第二章 幻想殺しの愉快な日々
第二話 メンバー決定と波乱の予感
「―――というわけなんだけど」
美琴と姫神のダブルパンチから復活した上条は、展開についていけない佐天に事情を説明し、姫神の紹介も行う。……その間、背後からの視線が非常に痛かったが。
「……なるほど」
話を聞いた佐天は、うーんと少し唸った後。
「いいですよ。あんまり自信ないですけど、やれるだけはやってみます!」
にこっと笑って肯定の返事をした。
「おお、ありがとうございます佐天さん!あなた様のおかげでメンバーがそろいました!」
「……私の時と全然態度が違うんだけど」
「…ああいう純粋な笑顔に。コロッといってしまうタイプなのかも」
あからさまな上条の態度の変化に眉をしかめる2人だが、当の本人はそれにまったく気づいていない。
「……でも変ですね。私も無能力者ですけど、無駄遣いしない限り生活費が足りなくなるなんてことはないんだけどなあ」
浮かんできた疑問に首をかしげる佐天。まあ、それは当然だろう。いくら学園都市広しといえども、一ヶ月に数回も死ぬような目に遭って入院する上に女の子をひとり居候させているような無能力者は上条当麻ただひとりに違いない。
「あ、あはは……ちょっと医療費が重なってな」
年頃の男女が2人きりで生活していることを簡単にばらすわけにもいかないので、とりあえず片方の原因だけを話す上条。
「医療費……?上条さん、何か持病でも……って、まさか」
何かに気づいたようにハッとする佐天。その様子を見て、美琴や姫神、ベッドの上の白井がうなずく。
「そのまさかよ。この馬鹿、やたらめったらそこいらの不良に襲われたりしてるから年中怪我が絶えないわけ」
「時には自分から首を突っ込んだりしているようですわね」
「……そして。フラグを建てて帰ってくる」
途中まで心配そうな表情をしていた佐天だが、姫神の『フラグ』というセリフを聞いて顔をしかめる。
「……フラグ?」
「ちょ、何言ってくれちゃってるんでせうか姫神ちゃんは!佐天、前も言ったけど嘘だからな。俺女たらしとかそんなんじゃないからな」
「……あっ。すみません、今はそんなことどうでもいいです」
「ってえええ!?何だその反応!どうでもよくねえよ!?知り合いに自分がどう思われてるかとかめちゃくちゃ大事なことだって―――」
佐天の言葉に傷ついた上条は食い下がろうとするが―――
「…あれ?佐天?」
なぜか彼女が頬を赤らめ、上目遣いでこちらを見つめていることに気づき、思わず言葉が引っ込む。
「あ、あのですね……その。ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」
「(…な、なんだなんだ?なんでこいつはこんな可愛らしい顔をしているんだ?)」
男を落とす凶悪コンボを繰り出してくる佐天。おそらく意識せずにやっているのだろうが、なんという破壊力だ。
「か、かか上条さんと………その、一緒に―――」
「わかった!」
「えっ……」
佐天が言葉を言い終えないうちに、上条はすべてを理解したというようにうんうんと頷く。
そして、彼はその質問の答えを返す。
「この前俺と一緒にいた奴のことか?あいつも参加するから、仲良くなりたいんなら………佐天?」
「……はあ。……もういいです」
ぷいっと後ろを向いてしまう佐天。何か悪いことをしたのかと上条は戸惑い、周囲の様子をうかがうが。
「「「(…アホかこいつ)」」」
という視線が痛いほど伝わって来ただけだった。
「………ばか」
「(な、なんだ?何がいけなかったんだ~!?)」
佐天の拗ねたようなつぶやきに、上条はますます混乱するのだった。
―――そんな感じでしばらく無言の時間が流れた後、さすがに気まずいと感じたのか、美琴が助け船を出す。
「そ、それじゃあさ。メンバーも決まったことだし、作戦会議でも開かない?」
「お、おう!いいなそれ。やろうやろう、な!!」
何とか場の空気を切り替えたい上条は、大して考えもせず美琴の発言に賛成する。
……だが、その安直な思考が原因で、ここから彼は自分の首を絞めることとなる。
上条が賛成したのを見て、姫神が提案する。
「だったら彼の家に行くのがいい。あの子もい―――」
「だーーーーっ!うわー!うわーー!!」
この場で上条以外に唯一、彼の家にはシスターが居候しているという事実を知っている少女・姫神秋沙。彼女が平然とそのことを口にしようとしたところを、上条は全力でブロックする。
「……何よあんた。いきなり大声出して」
「病室ではお静かにと、何度言ったらわかっていただけるのでしょうか。後で病院の方に怒られるのは私なんですのよ?」
注意してくる美琴と白井だが、どうやら姫神の爆弾発言は聞こえていないようだ。
「ああ、すまんすまん。それよりさ、やっぱり作戦会議っていうのはナシの方向で……」
「はあ!?いまさら何言ってんのよあんた。姫神さんの言った通り…あ、あんたの家でやるんだからね!ほら、佐天さんも、やるからには優勝目指して全力を尽くしたいわよね?」
「ふぇ?わ、私ですか?……そ、そうですね。私も『上条さんの家に行って』作戦会議したいです!」
「あ………」
美琴も、急に話を振られた佐天も、上条宅で作戦会議を行うことに乗り気である。
「(御坂よ……非常に珍しくお前が気を利かせてくれているのはすっごくうれしいんだけど……その作戦だけはやめてほしかったと上条さんは切に思います)」
最後の希望とばかりに姫神の方を見るが、彼女もこくりと頷くだけ。つまり賛成ということだ。
「……よし。それじゃ、今から俺の家に行くか」
なんとかごまかしきるしかない。インデックスという少女が、上条宅に住んでいるということを。
決意を固め、上条は白井に挨拶をしてから病室を出ていく。残りの3人もそれに従うのだが。
「申し訳ありませんが、佐天さんと2人きりで、少しお話をしてもよろしいでしょうか」
という白井の申し出により、佐天だけが病室に残る形となった。
「……佐天さん」
「は、はい」
いつになく真剣な白井の表情につられ、顔を引き締める佐天。
「単刀直入にお伺いいたしますの。……あの殿方に、恋愛感情を持っていらっしゃいますね?」
―――ばればれだったのだろうか。そう思いつつ、佐天は素直に頷く。
「…やはりそうでしたか」
「あの…白井さん。ひとつ聞きたいことがあるんですけど」
「なんですの?」
「上条さんって……白井さんから見て、どんな人なんですか?」
白井黒子は、御坂美琴に好意を抱いている。そして御坂美琴は、上条当麻に好意を抱いている。あそこまで美琴LOVEな白井のことだ。普通ならば上条によい感情を持っているとは考えにくい。
……そんな彼女が、具体的に彼をどう思っているのか。
「そうですわね……」
白井は顎に手を当て、しばらくの間考え込む。
「……普段は頼りないように見えますが、あの殿方は、いざという時には信頼できる人物。これだけは間違いありませんの。ですから、私も、あの方を素晴らしい方だと―――」
「(すごい。白井さんにここまで言わせるなんて、上条さんってやっぱり―――)」
「―――申し上げたいのですが」
「………え?」
いきなり白井の声のトーンが下がったことに気づいた佐天。
直後。
「お姉様があの類人猿を想っていなければの話ですわ!!認めません!私は絶対に認めませんの!この私を差し置いて、あの類人猿とお姉様が付き合うなど………佐天さん!!」
「は、はいっ」
「絶対にあの殿方を落としなさい!そうすればお姉様も諦めて私の方を向いてくれるはず!!」
「……は、はあ………」
応援してくれる人ができたのはうれしいのだが、動機が不純なことに、なんだか複雑な心持ちになる佐天なのであった。
……年明けるまでに投稿しようと思ったのに間に合いませんでしたorz
そんなわけで新年第一弾はこんな感じになりました。次回、ヤバい感じがしますが、はたしてどうなることやら……
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それでは皆さん、今年もよろしければ拙作にお付き合いいただけると嬉しい限りでございます。
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