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青春小説大賞、終了致しました。
応援してくださった方々、本当にどうもありがとうございました。m(_ _)m
おかげさまで、2位という好成績を得ることができました!
受賞の様子は残念ながらなさそうですが、皆様から熱い応援をいただいたこと、とっても嬉しかったです!
いい思い出になりました。(^ ^)
また機会があったら、別作品で賞に挑戦してみたいと思います!
本当にどうもありがとうございました。
 
Act. 11-1 とんでも腐敵な曇り空!
<<<< 朽木side >>>>  
 
「うそだろぉぉぉ!?」
 
 拝島と昼食を終え、午後の講義を受けるべく薬学部棟に戻り、廊下を歩いてる途中、講義室の入り口から聞こえてきた悲鳴は高地のものだった。
 
「おいおい高地、大丈夫かよ。さっきから不正解だらけじゃん」
 
「だ、だってこれ難しくね? おめーらは分かってんのかよ!」
  
「……七割くらいはなんとか」
 
「俺、六割くらいかも」
  
「なんだよ! おめーらも落第じゃねーか! 留年だ留年! わははははっ!」
 
「半分も正解できてない奴よりゃマシだよな」
 
「俺たちはこれからじっくり勉強すりゃ挽回できるレベルだよ。お前はやばいって」
 
「ちょい待て! そこで線引きすんな! 俺だってこれから挽回してみせるっての!」
 
「なんの話?」
 
 高地と友人数名が机を囲んでなにやら騒々しく盛り上がっていた。そこへ拝島が、興味津々といった様子で首を突っ込んだ。
 
 その声に気付いた高地が振り返り、机の上に広げられたプリント用紙を指差し、
 
「おっ、拝島! CBTだよCBT! 見本問題がWEBで公開されてたんだってよ! お前もやってみっか?」
 
 興奮気味の声で誘う。
 
「へぇ〜……どれどれ……ふぅ〜ん、なるほど」
 
 素直に寄って行き、話に加わる拝島。俺もその後に続く。
 
 共用試験か。もうそんな時期になるんだな。
 
「薬学はまだ対策本が出てないから、貴重な資料だな」
 
 拝島の横に並び、WEBの画面をそのままプリントアウトしたらしき見本問題集に目を落とす。
 
 薬学のCBTは開始されてまだ間もないので、医学のように対策本などは刊行されていないのだ。
 
「な? できそうか?」
 
 仲間が増えることを期待するような不安そうな目で高地が拝島の顔を覗きこむ。
 
「ん〜……。分かんないやつが2、3あるかな」
 
「2、3!? そんなに分かんのお前!?」
 
「どれも一度は習ったやつっぽいからさ。なんとかできると思うよ」
 
「えぇぇぇぇ!? 朽木は? 朽木はどうなんだよ!」
 
「俺も拝島と同じだな」
 
 しれっと答えた。
 
 嘘だ。このレベルなら全問正解は容易いだろうと内心踏んでいる。しかし満点を取る気はないので、適当に不正解を紛れ込ませるつもりだった。
 
「なんだよお前ら! 天上人かよ! その脳味噌を俺にくれよーっ!」
 
「今から勉強すればなんとかなるよ」
 
 優しい拝島が落ち込む高地を励ますが、それは気休めというものだ。俺はにやりと口角を吊り上げ、正しい激励の言葉をかけてやった。
 
「もう宴会とか言ってる暇はないな」
 
「朽木くぅぅぅん! ザクッときた! ザクッときたよ今っ!!」
 
「さ、拝島。席につこうか」
 
「朽木くぅぅぅんっ!!」
 
 悪いが、赤点仲間に入るつもりはない。
 
 縋りつこうとする高地をするりとかわし、さっさと空いている席に向かった。
 
 
 CBT―――― Computer based testing は、四年次一月末に行われる共用試験である。
 
 コンピュータを用いて受験者一人一人ランダムに作られた問題セットに答える試験だ。範囲は一年次から四年次までに習ったこと全て。
 
 ただの試験ではない。
 
 これに合格しなければ五年次に行われる病院・薬局実務実習を受けることができないのだ。
 
 必修である実務実習を履修できないということは、つまり『留年』となる厳しい関門である。高地が悲鳴をあげるのも無理はない。
 
 しかし、薬学生にとっては確かに死活問題に匹敵する試験だが、今まで真面目に授業を受けていれば合格が当然のレベルだ。
 
 怖れるのは一部の落第生のみだろう。
 
 その落第生の中に高地が含まれていることは疑いようもない。
 
 まったくもって残念だが、来年は高地と授業を共にすることはなさそうだ。
 
 これで少しは周囲が静かになってくれることだろう。ああ、まったくもって残念だ。
 
 
「強化合宿だな!」
 
「は?」
 
 思わずまぬけな声で聞き返してしまう。
 
 席についた俺の前にしつこく追いかけてきた高地が立ち、拳を握り締めて強く主張したのだ。
 
「CBTのための強化合宿だよ! みんなで勉強会だ! これから毎週末特訓しないとな!」
 
「結構なことだな。せいぜい頑張ってくれ」
 
 適当にあしらいつつ教材を取り出していると、
 
「なにヒトゴトみたいなコト言ってんだよ朽木! お前んちでやるんだからな!」
 
「なんでだっ!?」
 
 つい声を荒げてしまう意味不明なことをのたまいだした。
 
「友達のピンチを見過ごすのか!? 俺のために一肌脱いでくれ!」
 
「断る!」
 
 言った後に、ここは講義室だということを思い出す。まずい。
 
 最近、グリコとこいつの厚かましい態度に素の自分を曝けがちだが、俺は本来、目立たないよう極力大人しくしている主義だった筈だ。
 
 周囲の目を散らさなくては。
 
 怒鳴りつけたいのを抑え、声を沈めて表情を和らげる。
 
「悪いけど高地。俺は色々やるべきことがあって忙しいから、他の奴と勉強してくれないか?」
 
「俺のダチで一番頭いいの、お前と拝島なんだよ!」
 
 そんなの知ったことか。
 
「教材をまるごと暗記するだけじゃないか。一人の方がはかどるだろう?」
 
「まるごと暗記なんて無理だって! ポイントを絞って教えてくれよぉ〜〜」
 
「そのくらい自分でできないようだと到底国試になんて受からないぞ」
 
「国試までにはなんとかするから! とりあえず今は目先のCBT! な! お願い! 朽木ちゃぁ〜〜ん!」
 
 また気色悪い猫なで声をあげながら身を乗り出してくる高地。苛つきが増してくる。逆効果だ、馬鹿。
 
 追い返す口実を考える。と、横に座った拝島が、
 
「俺が一緒に合宿しようか? 高地」
 
 親切にもそう申し出た。パッと高地の顔が明るくなる。
 
「え? マジ? 拝島、教えてくれんの!?」
 
「俺でよければ。俺自身のためにもなるし」
 
「サンキュー拝島! さすが俺の心友! 今度女の子紹介してやるよ!」
 
 歓喜を露にし、拝島に抱きつく高地。俺は眉をひそめた。
 
 なんだかそれはそれで面白くない。拝島が俺のいないところで他の男と仲良くつるむなど。
 
 それに高地の台詞が気にかかる。女を拝島に紹介するだと? それは困る。
 
「別に女の子はいいけど……」
 
「固いコト言うなよ! お前も彼女の一人くらい欲しいだろ? デートのセッティングとかしてやるぜ!」
 
 どう邪魔するか思案してるところに、とんでもない発言が飛び出し、俺はぎょっと固まった。
 
 おい。そんな大声で。
 
 ギンッ
  
 次の瞬間、怖れていたことが起こった。教室中の女共の視線が高地と拝島に集まったのだ。
 
 …………くそっ。
 
「仕方ないな。拝島がやるんなら、俺も手伝ってやるよ」
 
 高地に対する殺意を押し殺しつつ、苦笑気味に割って入る。
 
「え!? 朽木も!? やっりぃ〜〜!」
 
 途端、指を鳴らして喜ぶ高地。相変わらず俺の笑顔の下の表情には全く気付く様子もない。その首を脳内でぎりぎりと締め上げる。ぎりぎりと。
 
 いつかこいつもドラム缶に詰めて海に流してやる。
 
「じゃあ、今週末朽木んちで勉強会な! わりぃな朽木!」
 
 そう声を弾ませ、満足そうに去っていく高地を拝島が手を振って見送る。俺はシッシッと心の中で追い払った。
 
 面白くない。最近、このパターンばかりじゃないか? 舌打ちでもしたい気分だ。
 
 友人のもとに戻る高地に呪いの視線を送り、ムッツリと前に向き直る。
 
 その時、高地に囁きかける友人達のひそひそ声が耳に入ってきた。
 
「すげぇな高地。いつ朽木とあんなに仲良くなったんだ?」
 
「へっへー、羨ましいか? 俺は人類みな兄弟だかんな」
 
「ホントにすげーよ。あの朽木が親しみやすい奴に見えた!」
 
「だろ? 意外と面白い奴なんだぜ、アイツ」
 
 
 ……そういえば、すっかり高地の前で仮面を被らなくなってきているな。
 
 危険な兆候だ。拝島以外の友人を作るつもりはなかったのに。これでは話しかけてくる奴が増えてしまう。
 
 だが――――
 
 そんなことはもう、どうでもいいという気もしていた。
 
 
 
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