第一章 とある二人の無能力者
後日談2.side上条
朝井美穂が目を覚ましたその日。
大神祐樹が心の中で上条当麻に礼を言っていた時、
「え~、ではこれより、上条当麻被告の最期の審判を開始する!!」
「オオオオオォォ!!!」
上条当麻は教室の天井につるされていた。
青髪ピアスの高らかな宣言に、クラスの男子全員が雄たけびをあげる。
「ちょっと待てテメエら!授業が終わってさあ帰ろうと思っていたところを拘束したあげく何のつもりだこれは!ってか最期の審判って何!?俺なにかした!?」
さっぱり事態が呑み込めない上条がわあわあ騒ぐ。
「静かにカミやん。セクハラの罪の内容は後で説明するから」
「わけわかんねえよっ!?」
「………この期に及んでしらを切るつもり、カミやん?」
上条の叫びに青髪は軽い感じで答えるが、なぜだろう、背後から黒いオーラが見える。
……そもそも、どす黒いものを身にまとっているのは他の男子もなのだが。
周りを見渡すと、女子がこちらに冷たい視線を向けている。
(だれか……この状況で頼りになる奴は………いた!)
その中の一人に目がとまる。
「おおい吹寄!これってれっきとしたいじめだよな!なんとかしてくれよ!!」
吹寄制理。
このクラスの委員長で、超がつくほど真面目人間。
普段は上条といがみ合ってばかりだが、さすがに今はこちらに味方してくれるはず、そう上条は踏んでいた。
だが、
「………」
「ってあれ?吹寄?」
「…貴様は、一度これくらいの痛い目に遭ってもいい」
ばっさりいじめを肯定された。
「ちょっ…なにゆえ!?というかお前なんでそんな怒った顔して……」
「うるさい」
必死の説得も、なぜかいらいらしている様子の吹寄の前ではまったく意味をなさない。
「ぐっ……そ、そうだ姫神!お前からなんか言ってやってくれ!」
わらにもすがる思いで、上条は吹寄の隣にいた姫神秋沙に助けを求める。
「……そう。私が声をかけられるのは二番目。どこに居ても私は一番にはなれない………」
「?お~い、姫神……」
「女子のクラスメートという大きなアドバンテージも。後から出たキャラに食われてしまった。やっぱり私は空気。…ふふ。ふふふふ………」
「………」
よくわからないが、今はそっとしておいた方がいいようだ。
「…ということで、上条被告を女の子とラブラブの罪により、男たちからの裁きを受けてもらう」
「「「異議なーし」」」」
「待て待て異議あり!いつ俺が女の子とラブラブしたってんだ証拠を見せろ証拠を!」
青髪裁判長の言葉に同調するクラスメートを睨みつけながら上条が言う。
「はいは~い、それでは重要参考人の土御門元春が証拠をお見せするぜよ」
「って土御門!?さっきからいないと思ってたらどこ行ってたんだ?それとそのでかいボードはなんだ」
突然教室の扉を開けて現れたのは、上条の悪友の一人、土御門元春。
年中にゃーにゃー言ってるロリコン野郎というのが上条の見解だ。
さらに、大きな黒の布が掛けられたホワイトボードを押している。
「ちょっと準備をな。それでは皆さん、これを見よ!れっきとした証拠だにゃー!」
そう言って土御門がホワイトボードに掛けられた布をはぎ取る。
そこには。
「な………?」
何十枚にもわたる、上条と様々な女の子とのツーショットが貼り付けられていた。
「……これは、ここ二週間における、被告と女性との交流の瞬間を捉えたものだにゃー」
と言っているうちに土御門の表情が怒りに変わっていく。
他多数の男子も同様。
「それでは、一枚一枚説明を……」
「ちょっと待て土御門」
「は?」
土御門の言葉を遮り、上条が口を開く。
「お前……どうやってこの写真撮った?」
上条のわりと核心をついた質問に、
「え?そりゃあその筋のスペシャリストに男子全員で金を払って」
土御門はとても正直に回答した。
「ふざけんな!これ明らかに盗撮だろ!犯罪だぞ犯罪!テメエらこそ裁きを受けろこら!!」
「甘いなあカミやん。世の中は、綺麗事だけじゃやっていけないんだにゃー」
「お前に言われると簡単に否定できないのが辛いが今回は違う!絶対違う!!」
今ここで上条と口論している土御門元春は、現在絶賛多重スパイ中なのだ。
「まあ被告人の戯言は置いといて、説明始めるぜよ」
そう言って土御門は写真の一枚を指す。
「まずこの一枚。外人銀髪のシスターと身体的スキンシップをはかっている」
「いやこれ噛みつかれてるじゃん!ジュースを買えと暴力を受けてた時の写真だぞ!」
「「「許せんな」」」
「なんでだよ!?」
「次にこの一枚。うちのクラスの姫神に巫女服を着せて楽しくしゃべっている」
「俺じゃねえ!巫女服着てんのはこいつの意志だ!」
「「「なんて奴だ……女にコスプレを強要だと……?」」」
「だから違う!」
「次。なんとあの常盤台のエース・御坂美琴と仲良く追いかけっこをしている」
「どこが仲良くだ!命をかけて電撃から逃げてんだよ!」
「「「あの超電磁砲にまでフラグを………」」」
「立ててない!」
「次、女子中学生と一緒に公園でアイスクリームを食っている」
「これはそいつの荷物持つのを手伝ったお礼におごってもらっただけだ!」
「「「お互いのアイスを食べたのか!食べたんだな!!」」」
「食べてねえええ~!!」
以下略。
「……以上のように、ぜえ、上条被告は多くの女子をその毒牙にかけてきたんだにゃー、ぜえ」
「い、言いがかりも、ハァ、いい加減にしろ…ハァ…」
「「「………疲れたなあ」」」
土御門が説明、上条が突っ込み、男子たちが反応、上条がもう一度突っ込み。
この一連の流れを数十回繰り返し、ようやくすべての写真の解説が終了した。
全員疲れ切ってしまっているようだ。
「……さて、証拠も出たところで、いよいよ刑罰執行を行おうと思うんやけど、みんなええ?」
「よし、やるか」
「とりあえず逆さ吊りにしようぜ」
「その間ずっと脇をくすぐっていよう」
「この際徹底的にぼこぼこにするのもありだな」
青髪の一言で、上条以外はすぐに元気になったが。
ちなみに女子はもう帰ってしまっている。
最後にもう一度吹寄に助けを求めたが、ものすごい形相で睨みつけられてしまった。
「はあ……しょうがない。なんとか凌ぐしか………お~いお前ら、せめて命だけは………」
その時、
『~~~♪』
携帯電話の着信メロディが鳴り響く。
出どころは、机の上の上条の携帯。
「…電話くらいは、出てもいいよな」
上条がそう言うと、皆もしょうがないというようにうなずき、土御門が上条の携帯を取る。
しかし。
「カミやん、『佐天涙子』って、この写真の中の誰かか?」
携帯に表示されている名前を見て、土御門が問いかける。
「………」
「沈黙は金ぜよ」
上条が黙っていることから間違いないと察した土御門は、そのまま携帯の『通話』ボタンを押す。
「ちょ、おま…何やってんむぐぐ」
それを止めようと上条が叫ぼうとするが、数人がかりで口を塞がれる。
「は~いもしもし」
『あれ?おっかしいな……すみません、間違えまし…』
「いやいや間違ってないぜよ。上条当麻はただいま電話に出ることができないので、代わりに友人である俺が取っただけだにゃー」
『そうなんですか?よかった~、ちゃんと登録できてて』
上条の口を塞いでいる数人を除いて全員が、土御門の周りに群がり、二人の会話を聞こうとする。
ちなみに上条には佐天の声はもちろん、むぐむぐ言っているので土御門の声も聞こえていない。
「それで、何か用があるなら、俺が伝えておくけど?」
『う~ん、気持ちはありがたいんですけど……お互いの都合とかも話さなきゃいけないんで、またかけ直します』
「都合?」
『ええ、食事にでも誘おうかと思ってたんです』
「…ほう、食事、ね………」
土御門、および佐天の声を聞いた男子たちに、黒いオーラがたちこめる。
『?どうかしましたか』
「いやいや。それより、ひとつカミやんの友人として聞いていいかにゃー」
『何ですか?』
土御門の放った一言は、
「君は、上条当麻をLIKEではなくLOVE的な意味でどう思っている?」
『へっ!?え、えええ?えと、その、あの………』
「「「………」」」
たくさんの男子が、佐天の次の言葉を待つ。
『……てへっ♪』
ブチッ。
そんな音が、教室に響いた。
「…それ以上は言わなくていい。手間を取らせて悪かったにゃー」
『あ、じゃあ……失礼します』
電話が切れる。
「おい、土御門!勝手に人の電話にって怖あっ!!」
ようやく口が自由になった上条は土御門に文句を言おうとしたが、彼の気迫に気圧される。
「つ、土御門……?ていうか他の皆も……なにゆえそんなものすごい怒りの表情をしていらっしゃるのでしょう?」
「……今の僕たちは……阿修羅すらも凌駕する存在やで」
青髪の言葉と同時に。
男子全員が、上条に向かって一直線に突っ込んできた。
どう見ても殺す勢いで。
「うわああ!?お前ら落ち着け!いったい何があったんだ!?」
「うるさい!殺してやる…じわじわとなあ!」
「明らかにさっきより罰のレベルが上がってる!?」
上条の必死の言葉も、怒りと憎しみと嫉妬の権化と化した者たちには届かない。
「なにが『てへっ♪』だこの野郎!」
「フラグばっか立てやがって!!」
「この絶倫野郎!!」
ドカ、バキ、ボコ、グシャ。
「ああもう……不幸だあああ!!!」
上条の悲痛な叫びが、校舎に響くのであった。
はい、というわけで後日談第二弾は中身なしのギャグ話でした~(笑える人がいるか非常に不安ですが………)
にもかかわらず、今回が一番文字数多いです。空白抜いて3000字越えてます。
てきとうに書いたからだと思いますが。
さて、なんやかんやありましたが、次回で本当の最終回、佐天さんの話です。
禁書目録の二期の告知を待ちつつ、今日はこの辺で。
感想、評価の方も気が向いたらよろしくお願いします。
…と思いましたが、まだ書きたいことがあったので後書きを続けます。
まず、ポイントについてです。
皆さんのおかげで、ついに450を超えました。本当にありがとうございます。しつこく感想・評価をお願いした甲斐があったというものです(笑)
もうここまで来たらいけるところまでいくだけです。後一話頑張ります。
次に、これは野球ファンの人じゃないとわからないかも知れませんが、巨人の木村拓也コーチが天国に旅立たれてしまいました。37歳という、早すぎる死でした。禁書目録とはかけらも関係ありませんが、この場を借りてご冥福をお祈りいたします。
野球界のキムタクとして、僕も大好きな選手の一人でした。ああいうタイプの選手が巨人には必要だったのです。
皆さんも、僕の作品なんか読んでいる時間があるのなら、彼のために祈ってあげてください。
最後に、今回の話のパロディネタについてです。
というかこのside上条全体が、某召喚獣ラノベの雰囲気を踏襲しています。あとついでに少しだけガンダム00ネタも入っています。それと、上条さんの携帯の着メロは……わかりますか?
それでは改めてこの辺で、また次回。
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