最後の砦 〜墜ちない巨砲〜(1/2)縦書き表示RDF


オニです。
これも、「変な学校」に続き、某自ブログに載せている小説です。
読んでいる内に色々とナットクのいかない部分出て来ると思いますが、それらを含め、どうかどうか暖かい目で見てやって下さいまし。
最後の砦 〜墜ちない巨砲〜
作:akaoni0026



1:墜ちない巨砲


「またか…」
 悲惨で且つ疲弊的なこの状況。ため息もつきたくなるというものだ。
 ここは攻撃兼防衛要塞、「カブ」。造られて500年もの間、いまだ一度も陥落したことがない最強最悪の『最後の砦』。と、呼ばれている。
 まあ、そんなおとぎ話みたいなこと、あってたまるかって思う人は沢山いる。…君もそうだろう?
 …確かに、簡単には信じられない話しだ。俺だって初めて兄貴から聞いたときは信じられなかった。
だが今まで、生きている間に一度だけ、その『最後の砦』の凄さを知った事件があった。それも昔の話であるが…。
「なにぼーっとしてるんだー!!会議始まんぞ!!会議!!」
 やぶからぼうに友人のサーフが、ギャーギャー騒ぎながら、新聞を広げている俺に快活に笑って、そのままガラス越しに一室を通り過ぎていった。やれやれ。
「はいはい、わかってますよ」
 バサッと新聞紙をテーブルに置き、その資料室を出て、俺は作戦会議へ向かうことにした。
 そう、お察しの通り俺は兵士だ。ちょっと、特別な。
 会議室へ向かう途中、女性と会った。
「あ、兎倭理(とわり)くん!あなたも?」
 彼女も例によってパイロットスーツを着ていた。あなたも?っていうのは、戦争に借り出されたのか?って意味だろう。
「そうみたい。大体、敵さん大軍勢らしいじゃないか」
「みたいって…知ってるでしょ?」
 彼女は軽く笑みをこぼした
「確かに、今回“前例がないほど”の兵数らしいわ。それにもとからここ、兵士少ないしさ。まーあなたが借り出されたの、当然かもね」
 もとから出撃は決まっていた、そうゆうことだ。笑いの余韻をひきづりながら彼女はおかしそうにそう言ったのだった。
「まあなー…」
 兵数、つまり戦闘に参加する兵の人数だが、ここは有り得ないほど少なかった。というのもここは、とてもとても占領域が狭い。ここらのどんなに小さい国よりも小さいのである。ここいらの一番小さい国と比較しても、うちの国、カブは三分の一程度しか占領域がない。地図で確認したことがあるし、間違いない。
 無駄な侵略はしない主義なのだそうだ。
 それより何故急に戦争になったのだろう?確か和平交渉は順調に進んでたハズじゃ…。
「ああ、そうだ、和平交渉はどうなったんだ?ウマくいってたって新聞にはあったぞ」
「ああ、アレね。うんと。一言だったらしいわよ」
 含みのある台詞だ。
「なにが一言?」
「武装解除しろってさ」
 その一言で全てが分かった。
「ああー…なるほど…」
 カンタンな話しである。武装解除したらここにスグにでも殺到する気なのだ。どうせ武装解除させて、ほいほいっと侵略するつもりだったのだろう。
 実際今、もの凄い軍勢で攻めてきているのだ。解除しようがすまいが、結果は同じってことか。
「分かった?」
「ああ、つまり武装解除を拒んだわけだ。アタマは」
「そ。それで敵国は、近隣諸国と協力してここを落とそうとしてるワケ」
「無謀だな」
 なにせここ“カブ”は500年落ちていないのだ。その最強の防衛力は伊達じゃない。
「なに言ってるの。こっちこそ無謀よ。防衛しようとしてるんだから」
 …まあ500万対1000はちょっと無謀かもしれない。ちなみに、圧倒的に劣勢数を誇っているのがこちらの兵力である。
「差にして5000倍差の兵力…」
 無茶苦茶だ。
「それでもここカブは、500年前に圧倒的大差の敵をたった500の兵力で追い返したんだろう?」
 彼女は深刻そうな、それでいてしんどそうな顔をした。この子は分かってないわねってそんな顔だ。
「そんなのおとぎ話に決まってるでしょ?大体ね、真書では1000対100って書いてあるわ」
 それでも十分凄いのだが…しかし今と比較すればそれはたったの10倍の差の兵力であるといえる。絶妙にうまいことすれば、何とかなった数かもしれない。
「当時はたった10倍の差だった…けど今回は5000の差なのよ!?どうかしてるわ…」
 よくよく考えれば、いや、そんなこと一目数字を見れば、無理だと一瞬で小学生でも分かりそうなものだった。
 俺はどうやら、『最後の砦』と呼ばれる架空の存在にすがっていたようだ…。
「…初戦で死ぬことになるとは…」
「……生き延びましょ。とりあえず、それからよ」
 彼女は悲しい眼で暗示し、自分の長いブラウンの髪をそっと撫でた。
 話してる内、会議室に着いた俺と彼女、“ツァリ”は、とりあえずそこで切り上げて、各自の席へついた。
 会議室、と言うだけあって、無駄に広い空間にテーブルとパイプ椅子がずらりと並べられ、そこに投影機、奥に大きいスクリーがかけられていた。
 どうやらもう全員が集まっている用だ。まもなく作戦会議開始である。
「諸君、みなの知っての通り、私たちはこれから近隣全ての国に対し防衛を展開する。作戦進行概要はすでに通達で知っているだろうが、最後まで気を引き締めなければならない!」
 前に立っている女性の隣の、初老がそう言い放った。シンル総司令補佐官である。
 彼がそう言っている内、室内は暗くなっていた。4D投画機からスクリーンに映された真っ白の光りだけが、みなの緊張の顔を映し出している。
「…今作戦は、非常に単純なものである。持久戦だ」
 そんなことはもう知っている。要は各位配置された場所の陣を守り抜けばいいのだ。
「地利で言えば、我々は圧倒的優勢だ。問題なのは、敵の数…5000倍差の兵力を敵にすることだ」
 みな怖じ気づくことなくその話しを聞いていた。みな知ってのことだからだ。
「そこで、先に交渉していた“ディース”から援軍の依頼をしたところ、快く引き受けてくれた。あまりに敵の攻略が急ぎであるため、戦闘開始から援軍が到着するまで二、三日かかる予定だが、持ちこたえれば力強い助っ人となるはずだ」
 “ディース”とは、南東にある敵大国の奥地にある非常に小さな国である。技術力は確かだが、それが仇となり、早いうちから近隣の国に占領地を切り取られていっている国だ。
「・・・私からは以上である。では、総司令官・・・」
 シンル総司令官補佐は下がって、サリナ総司令に場所を譲った。
 そう、総司令とは女性なのだ。
 俺たちにとってはもう意外でも何でもないのだが、女が総司令と言うのは、やはりどうかと思うだろう。しかも彼女、いや総司令は今年やっと20歳である。
「諸君!話しは聞いた通りだ!!我々は熾烈な戦いを余儀なくされている!」
 歳に見合わない幼さを覆し、サリナ総司令はよく通った芯のある声で言った。
「しかしっ!!我々は絶対に負けられない!!絶対兵器、“カブ”を死守するのだ!戦闘が始まった後はまず防御を固めろ。当面はディースからの援護を待つのだ。我々の戦力ではとうに底が知れている。“カブ”を最大限に利用し、我が領土を死守せよ!以上ッ!」
 短い言葉の後、サリナ総司令はためいきをつき、素の顔でフッとみなに笑いかけた。
「みなの無事を祈っていますよ」
 そう言った後彼女は、コツコツと靴を鳴らしてその場を去っていった。
 少し経って、不揃いに電灯がつき始め、段々と緊張に捕らわれた静けさが失われていく――。
「よっ。兎倭理。ダレてんじゃねーよ」
 机にダラリとうつ伏せになっていた俺に一言多く話しかけてきた男は、やはり友人のサーフであった。
「ダレてねー」
「ケーッ。声もダレてやがる」
 からからと笑うサーフ。あー鬱陶しい…。俺はとりあえず作戦指令書を取り出した。防衛地点は大きく三つに分けられ、西から、アンスポイント、ビルアリアポイント、カルンスポイント、とあり、第3防衛ラインまで設けられている。とりあえずコイツとの話しはこうゆうシゴトの話しで片付けてしまおう。
「…お前どこ配置だ?」
「俺?俺はここだ」
 サーフは東のカルンスポイントの第二防衛ラインを指差した。
「カルンの第二防衛ラインか…」
 このサプイラポイントから進軍してくる敵は、推測するにザブリとピュルカの混合部隊。
 因みにザブリの兵器は主に凡庸人型兵器である。この国は、突出した技術力こそないが、生産性に優れており、持久戦に持ち込まれるとかなり厄介になってくる。
 一方ピュルカは、補給ヘリやトラック、遠距離支援に優れ、このピュルカからの奇襲にあえば、どこの国だろうと瞬く間に兵と機体を労してしまう。ある意味、この二つの国が組むと敵なしである。一気に破壊すればどうということもないが、篭城しているのはこっちだ。うーむ。
「お前どこだよ?」
「ん?俺か」
 俺は黙って南のビルアリアポイントを指差した。
「ひょえ〜…さすがエース様様ってか?」
「馬鹿言うな、アタリに合っちまったんだよ」
 サーフがそう驚く・・・というか、ちょっとした感嘆を漏らすのにはワケがあった。
「ここ挟まれるぜ?絶対」
「ああ…分かってるよ、それくらい」
 南のビルアリアポイントは、最も危険な防衛地点だった。何故なら、最前線だからである。サピンダスとザブリ、さらにサフィルとピュルカの攻撃を受けることは必至なのだ。
 ザブリとピュルカは先言った通りだ。これだけでも十分問題なのだが、さらに厄介なのはサピンダスとサフィル。この両国は、攻撃力に特化していた。生産性だけで言うならどこよりも、そう、ここカブよりも低く、生産水準を下回っているが、その性能たるや、凡庸人型兵器五機分に相当する。さらにサピンダスとサフィルは、近年共同開発を発表した。もしかしたら、新兵器登場なんてこともありうる。そうなれば俺たちは…。
「なーに暗くなってんだよ」
 トンッと額を手のひらで押されて、俺は現実に引き戻された。
「あ、ああ。ちょっと」
「やっぱお前でも真ん中は重いか?」
「……」
 重いぜそりゃ。すごく。でも、それを認めるってことは、負けを認めることと同じだ。みんなが死ぬことと、この国がなくなることと同じなんだ…。












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