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  獅子物語 作者:Strudel
賢い獣の遊び方(1)
レーヴェたち一向は何の障害もなく皇子の執務室に忍び込んでいた。
ラシュの情報通りそこには誰もおらず、レーヴェは自分の執務机をひっかきまわし
ながら戦争を承認するための書類を捜していた。

「なぁ、僕ー?ママは机の中に隠れてるのか?」

僕のママは小人か、とあまりにもバカバカしい質問にツッコミたかったが、そんな時間も
惜しいレーヴェは適当に「あー」と答えた。

「あうー」

机の中で思い当たる部分を捜してみたが、肝心の重要書類はどこにもない。
一枚一枚に慎重に目を通して確認していると、ちょいちょいとラシュが指でつついてきた。
視線をラシュに向けると、ラシュは飄々とした顔で一枚の紙を出した。

「これ、実は承認書なんです。まだ何も書かれていませんけど。でも、もしこれで偽の
ものをもう一枚用意して出してしまえば、誰も戦争を起こすことはできません。そう
思いませんか?」

「あう!うー!!」

レーヴェは興奮してうなずき、ざっと目を通し必要事項をペンで書き記していく。

「・・・なぁ、なんでそんなすげぇもん持ってるんだ?てか、なんで僕がそんな難しい書類
をすらすらと書いてるんだ?」

横で感心している親切で頭の足りないハゲのおじさんに、ラシュは

「世の中にはハゲが知らなくていいこともあるんです」

と爽やかに答えた。

「ハのつく二文字の単語を俺の前で口にするな!ていうか、どんだけ失礼なことをさらりと
言ってるんだ!?」

ギャーギャーわめくおじさんの声をBGMに、レーヴェは一心不乱に書き続けた。

「あうー!」

10分ほどで書類は書きあがり、レーヴェはそれを天高く掲げた。

「おー、できたみたいですね。それでは、自分はそれを軍部に届けてきますから、これ以降は
この捨て駒にぴったりなハゲの兵士さんと一緒になんとかここから脱出してください」

「う?」

ハゲという言葉に激しく悶絶し、全身をぼりぼりとかきむしる男はさらりと無視し、ラシュ
はきょとんとした顔のレーヴェに向かって言った。

「いやだなぁ。我々は皇子の執務室に無断で入ったんですよ。たとえ人がいなくても、“警報装置”は
反応するに決まってるじゃないですか」

「「・・・・・・・・・・・・・」」

レーヴェはハゲの兵士と顔を見合わせた。



「「「「「「「侵入者発見!捕まえて処刑しろ!!!」」」」」」


怒号とともに続々と現れる兵士たち。

「あうーーーーーーーー!!!!!!」

「ぎゃーーーーーーーーーーー!!!!!!」

レーヴェとハゲの兵士は悲鳴をあげる。

「あうー!ううーーーー!!」

助けを求め、ラシュを見ると、ラシュは仕方ないなぁといった風に懐からハンカチを取り出した。

「これじゃ先が思いやられるなぁ。いいですか、困った時のハゲですよ」

そう言うと、いきなりハゲの兵士の後頭部をぐわしと掴み、ハンカチで拭き始めた。

「おわーーーーーーーーーーーー!?おまえ、この非常事態に何やってんだ!!」

「見てればわかります。すみません、カーテンを開けてもらえますか」

ラシュの指示に従い、レーヴェは背後のカーテンをばっと開いた。太陽の明るい日差しが暗かった室内を照らし出す。

「・・・そろそろ頃合いですね。さぁ、食らえ!場をもたせるためになんとなく登場せざるを得なかった兵士たちよ!同じ脇役でもハゲであるか、ないかが命運を分けるということをその身にとくと刻むがいい!!!!!」

兵士たちの阿鼻叫喚、地獄絵図。

太陽の光を反射した光線が、さらに額の脂汗によって射程範囲、攻撃力を圧倒的に大きくし、すべてのものを焼き尽くし、禿げ尽くす!!

光線を浴びた者は例外なく将来的に禿げになるため、その残虐性ゆえに世界的に禁止された禁断の魔術。

レーヴェは戦慄した。これほどまでに恐ろしい強力な魔術を、どこにでもいそうなしがない兵士が扱うことができるという事実に。

「・・・・・あう」

「さ、皇子。今のうちに逃げましょう。この技は強力ですが、連射はできません。さ、そこのハゲ。君もぼーっとしてると、捕まって、免職になって、奥さんと子供が永遠に帰ってこなくなってしまいますよ」

「おい、どんどん遠慮がなくなっているような気がするのは気のせいか!?気のせいなのか!?ていうか、何でおまえが俺の家庭事情を詳細に把握してるんだよ!?」

「気にしないほうがいい。禿げます」

「だから頼むからハゲって言うなーーーーー!」

三人はハゲにもだえ苦しむ兵士たちの間を走り抜け、外に出た。

ラシュは軍部へ。レーヴェたちは、特に決まってなかった。

「あうー!!!」

「まぁ、行き先が決まらないのもスリリングでいいじゃないですか♪とりあえず見つかってうっかり殺されないようにしてくださいね。やることやったら、また戻ってきます」

そう言って片手をあげ、ラシュは二人をおいてさっさと走り去っていった。

「あう!あうー!!」

「おい!俺たちはどうなるんだー!ちゃんと指示を!誰か育毛剤を!」

二人の叫び声が、むなしく廊下に響き渡るのだった。
ついにジルレールに戻ってきました。
この先の展開はどうなるんでしょうねw

ちゃっかり宣伝しちゃいますが、新しい小説を公開したので、興味を持っていただけた方はぜひ読んでみてください^^タイトルは「ヴィーゲンリート デア ノーチェ」です。

長くなってしまいましたが、それでは~。
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