仕打ちを受ける理由はないんだから。
でも、余計なことを言って怒りを買うより穏便に済ませて二度と関わりたくない。
「あの、離して下さい」
掴まれた手首。
人様に掌を翳すのは本意ではないから居心地が悪かった。
第一、掴まれている理由すら解らない。
「コレ。自分でやったのか?」
興味津々で見られているのは、一生消えないんだろう傷跡だ。
手を貫通したガラスの跡。
甲に残らなかっただけマシだと早久良は思っていた。
ただ、こうやって他人に茶化されるのは不快で。
乱暴に振り払った。
と、同時に吹き飛んだ男。
代わりに万里の後ろ姿があった。
「慎!!」
「え?」
倒れた男に駆け寄った二人と顔の見えない万里が一瞬で張り詰めた空気を纏っているのは判る。
でも、状況把握がしきれていない。
「こいつに何した?」
低く唸るような万里の声。
「ってぇー・・・」
「テメェの所為か?」
不意打ちだったからだろう、起き上がった男の口端は切れて血が滲んでいる。
万里の体で相手が見えにくい。
そう感じて、やっと自分は万里に庇われていると知った。
「何の事言ってるか知らないが、俺じゃなくお前の所為だろ」
「んだと?」
「人の女寝取ってんだ、同じ事されて文句言えねーだろ」
仲間の手を借りず立ち上がった男。
慎と呼ばれていたけれど、殺気立つ万里と違って冷静そのものだった。
喧嘩にはならない。
それが救いだろうと、早久良は戸惑いつつ成り行きを見守る。
「またな」
万里に向けられたのか、自分に向いているのか。
慎が自分を見ていた気がしたけれど、どうか気のせいであって欲しい。
祈りながら三人が去るのを見送って早久良はようやくホッと息を吐き出した。
が、問題はまだあった。
万里が目をつり上げて振り向いたから。
「どういうことだ」
「は?」
「は?じゃねぇ!誤魔化すな!」
「・・・上野には関係ない」
「思いっきり関係してるだろうが!」
何言ってんだテメェはと凄まれて、呆れしか湧いてこない。
「私の問題で上野が口を挟む権利はない。理由が何であれ、私がされたことだし、何より上野に助けて貰おうなんて微塵も考えてない」
「・・・かっわいくねぇ・・・」
万里は多分、こちらの性格をよく解っているんだろう。
不満は残したまま、苛立ちは向けずに抑え込んだ。
どうして何も言わないのか、万里は見透かしている。
だから踏み込んでこない。
踏み込んできたところで望む答えが返ってこないと知っているから。
「上野」
「ああ?」
「好きな人、出来るといいね」
「だ~から、どの面下げてだよ。馬鹿か、テメェは」






右手の疼きが治まらないまま冬が来て、痛みが増した気がした。
保健室で鎮静剤をもらいに来て、早久良は驚きのままに固まった。
「頭痛?今先生いないから待ってなよ」
「・・・・・・」
「大丈夫?」
額に当てられた大きな手。
血液が沸騰した気がした。
真っ赤な顔を見られたくなくて俯けば、余計に心配した"高坂 建一"が覗き込んできた。
「寝てる?」
「い、いえ、その、あの、腕が・・・」
痛いだけですと言葉は続かなかった。
いつからかずっと見ていた相手が、こんなに至近距離にいるから心臓が尋常ではない。
「腕?どうかしたの?」
「え?」
「痛いの痛いのとんでけーって、子供だましだけどね」
無意識に押えていたからか、気付いた建一が右腕をさすりながら唱えてくれた。
呆気にとられて顔を上げると目が合って、少し照れくさそうに笑った彼にまた顔を赤くなる。
「無理しないで休んだ方がいいよ」
「え?」
「色々考えすぎるとオレもよく頭痛くなるし・・・て痛いのは腕だよね、ゴメン」
「いえ」
「うん。じゃあ、オレは行くけど。先生もうすぐ戻るからさ」
「あ、ありがとう」
「いいえー」
手を振りながら出て行った建一。
終始優しく話し掛けてくれた。
撫でてくれた腕。
気付いたら、痛みが消えていた。
それと、胸につっかえていた重りのような何かも。
何も変わらないのに、彼の言葉は魔法のように早久良の心を軽くしてくれた。


評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ