9.決着
「俺だって…最初はそうだった」
目の前で対峙している男の独白を、上条は静かに聞く。
「自分の能力で、大切な者を守りたい。そのために、強くなろうとした」
「………」
「だけど、その大切な者は…美穂は、事故に遭っちまって意識が戻らないままなんだよ!医者も、もう 二度と目を覚まさないかもしれないって……!!だから、俺はもう……!」
それから先は、言葉にならないようだ。手を震わせながら、目には涙も浮かんで見える。
「……なるほどな」
大体の事情はわかった気がする。どうしてこの男が暴れているのか。言葉にできなかった部分に、どんな感情が込められているか。
「ひとつ、言わせてもらっていいか」
だけど、いや、だからこそ、上条は言わなければいけないことがあると思った。もちろん、今日初めて会って、しかも戦っている相手のことを全てわかっているわけではない。今から自分がやることは、他人の心に土足で踏みいることかもしれない。しかし、それでも上条は、そんな生き方をしてきたのだ。
「だったらなおさら、お前はこんなとこで何やってんだよ。なんの罪も無い人たちを傷つけて!お前そ の子を守りたいって思ったんだろ?だったらその思いはまだ潰されてなんかいねえ!医者が駄目かも しれないって言っても、お前だけは信じてやらなくちゃいけないだろうが!!そばにいてやらなくち ゃいけないだろうが!!」
自分の意志を貫き通し、相手にぶつける。それが上条なりに考えて出した答えなのだ。
目の前の男も、上条の言葉に激昂する。
「知った風な口を聞くな!!お前に何がわかる!俺の気持ちの何がわかるんだよ!!そんな簡単に言い やがって……!」
「確かにな」
男の言葉を遮って、上条は言う。
「確かに、どこの馬の骨ともわからない俺の言うことなんて、あてにならないだろうな。
……だけど、お前はどうなんだよ?」
「何?」
男の表情が変わる。
「お前がここまで来てまだわかってないんなら、俺はお前をぶん殴って、警備員にでも引き渡すさ。
だけどそうじゃないだろ?お前、本当は自分が何をしなくちゃいけないか、何をしたいか、全部わか ってんだろ?」
男の表情がさらにひきつる。自分の本心を突かれて、動揺と怒りがこみあげてきているような、そんな表情になり、
「う、うるさい……うるさいんだよおおぉ!!!」
こちらに向かって突っ込んできた。もう能力はまったく使えないのか、それとも使う気が無いのか。
「…なら、少し、頭を冷やしやがれ!!」
対する上条もまっすぐ走り出す。己の右手に、すべての力を込めて。
両者の拳が交錯する。
どちらも、戦いで疲労しきった状態での、最後の一撃。しかし、一方は自らの大能力で戦ってきた者。
一方は、いつも自分の拳だけを信じて戦ってきた者。
倒れたのは、片方だけだった。
はい、というわけでバトル終了です。ていうかこの話、佐天さん出てませんね…
まあ、次の話はこのバトルの後処理をしなくちゃならないので、佐天さんいっぱいしゃべると思います。三月には原作二十巻も出るので楽しみですね。というわけで、また次回。感想や評価のほうも、気が向いたらでいいのでお願いします。