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帰るべき場所
作:蒼藍



22. 交錯する思惑


  

  カーテンの隙間から差し込む光が眩しくて、コナンは目が覚めた。

  昨日までの雨が嘘のように晴れ、雲ひとつない空が広がっている。

  目を擦りながらリビングに下りていくと、既に平次は起きていて新聞を読んでいた。

  「おはよーさん。」

  昨日の言い争いなどなかったかのような、普段とかわらない態度の平次。

  それにつられて、コナンもいつもと同じように挨拶する。

  「おはよう。」

  お互いの顔に寝不足の兆候が見られたが、あえてそこには触れない事にした。

  テーブルには朝食の準備が整っているが、哀の姿が見当たらない。

  「灰原は?」

  そう尋ねるとキッチンの奥から、博士の声が聞こえた。

  「今日1日、一人になりたいそうじゃ。」

  昨日初めて事実を聞かされた哀には、それを消化するための時間が必要なのだろう。

  そう納得したコナンは、椅子に座り朝食を食べ始める。

  「おい!お前を待ったったのに、なに先に食べてんねん!」

  平次は読んでいた新聞を放り投げると、コナンの隣に座った。

  この日のメニューは、トーストと目玉焼きにウインナー、それにサラダとヨーグルト。

  いつもと変わらない食事の時間が、平次がいる事で少しだけ明るくなった気がした。





  「それで・・・お前、今日FBIとの打ち合わせはあるんか?」

  トーストをくわえながら、さらっと聞き出そうとした平次。

  「・・・関係ねーだろ。オメーは今日、大阪に帰るんだからな。」

  こちらもさらっとかわすコナン。

  そんなやり取りを心配そうに博士が見ている。

  博士は今朝、現在の状況を平次から聞いていた。

  「相変わらず、強情なやっちゃなー。」

  平次はコナンの言葉など気にもせず、朝食を食べ進める。

  「服部・・・頼むよ。蘭のことを任せられるのは、オメーしかいねーんだ・・・。」

  今度は、泣き落とし作戦に出るコナン。

  何とかして平次を大阪に帰そうと、必死になっていた。

  「あぁ、それなら心配せんでええで。オトンに頼んできたから。」

  「何だって!?」

  せっかく繰り出した作戦も、思わぬ人物の登場にあえなく頓挫する。

  「まさかオメー・・・親父さんに全部話したのか?!」

  組織の事を知る人物が増えれば、それだけ危険にさらされる人数も増えることになる。

  不安を覚えたコナンが、平次を問い質す。

  「そんなことするかい!ただ・・・悪いけど工藤、お前に悪モンになってもろたで。」

  悪ガキのような笑みを浮かべて、平次は答えた。

  「どういうことだよ・・・。」

  「『工藤が厄介な事件に巻き込まれて、そこの連中に追われてる。で、オレに助けてくれと連絡が入ったから

   東京に行ってくる。で、オレらが関わっていることで和葉やあの姉ちゃんに危険が及ぶ可能性は捨てきれん

   から、二人の警護を頼む』って言うてきたんや。組織の事は一言も言うてへんけど、状況としてはまぁ、

   大体おうてるやろ?」

   コナンは、開いた口が塞がらない。

  「どうせ、姉ちゃんにはFBIの警護が本人に気付かれへんようについてんねやろ?FBIと警察と両方で警護して

   るんやったら、何とかなるんとちゃうか。」

  確かに、FBIは組織にも動きを見張られている可能性があるため、日本の警察が動いてくれるのは願ってもない事だ。

  少しでも、蘭を安全な場所に置いておきたいと考えていたコナンにとっては、安心できる材料の一つになる。

  蘭を思い出したと同時に、もう1人の女性がコナンの頭に浮かんだ。  

  「今更だけどよ・・・、オメー彼女に何て言ってきたんだよ。」

  長期間平次が帰ってこないとなると、和葉も心配するはずだ。

  どうしてもコナンは、蘭同様和葉のことも気になってしまう。

  「あ?普通に東京行ってくるしか言うてへんで。別にアイツも『いってらっしゃい』って言うとったし、なんとも

   思うてへんはずや。どうせ、実行までに多少の時間あるやろ?その間にでも、1回大阪に帰るつもりでおるしな。

   ある程度段取りを聞いてから、それを踏まえて和葉にどう説明するか考えようと思っとる。」

  和葉も蘭と同様、平次の事となると心配性が過ぎるところがある。

  できるだけ、不安な思いはさせたくないと平次も考えていた。  

  「親や学校はどうするんだよ。」

  平次は、ある程度の手続きを終えたコナンと違い、問題が山積する高校生だ。

  コナンは、次々とその現実を並び立てる。  

  「そこは、確かに問題やな。親はどうにかして説得するとしても、学校がな・・・。でも、まぁもうすぐ春休みやし、

   何とかなるやろ。仮に休むことになっても、お前程の欠席日数にはならへんしな。」

  皮肉たっぷりの平次の言葉に、コナンもムッとした。  

  「何とかなんて、ならねーだろ。」

  何を言っても否定的な意見しか返ってこないコナンの言葉に、平次も次第に苛立ちが募る。

  「お前もしつこいなー。何て言われても、帰るつもりなんてないで!いい加減、あきらめろや。」

  「オレだって、オメーをここに置いておくつもりなんてねーよ!!」

  「あのなあ、工藤・・・。」

  結局、昨日と同じような言い争いになっている事に気付いた平次が、少し間を置き冷静さを取り戻す。

  「今のお前を一人で行かせることは出来ひんで。お前、死ぬつもりやからな。」

  急に、真剣な表情で平次に言われたコナンは、一瞬彼から目を逸らした。

  その横で、平次の言葉に驚いた博士が声を上げる。

  「新一!そんな事を考えておるのか?!」

  「バーロ!違うよ。服部が勝手に言ってるだけだ。」

  そう言うと、居た堪れなくなったコナンは席を立った。

  部屋に戻っていく彼の背中を、博士は悲しそうな目で見送っていた。

  「新一は、すぐに一人で抱え込んでしまうからのう・・・。」  

  博士は、空席になった椅子を見つめながら呟く。

  「わかってるって、じいさん。せやから、オレが来たんやないか。心配しなや。」

  笑顔とともに発せられた平次の言葉が、博士には頼もしく思えた。

  


いつも読んで下さり、ありがとうございます。
更新が遅くなっており、申し訳ございません。

更になのですが・・・
次の更新は、明日から1週間ほど家を空けるため、来週の中ごろになると思われます。
ここでしっかりリフレッシュして、なんとかスランプを脱したいと思ってます。













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