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第一章 とある二人の無能力者
10.AFTER BATTLE
「ハァ、ハァ……終わった、か」

男が倒れたまま起き上がらないのを見て、上条はようやく気を緩めた。

その瞬間、全身の力が抜けて、思わず地面に倒れ伏してしまう。

「ぐっ……」

「上条さん!」

その姿を見た佐天が、焦って上条に駆け寄る。

後ろには彼女と一緒にいた女の子もいる。

ああ、よかった。

彼女達を、守りきれた。

「大丈夫ですか!?…!こんなに血が………すぐに病院に行かないと!!」

上条の体についている生々しい傷と血を見て、佐天は救急車を呼ぼうと急いで携帯電話を取り出そうとする。

「あ…いや、その必要はねえよ」

「え?」

「あんだけ暴れまわったんだ。もうじき警備員達が来るさ。それまで、この場を離れないほうがいいからな。………それに、言わなきゃいけないこともある」





数分後。

「あ!来ましたよ!」

遠くから警備員が何人かやってくるのを見て、佐天が上条に声をかける。

「あ、ああ……よし」

そう言って上条は起き上がろうとするが、なかなか体が思うように動かないようだ。

「手伝います。さ、私に掴まってください」

上条に手を差し出す佐天。

上条もさすがに一人では立ち上がれそうもないので、

「悪いな。おっかしいなあ、痛みはないんだけどなあ」

と言って手を掴み、足を立てようとする。

(それって結構やばいんじゃ………)






「このっ、動け……」

「よいしょ~~!」

当然、力が入らない上条を立ち上がらせるには佐天がしっかり支えなければならない。

なので、ちょっとした拍子で、




(あれ……?この感触………まさか!?BAST?BASTが触れちゃってる!?)

上条の体に佐天の胸が当たることになってしまう。焦る上条だが、佐天は気づいておらず、なんとなく、というか非常に言いづらい。

(というか、確かこいつ中一だよな……まったく、どうして最近の子はこんなに発育がいいんだ……!)





「ふう。なんとか立てましたね」

「あ、ああ……ソウダネ」

「?」

なんだか上条の様子が変だが、女性の警備員が大丈夫かと言いながらこちらに向かってきたので、そちらに注意を向ける。

「君達、大丈夫……って、子萌先生とこの少年じゃんか」

「黄泉川先生」

どうやらこの人は上条と知り合いらしい。彼の学校の先生なのだろうか。

黄泉川と呼ばれたその警備員は、佐天、小さな女の子と見て、最後に倒れている男を見ると、

「通報者の情報と一致してる…こいつがこの騒ぎの原因?」

と尋ねる。

「はい、そうです」

その問いに上条が、男を複雑な表情で見ながら答える。

「そう、じゃあ捕まえてたっぷり事情を――」


「待ってください」

と、上条が突然口を挟む。


「身柄を拘束するのは、ちょっと待ってもらえませんか?」

「上条さん?」

上条の口から飛び出した言葉があまりに予想外だったので、思わず声を出してしまった。

黄泉川も意外そうな顔をしている。

「どういうことじゃん?少年」

「こいつには、行かなきゃいけないところがあるんです」

「行かなきゃいけないところ?」

黄泉川が繰り返す。

(「――そばにいてやらなくちゃいけないだろうが!」)

もしかして、と、佐天は上条の言いたいことに思い当たる。

「こいつを必要としている人がいるんです。その人のために、こいつはそばにいなきゃならない。だから、こいつが目を覚ましたら、行きたい場所に連れて行ってやってくれませんか?もちろん、無理を言ってんのはわかってます。だけど、見張りでもなんでもつけていいですから、それだけは………」

そう言って、頭を下げる。

先程まで戦っていた男が抱えていた悩み。

それのために、上条は今頼み込んでいるのだ。

やっぱりすごい人だ、佐天はそう感じた。

「頭あげるじゃんよ」

黄泉川が口を開く。

「結構無茶言ってるけど………子萌先生の教え子にここまで言われちゃしょうがないじゃん。この男にはとりあえず監視をつけるだけにするじゃんよ」

「あ、ありがとうございます!」

そう礼を言う上条の表情は、本当にうれしそうだった。

「じゃあとりあえず……そこの少女」

「はい?」

突然声をかけられたので、少々焦る。

「怪我がないようなら、ここらで何が起こったのか説明してもらうために来てほしいじゃんよ」

「あ、はい。大丈夫です」

「そこの女の子は、妹?」

「いえ、そんなんじゃなくて、偶然この子が襲われそうになってるのを見て……」

「そう。なら、その子は私達で家に送っとくじゃん。君、おうちまでの道、わかるじゃんか?」

「うん」

女の子は少し恥ずかしそうにそう言った。

「よし!……ところで少年、大丈夫じゃんか?」

「へ?何がです?」

黄泉川の言葉に不思議そうに答える上条。

「何がって……その出血量、早く処置しないと大変じゃんよ」

「え?でも、別に痛みとかは………」

そう言った上条に、黄泉川は痛烈な一言を浴びせる。



「そりゃあれだ、出血が多くて痛覚がなくなっちゃってるじゃんよ。今救護班呼ぶから、頑張るじゃんよ~」


「へ?それって危険なんじゃ……げ、そう言われたら意識が遠く………」

「う、うわああ!??上条さん!大丈夫ですか!?あ~~、やっぱりこの怪我やばかったんだ~~!」



「まったく……本当に、あの先生はいい教え子を持ってるじゃん」
今回から文章と文章の間を増やしてみましたが、どうでしょうか?
ていうか黄泉川先生しゃべり方難しすぎる!さっぱりわかんないのでめちゃくちゃになってます。すいません。
さて、とりあえず次回で区切りはつくはずです。残りは少し後日談を書くだけなんで。というわけで、次もよろしくお願いします。


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