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  獅子物語 作者:Strudel
ニーベルンゲンの戦い(3)
剣をまっすぐにニーベルンゲンに突き付け、勇ましい姿で立つ彼女は、まさに私が
小さいころから思い描いてきた勇者そのものだった。

誰もが見とれる美貌、全身から湧き立つ一流の剣使い特有の威圧感、そして見る者
を惹きつける強い意思を持つ瞳。


「・・・・なるほど。これは我も本気でかからねばならないようだな。厄介なものを
目覚めさせたようだ」

目をすっと細め、ニーベルンゲンは苦々しげにつぶやいた。
すっと前に出された両手に魔力が満ち溢れていく。

「だが所詮は人間。我の力に敵うはずもない。死ぬが良い」

「なっ!?この力は・・・・!!」

収縮された魔力の力の大きさに声がうわずる。先ほどまで、私とシャルアールを二人同時
に相手にしていた時も強い魔力を感じたけど、今彼の手元にあるものはその比なんかじゃ
ない。何十倍、いや何百倍という魔力の波動が感じられる。

「これは・・・!!!」

そのあまりに強すぎる魔力の波動が押し寄せ、私は立つこともままならず床に膝をついた。

「・・・ソレイユ・・・・」

「ジュリ!!」

視線の先には床に倒れているジュリ姫の姿がうつった。ジュリ姫は唇をきゅっと結び、何かに耐える
ようにうずくまっている。日常的に魔法を使っている私ならともかく、ジュリ姫のように魔力に
耐性のない人間が間近でこれだけの魔力の波動を浴びれば、体にかかる負担は大きい。さすがに
王族として魔力のキャパシティがあるだけにかろうじてなんとか意識を保っていられるが、この
ままでは正直まずいだろう。

「・・待ってて、今助けに行くからね・・・」

魔力の波動に圧倒されながらも、なんとか這いつくばってでもジュリ姫を助けに行くために思う
ように力の入らない体を叱咤して前に進もうとする。が、動かない。

「動け!動けったら!!」

震える足を必死に叩いて前に進もうとする私の体に誰かがすっと手を触れた。
"温かい”と思った瞬間に、先ほどの体にかかる負荷が嘘のように取り除かれ、まるで何事も
なかったかのように体が軽くなった。手をたどった先にはステラさんがいた。

「私の魔法で波動を相殺したからもう大丈夫よ」

「あ、ありがとうございます。あの」

「いろいろとあなたには話したいことがあるんだけど、今はとりあえずジュリを助けに行って
あげて。ジュリを助けたら、すぐに安全な隅に逃げること、いい?あの高慢ちきな竜は、アタシが
相手するから」

「え、あ、でも、アイツは強いんです。ステラさんだけじゃ」

「まさかとは思うけど、勝てないって言うのかしら?」

「あの、ステラさん?肩に手がめり込んでるんですけど・・・・・?」

掴まれてる、って言えないくらいのすごい握力の片鱗を味わった私は、ものすっごい威圧を込めた
笑ってるようで笑ってないステラさんの笑顔に恐怖を感じた。いや、マジで怖いから。

「・・・あの、じゃあ、お願いします」

「そう、それでいいのよ♪」

まぶしい、まぶしいよ、その笑顔が・・・・!!!!

私は身軽になった体でそのままジュリ姫のところに駆ける。

「ネズミがちょろちょろと鬱陶しいわ」

私の動きに反応したニーベルンゲンが魔力を放出。それは先ほどよりも遥かに強力な魔力の槍。
それが私に襲いかかってくる。

「っつ!!」

このままだとジュリ姫も巻き込む!おもわず足踏みしかける私の後ろから

「大丈夫だから走って!!」

という声が聞こえ、私の横をステラさんが駆けていく。

「あんたの相手はアタシって言ったでしょーが」

放たれた鋭い剣さばきによって魔槍ははじき返され、消滅。それを見てニーベルンゲンの瞳が
驚愕に見開かれる。

「馬鹿な!!これだけの魔力に対抗しうる人間がいるのか!?」

「いるのよねー、これが。これだから天才って困っちゃうのよねー」

茶目っ気たっぷりに言い返すステラさんを見て、ニーベルンゲンの顔が怒りに染まる。

「この程度でみくびってもらっては困るわ。いいだろう、お前をまず最初に血祭りにあげてやる」

再び魔力が放出。さきほどよりもさらに苛烈な攻撃力と速さを兼ね備え、数も増した魔槍。
それが一気にステラさんのもとで集中する!

「ステラさん!!」

「アタシはいいから、ジュリを早く連れてって!あなたたちがいると、アタシも本気が出せ
ないんだから!!」

その言葉にうなずき、私はジュリのそばに駆け寄って抱き上げると、そのまま隅の安全と思われる
場所まで走った。

「ジュリ、大丈夫!?」

「・・・・なんとかですわ」

私が走る間もステラさんの剣のキーンという金属音が聞こえる。

「ステラさん!」

隅に逃げた私が叫ぶと、ステラさんは私に向かって笑顔を向けた。
襲いかかる魔槍を剣で弾き返しながら。

「よし、もう本気を出しても大丈夫なようね。それじゃ、あなたはそこで目ぇつぶってアタシ
が"もういいわよ”って言うまで待ってなさい。ここから先はディープなオトナの世界だから
見ちゃダメよ★後ろを向いて、妄想してなさい」

「マジですか!?」

「私、ものすごく興味ありますわ~。見ちゃダメですか?」

「ダメよー。まだ子供には早すぎるわ。10年後に教えてあげるからw」

「・・・残念ですわ」

ジュリ姫はがっかりした顔で言った。
私はというと、見たいけど、見たくないっていう矛盾した感情に挟まれてモヤモヤしていた。
乙女心は複雑だ。

ちょっと見ちゃおっかなーとか思ったけど、しかし相変わらずステラさんの目元が笑って
なかったので、やめておくことにした。私はまだ命が惜しい。

私とジュリ姫が後ろを向いたのを確認したのか、ステラさんのなんか場違いなくらいに上機嫌な
声が聞こえる。

「さてと、さきほどアタシを馬鹿にしてくれやがった竜ちゃんにはお仕置きしてあげないとね。
何がいいかしら?うふふ」

バキボキと音が聞こえる。

「さぁーて、ステラちゃんの楽しい虐殺が始まるわよ★良い子のみんなはお家に帰って布団
の中でぶるぶる震えてね♪」




怖っ。


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