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帰るべき場所
作:蒼藍



13. 夢と現実の狭間で


  

  気がつくと、あたりは真っ暗だった。

  意識が朦朧として、自分がどこにいて何をしていたのかもわからない。

  (あれ・・・?オレ・・・確か・・・)

  コナンは、記憶の糸を手繰る。すると突然、血まみれになっている蘭の映像が頭に浮かんだ。

  (蘭!!)

  先程、ジンに拳銃で撃たれ、重症を負っているはずの彼女を探すが、見当たらない。 

  代わりに目に飛び込んできたのは、自分が使っている部屋の中にあるベットと時計。

  蛍光塗料で光っている時計の針が、午前零時を回っていることを彼に知らせた。

  (もしかして・・・寝ちまったのか?オレ・・・。)

  辺りを見回し、現在の自分の状況をもう1度確認する。

  (夢・・・だったの・・・か?)

  そして昨日も、大阪でほとんど寝ていなかった事を思い出した。

  徐々に冷静になってくると、自分の身体中から汗が噴き出していることに気付く。

  僅かに手も震えていた。

  とても夢とは思えない、これから起こることを予言しているような内容。

  (もし、あれが現実になったら・・・。)

  思っただけで、戦慄がはしった。

  そんな彼の身体は、汗のせいか水を要求している。

  コナンは、暗闇に慣れてきた目でドアノブを見つけると扉を開けた。

  先程の細い月が空高く昇り、わずかだが廊下を照らしている。

  まるで長い間光を見ていなかったように、彼の瞼は自然と閉じられた。

  その微かな月明かりでさえ、彼はまぶしく感じていた。





  静まり返った家で物音を立てないように歩き、キッチンにあるコップを手にする。

  冷蔵庫からペットボトルを取り出すと、静かにミネラルウォーターを注いだ。

  ゴクッ・・・ゴクッ・・・

  コップの中の水は、意思があるかのようにコナンの喉に入っていく。

  飲み干した後、それでも足りなかったのか、もう一度水をコップに注いだ。

  突然、先刻の映像が蘇ってくる。

  どちらが現実なのかわからなくなり、再び彼は恐怖に呑み込まれそうになった。

  普段の彼なら、こんな夢を見たところで慄然とすることも、錯乱することもない。

  しかし、数時間前にFBIで聞いた事態のせいなのか・・・。

  それとも、この世で一番遭遇したくない状況を見せられたせいなのか・・・。

  いつも心にある、自分に対する絶対的な自信。

  それがもろくも、支える力を失って壊れそうになっている。

  大切な人を失うと思っただけで、人間はこんなにも脆弱ぜいじゃくになってしまうものなのか・・・。

  コナンは自分の弱さを目の当たりにし、自嘲的な笑みを浮かべた。






  そんな時、ポケットから振動を感じた。

  コナンは、慌てて振動の原因である携帯電話を取り出す。

  携帯の画面に表示されたのは、ジンに囚われていた幼馴染。

  彼は安堵した。

  (蘭は生きている・・・。)

  あれは夢だとわかっているのに、その事実を確認できたことに喜びを感じていた。

  変声機のダイヤルを回し、ひとつ深呼吸をして準備を整えると、通話ボタンを押した。  

  「もしもし・・・。」

  『あ!新一?良かった・・・出てくれないかと思った。夜遅くにごめんね。』

  彼女の明るい声が聞こえる。いつもと変わらないやさしい声音こわね

  それを耳にすると、彼の心は落ち着きを取り戻していく。

  「なんか用か?」

  心とは裏腹に、彼はそっけない返事を返した。

  『何よ、その言い方。せっかく人が電話してあげてるのに・・・。』

  少し怒った彼女の声も心地よい。

  あの時壊れた心が、元に戻っていくような感覚だった。

  『何かあったの・・・?』

  黙り込んでしまった彼を心配した彼女が尋ねる。

  「いや・・・別に何にもねーよ。」

  この気持ちをどう表現して良いのかわからず、また話すのも可笑おかしなことで、そう答えた。

  しかし、今度は彼女が無言になる。

  「蘭こそ・・・どうした・・・?」

  問うてから、現実を思い出した。

  そうだ。

  蘭の元から『コナン』がいなくなったのだ。

  『うん・・・。コナン君がご両親のところに帰っちゃったの・・・。』

  沈んだ声から、彼女の寂しさが十分過ぎるほど伝わってきた。

  「そうだったのか・・・。」

  それ以上の言葉をどう掛けて良いのかわからない。

  その寂しさの原因は自分なのだ。

  自分を責めながらも、何か言わなければと言葉を探していると、彼女が呟いた。

  『ねぇ・・・・・・新一・・・帰ってこれない?私・・・もう辛い・・・。』       


いつも読んで下さって、ありがとうございます。

前回の後半部分は、新一の夢という設定でした。
多分、既にお気づきの方も多数いらっしゃったと思います。

だんだん暗くなっていきますが・・・次回も暗いです。
早く、明るい話を書きたいと思っている今日この頃ですが、それもいつになることやら・・・。
この雰囲気がもうしばらく続きますが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。











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