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第一章 とある二人の無能力者
行間Ⅲ
――一年前。
「ったく、あの眼鏡教師、何考えてんだ。少し校則破ったぐらいで、どうして一時間も説教食らわなき ゃなんないんだよ」
そんなことをつぶやきながら、大神は校門を出て、家へと足を進めていた。今日の授業中、周りの席の者達とこっそりゲームをしていたところ、ささいなことから口論になり、ヒートアップしているうちに騒がしかったために教師に見つかってしまったのである。

そこから担任(生活指導もやってる)に話が伝わり、放課後お叱りを受けていたと言うわけである。

「最近あんまり能力のほうも伸びねえし、なんかやな感じだな~」
そうは言っても、彼の能力は強能力者というレベルに達しており、大体の者からはうらやましがられる程度のものなのだが。

友達としゃべったりするために学校に行き、時には決まりを破って教師に叱られる。
大神祐樹とは、そんな普通の中学生だった。

「ん……?」
大神は目にちらっと写ったもののために、動かしていた足を止める。
十メートルくらい先。見知った顔が、四、五人の男に囲まれて、通りのわき道に入っていくのが見えた。

「美穂……?――まさか!!」
それは、小学校の時知り合い、以来妹分のようになっていた朝井美穂だった。彼女は無能力者だ。もし、今の男達が彼女に危害を加えようとしているなら、彼女は何もすることもできず………

気がつくと、大神は走り出していた。そんなことをさせるわけにはいかない。美穂達が入っていった曲がり角までたどり着くと、そのわき道へ入っていく。少し入り組んでおり、そのことが大神を焦らせた。

「…いや!離してください!」
その時、あまり大きくは無いが、美穂の叫び声が聞こえた。

「美穂!!」
声のしたほうへ走ると、そこには七人ほどの不良たちに囲まれ、今にも襲われそうな美穂の姿があった。
美穂のほうも大神に気づいたようで、
「祐樹君!?」
と声を出す。

「なんだあ?お姫様を助けに来たヒーローのおでましか?こいつは笑えるぜ。お前、一人で何しようっ てんだ?」
不良たちは大神のほうへ向くと、ニヤニヤ笑いながらそう言った。

大神はそれには答えなかった。地面を蹴って美穂に向かって走りながら、周りの不良たちに自分の能力である光弾をぶつける。
「!?こいつ、結構なレベルの能力持ってんじゃねえか!」
不良たちは思わぬ反撃にひるみながらも逃げようとはせず、そのままこちらに向かってくる。数で押しつぶすつもりなのだろう。

「それでも、負けられるかよ!!」




「ここまで来れば大丈夫か……美穂、どこも怪我とかしてないか?」
大神は不良たちから美穂を取り戻し、近くの公園まで一緒に走ってきていた。その体には、たくさんの傷跡がついている。

「う…うう……ごめんね祐樹君。私のせいで………」
美穂が涙を流しながら言う。

「謝ることなんてないだろ。悪いのはあいつらだ。お前は何もしていない、そうだろ?」
「で、でも…そんなに怪我しちゃって」
大神の言葉を聞いても、美穂はやはり自分が悪いと思っているようだ。自分のせいで、彼が傷ついてしまったと……。

(そんなことはない)
美穂には責任など無い。なのに、彼女は優しいから、大神が傷ついたのは自分のせいだと感じている。
俺が怪我したから………。

「じゃあこうしよう」
しばしの沈黙の後、大神が口を開く。

「俺が強くなる。強くなって、怪我なんてしなくても、お前を守れるようになる」

「え?」
美穂が驚いたように言う。
「だからもう泣くな。絶対に、俺がお前を守ってやる」

「祐樹君………ありがとう」

ようやく、彼女は笑顔を見せた。

この笑顔を、ずっと守っていきたい――そう、思っていた。








「事故!?」
しかし彼の願いは、ある日突然叩き壊された。

「ええ……トラックに撥ねられて……ううっ」
美穂の姉の声が受話器を通して聞こえてくる。その言葉の意味を、すぐには理解することは出来なかった。

「どこの病院ですか!すぐに行きます!!」




人生で一番急いだと言ってもいいくらい、全力で病院に向かった大神を待っていたのは、過酷な知らせだった。

「意識が、戻らないかもしれない……?」
美穂の病室であっけに取られる大神に、彼女の姉が言う。
「…ええ。お医者様の話だと、頭を強く打ってて……目を覚ますかどうかって………」
そう語る彼女の顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。

そばにあるベッドに寝ている美穂の姿を見る。普通に眠っているだけのようにも見えるのに、

もう、彼女は目を開けてくれないかもしれない?

「そんな……嘘だろ………?俺、お前を守るために、大能力者にまでなったんだぜ?お前を守りたいか ら、強く……。なのに……俺は、これからどうしたらいいんだよ?」



大神祐樹という少年は、朝井美穂という少女を守るために、力を求めた。強くなろうとした。
だが、その少女を守れなかったとき、力をどう使えばいいか、わからなくなってしまったのだ。


それから彼は、夜の裏路地をぶらぶら歩くようになった。美穂の意識はいまだ戻らず、今はただ自らの力を憂さ晴らしに使うことしかしていなかった。
まず一言、すみません。
次回でバトル完結といっていましたが、よく考えたらこの話をいれないといけないということをすっかり忘れていまして……
次回こそはバトル完結ですので、どうかよろしくお願いします。


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